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安田洋祐「ミクロ経済学で、世の中の本質が見えてくる」

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難解でとっつきにくいイメージばかりが先行する経済学の世界。でも、僕らの身のまわりの事象に置き換えて考えてみると、それが実は、意外なくらい実用的で興味深い学問であることがよくわかる。今回は気鋭の経済学者・安田洋祐氏をお迎えして、経済学をより面白く考えるための新たな視点を伺おう。

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乙武: 経済学ってどうしても難しいイメージがありますよね。僕自身、大の苦手分野なのですが、どうすれば経済学をもっと楽しむことができるでしょうか?

安田: 「経済」って本来身近なもので、皆さんにとって関心を引くの高い分野のはずなんです。実際、書店でも経済学関連の本は、わりと目立つところに積まれていますよね?

乙武: あ、たしかにそうですね。

安田: とくに、僕がやっているのは国や市場国全体の景気や市場のメカニズムを研究する「マクロ経済学」ではなく、個人の経済活動と市場の関係を研究する「ミクロ経済学」の方なので、皆さんがイメージする経済学とは少し異なるかもしれません。消費に対する個人レベルの損得勘定や消費の動機に着目して経済を分析する分野ですから。

乙武: あれ、損得勘定? なんだか急に身近な感じがしてきましたね。

安田: でしょう? 個人の損得勘定というのは面白くて、たとえば人間は同じ金額でも、損と得で感じ方が違うんです。ギャンブルで負けが込んでくるとやめにくくなり、「次で一発逆転するぞ」と頑張って、結局マイナスを膨らませてしまう。あの心理も、経済学で分解析できるんです。

乙武: おお、興味深い。それはつまり、どういうことですか?

安田: 人は感情的には、得をした1000円よりも損をした1000円の方が価値が大きいと感じるんです。さらにいうと、損失の額がそのまま2倍、3倍に膨らんでいっても、精神的な苦痛は2倍、3倍にはならないのですともいわれています。

乙武: たしかに、道端で1万円落としたらものすごくショックですだけど、ギャンブルでの負け分損失が2万円から3万円に膨らんでも、同等のショックはなさそうですね感じない、ということですか?。

安田: そういうことです。また、3万円マイナスの時点から一気に原点に戻す勝負というのは、ゼロから3万円を稼ごうとする勝負より魅力的に感じられるもの。つまり、その勝負には3万円という金額以上のインセンティブが発生しているわけです。だからこそ、負けが込んでくると、ますますギャンブルをやめにくくなるわけですね。

乙武: うん、よくわかります。経済学って数字だけで動いている無機質なものだと思っていたんですけど、こうして伺っていると心理学的な要素もあったりして非常に興味深いですね。たとえ同じ金額でも、そこに感じる価値が違ってくるわけですね。こうして伺っていると、経済学ってどこか心理的な要素もあったりして、すごく興味深いなあ。イメージと違いますね。

安田: ちなみに、この例はミクロ経済学のなかでも、人の感情の動きを分析する行動経済学という分野で明らかにされたもの。これはミクロだけでなく行動経済学の範疇にも入る例でしたけど、要はこうした個人の動きが集まって、世の経済は成り立っているわけです。

乙武: 経済学ってもっと無機質なものかと思っていたけど、とても人間臭い部分もあるんですね。もっと勉強してみたい! こういう経済学的な視点を持つことが、社会問題の本質をより深く理解することにもつながるかもしれませんね。

(構成:友清 哲)

【今回の対談相手】
安田洋祐さん
1980年 東京都生まれ。経済学者。東京大学経済学部卒業後、プリンストン大学経済学部でM.A.およびPh.D.を取得。主な著書に『学校選択制のデザイン』『経済学で出る数学』(共著)ほか

(R25編集部)

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