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本当は怖い共謀罪。知らない間に犯罪者に?

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政府が成立に意欲を燃やす「共謀罪」とは?

安倍政権が「共謀罪」を創設する組織的犯罪処罰法改正の検討に入ったと報じられています。共謀罪とは、重大な犯罪の謀議に加わっただけで処罰対象とされるもので、その重要な犯罪の実行行為がなくても処罰されるというところに特徴があります。秘密裏に計画されて重大な結果を招くような犯罪を未然に防ぐためには、共謀の段階から捕捉して処罰する必要があるというのが立法を促進する側の論理として語られます。

政府が共謀罪の制定を目指すのは今回が初めてではありません。国連が2000年11月に国際テロの不安が広がっていることを理由に「国際組織犯罪防止条約」を採択したのに伴い、これまでも条約締結のために国内法の整備が求めらるとして、第一次安倍政権下の2003年から何度も関連法案が国会に提出されてきました。その政府案では、対象となる犯罪が600以上ということに加え、恣意的な運用の危険性が払拭されないとの強い反対により、いずれも廃案となってきました。

ところが、2020年の東京オリンピック開催に向けてテロ対策強化が急務であることや、与党が圧倒的多数を占めることになった国会の情勢もあって、政府は共謀罪の成立に意欲を燃やしているというのです。

政府原案で共謀罪の対象となるのは窃盗や傷害、詐欺など600以上

共謀罪は、2人以上の者が特定の犯罪を行うことを話し合って合意したこと自体を犯罪とするものです。刑罰法規は、法律によって保護されている利益(保護法益)が現実に侵害されたときにその侵害行為を処罰するのが原則ですが、例外的に、保護法益が侵害されなくても、犯罪行為に着手して現実的な危険性が生じたときに、その行為を未遂罪として処罰します。また、殺人や強盗など、一定の重大な犯罪については、未遂よりも前の準備段階の行為を予備罪として処罰することもあります。

共謀罪は、その予備罪の成立よりも前の段階で、予備の準備行為がなくても、犯罪をしようと2人以上の者が話し合って合意するだけで処罰しようとするものです。我が国の現行法で共謀が処罰対象となるのは、内乱予備・陰謀罪(刑法78条)など、極めて結果の重大なごく例外的なものだけです。

ところが、これまで提出された政府原案で共謀罪の対象とされるのは、法定刑が長期4年以上の全ての犯罪で、その数は600以上です。政府の説明では、共謀罪の対象は「重罪」に限られるというのですが、長期4年以上の法定刑が規定される犯罪には、窃盗、収賄、傷害、詐欺、恐喝、有印私文書偽造などもあり、共謀罪が成立しない犯罪の方が少ないくらいです。

共謀罪の創設は、戦前の治安維持法と同様の濫用が懸念される

また、共謀罪は、内心の取り締まりに結びつきかねないという危険もあります。共謀罪をどのように捜査するのかを考えてみると、そこには空恐ろしい社会が見えてきます。これまでの犯罪捜査であれば、犯罪という結果からさかのぼって犯人を特定していたのが、犯罪を未然に防ぐのが目的のため、日常的な会話やメール等の内容から共謀の成立を判断することもありえます。そのため、捜査機関は国民の日常的な会話やメールを監視することになり、通信傍受(いわゆる盗聴)や会話傍受もなされるようになるでしょう。

そうはいっても、「共謀罪は組織犯罪に関する規定だから、そんな団体に所属していない一般の人には関係ない」と思われるかもしれません。しかし、共謀罪の対象になると考えられている組織犯罪処罰法第2条に定義される団体は、組織犯罪集団を広くカバーするために、その実質から団体や組織を認定します。自分が参加している団体が知らない間に共謀罪の対象とされる可能性があるかもしれません。また、団体に参加していることも実質で判断されるとなれば、そのような団体の人と居酒屋で知り会って会話をしただけでも共謀と認定される恐れが無いとはいえないのです。

最近では、全く無関係の人が痴漢冤罪で逮捕・拘留されるだけでなく、裁判で刑事被告人とされてしまうことも知られるようになりましたが、そのような立場になった人の個人生活がズタズタになってしまうことは想像に難くありません。共謀罪は、それ以上に、知らない間に犯罪者にされてしまうリスクが高いといえます。

我が国でも、戦前の治安維持法が、政治的な言論封殺のために利用されたことは歴史上の事実です。共謀罪の創設は、同様の濫用も懸念される非常に危険な法改正であるということも認識しておくべきしょう。

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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