観光の現場から漏れる「外国人客はありがたいけど面倒」というホンネ

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観光の現場から漏れる「外国人客はありがたいけど面倒」というホンネ伊勢神宮の観光地「おかげ横町」を運営する「赤福」前社長の発言が波紋を読んでいる。「外人は来てほしくない。英語の表記をするような気遣いはしない」とイベントで言ってしまったのだ。

その後の朝日新聞の取材では、前社長は「日本の方々に喜んでもらう街をつくりたいという意味の発言だった。外国人への偏見ではない」と釈明していた。確かに発言をそのまま受け取れば、「英語の表記」によって失われる風情を懸念していたようにも思える。  

しかし赤福本社では、公式サイトに謝罪文を掲載するなど、会社として問題のある発言だったという認識でいるようだ。  

備品は持ち帰るし、わがまま言うし…  
批判の多いこの発言だが、一方で観光関係者の「偽らざるホンネ」の一端を反映している可能性もある。   政府観光局の調査によれば、2012年に日本を訪れた外国人観光客は年間約863万人。2002年と比べると300万人以上の増加であり、震災での落ち込みはあったものの、ほぼ右肩上がりの増加を続けている。

2020年には東京オリンピックの開催が決定しており、外国人観光客の増加は確実だ。滝川クリステルさんも日本人の「おもてなし」精神をウリに誘致のアピールに成功しており、業界の期待は高まっている。  

しかし、観光業界の現場からは外国人観光客に対する複雑な声が聞こえてくる。

キャリコネ編集部の取材に対し、リゾートホテルに勤務するAさん(女性)は、外国人観光客に対して「お客様としてありがたい存在だけど、困った相手でもある」と本音をのぞかせる。  

「例えば、バスローブやタオル、雑誌など客室の備品の持ち去りが多いのは、外国人客です。最近はマナーも良くなっていますが、それでも月に数回は持ち去りがあります」  

ホテル予約サイト「Hotels.com」が28か国で調査(2013年)したところ、旅行者のうち約35%がホテルの備品を持ち帰ったことがあるという。

近年は中国からの観光客が増えており、富裕層も少なくないので商売としては助かっているのだが、日々の業務で無茶なクレームに当たることも少なくない。  

「ヤモリが窓の外側にとまっていただけで『気味が悪いので別の部屋に変えてくれ』と言われたときは、さすがに閉口しました」  

外国人には、家の守り神として縁起のよいヤモリの価値が理解できなかったのだろうが、上手な説明によってクリアすることは無理だったのか。  

外国人の増加で「接客時間」が伸びるおそれ
とはいえ、グローバル化の必要性が高まっている中、普通の日本人観光客とは価値観も慣行も異なる外国人の受け入れは、そう簡単なことではない。  

都内の下町で飲食店に勤めるBさん(男性)も、増加し続ける外国人観光客への対応に苦慮している。勤務先を訪れる観光客は、アメリカ人やフランス人、中国人、韓国人など多様だ。  

「英語表記のメニューを置いたり、韓国語での簡単な接客を勉強したりしていますが、応対は精神的に疲れる。ドルやウォンでの支払いをお願いされて、困ったことも何度もあった」

多い日だと1日100人以上の外国人客が来店する。マナーの考え方が違うのでお店も騒がしくなりがちで、日本の食べ物が珍しいのか、食べ方や味などについてあれこれ質問してくることが多く、接客時間も余計に長引くという。  

「もともとは地元客と日本人観光客向けのお店だったので、なじみの客から『ゆっくりできない』なんてグチを言われることもある。外国人客と日本人客、両方のニーズにうまく対応するのは難しい」  

東京オリンピックについて質問をぶつけてみると「正直、期待より不安のほうが大きい」という。個人でやっている店なので、さばける客数にも限界があるし、人が多くなればトラブルも増えると心配している。

Bさんが感じる不安は、観光産業の現場の多くの人が感じているのかもしれない。しかし12月11日の観光局の発表によると、2013年の訪日外国人観光客は政府目標の年間1000万人を初めて突破する見通しとなった。日本の観光産業はもはや外国人客抜きでは成立しない。

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