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憧れの職業「パイロット」の人材不足が止まらない理由

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航空機のパイロットといえば、子どもたちの憧れの職業のひとつだ。高度な専門スキルに加えて語学力や的確な判断力、責任感などが求められ、まさにエリート中のエリートといったイメージがある。

「賃金構造基本統計調査」(2011年)によれば、パイロットの平均年収は1198万円。エリート感や高収入が後押しして「モテる職業ランキング」などでも常に上位にランクされている職業だ。

こんな仕事なら希望者が殺到して狭き門になっていてもおかしくないが、そのパイロットの数が将来的に不足するかもしれないと、航空会社や国土交通省が危機感を募らせている。

「一斉退職」と「新規参入」が同時に発生
パイロット不足が懸念される理由は大きく2つある。その1つは、2030年ごろに起きるとされるベテラン機長の一斉退職。これについては2007年ごろから国交省が指摘していた。  

現在、パイロットの中でも機長を務める層はベテランの50代が中心になっており、十数年以内に定年退職を迎えることはほぼ間違いない。しかし20~40代は訓練生や副機長を務める人が多数であり、機長のポジションが空席になってしまうと見られている。 

もう1つはLCC(格安航空会社)の相次ぐ参入だ。ジェットスターやエアアジア、ピーチなどの登場に伴って運行数も増え、パイロット需要も増加しているのだ。しかし不足するのなら、その分を補充すればいいはずだが……。

キャリコネ編集部が航空ジャーナリスト・緒方信一郎氏に聞いたところによると、日本ならではの「パイロット不足を招く3つの大きな要因」が存在していると指摘する。1つ目は、パイロット資格に対する独自の厳しい規制だ。

「スキルだけでなく飛行時間や本人の適性など、海外よりも厳しい基準があります。海外でパイロット資格を取得しても、日本の航空会社で就職するためには、新たに資格を取り直さないといけません」

これでは海外からの人材登用もなかなか進まない。ちなみに香港やアラブ首長国連邦などは、国外の免許のままでもパイロットを務めることが可能だ。

ANAとJALの「正社員主義」も障壁に
2つ目は、パイロットの転職の難しさだ。事実上、ANAとJALの2社の壁が高すぎると言ってもいいだろう。

例えばANAやJALのパイロットには年収1500万円以上という人が多数いるが、LCC各社は年収700万~800万円ほど。

いくらLCCがパイロット不足とはいえ、「収入の差が大きすぎてANA・JALから転職する人は滅多にいませんね」という。

また、ANAとJALは生え抜きでパイロットを育成する方針が強く、LCCなど他社からの中途採用はほとんどいない。企業間での人材の移動が進まないので、退職したパイロットの穴が埋まらないのだ。

3つ目は派遣パイロットの制度がないことだ。

「海外には航空会社とは別に、パイロットや客室乗務員を派遣する会社があり、ごく一般的に活用されています。日本ではこうした制度がなく、正社員しかパイロット職に従事していません」

こんなところにも、日本企業の「終身雇用、正社員主義」によって流動性が低迷している弊害が表れているといえるだろう。

大学でのパイロット養成課程は増えている
そのほか「パイロット養成施設が少ない」「海外に比べて空軍からのパイロット転職者がほとんどいない」といった事情も、日本でパイロットの数がなかなか増えない要因となっている。

そもそもパイロットの資格を得たとしても、実際に航空会社で機長として操縦かんを握るまでには10年以上のキャリアと、1億~3億円の育成費が必要だと言われている。飛行機の機体ごとに覚えなければいけないことも多く、パイロット資格さえ取ればOKという話ではないのだ。

ただし、パイロットになりたい人が減っているわけではなく、ANAのパイロット新卒採用の倍率は毎年約100倍以上もある。パイロットを養成する航空大学校の入学倍率も例年7~8倍をキープしている。

それでも人件費や育成コストを考えれば、航空会社としては軽々しく採用を増やすわけにはいかない。アメリカの場合、パイロットの年収は500万円程度という例も多く、人件費がネックになって採用数が狭まることは起きにくい。

一方で、対応策も講じられている。国土交通省はこの12月に対策委員会を設けて、パイロット不足問題を検討する予定だ。大学でのパイロット養成課程も増えており、桜美林大学や東北大学、千葉科学大学、神奈川工科大学などでパイロットへの第一歩を進むことが可能となっている。

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