ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

【アベノミクス匿名論説】薬のネット販売にみる規制改革論の本質

DATE: BY:
  • ガジェット通信を≫

安倍政権が、市販薬のインターネット販売について、完全に解禁とせずに医療用医薬品から切り替えた一般用医薬品について3年間はインターネットでの販売を認めない結論を出したことについて、様々な議論が行われている。新経済連盟の三木谷楽天CEOは政府の委員を辞することを示唆する一方、読売新聞社説では「やむを得ない最低限の規制」などという主張がされている。

この議論の本質は、これまでインターネットで販売できなかった医薬品を販売できるようにするという規制「緩和」の議論にあるのではない。すなわち、「安全性が高いのだからネットで売らせろ」「リスクがあるからネットで売らせない」という規制の強さ、弱さの問題ではない。医薬品である以上、一定のリスクがあることを前提としながら、薬剤師による対面の販売と、同様に薬剤師を介しながらネット上による販売とで規制に差を設けることが合理的なのか、という規制の方法をめぐる規制「改革」の議論が、問題の本質なのだ。

厚生労働省は、一般用医薬品のネット販売等の新たなルールに関する検討会の『これまでの議論の取りまとめ』において「一般用医薬品の販売は、専門家と購入者側との十分な情報交換(コミュニケーション)の下で行われる必要がある」としている。対面とインターネットで果たしてこの情報交換の十分性に差があるのかどうか、このとりまとめでは医療用から一般用に転用されてから間もないものなどについて、収集が必要となる情報の具体例として「症状の性質、状態等のうち、専門家が嗅いだり、接触することでのみ確認できるもの(口臭、体臭、症状の状態等)」というものを挙げている。

使用者の年齢等の基本情報や副作用情報はインターネットでも情報交換できるが、さすがに現在の技術では臭い情報までは伝えられないということで、今回の政府の結論になっているのである。しかし、こうした医薬品を薬局で買う場合に、果たして臭いまでクンクンと薬剤師に嗅がれる経験をした使用者がどれほどいることか。百歩譲って、それをしている場合があるのだとしても、インターネットで得られるだけの情報を薬剤師が得た上で、必要性がある使用者にのみ改めて薬剤師が対面してクンクンと臭を嗅いだ後に販売できるようにすればよいのであって、はじめから販売を全面的に禁止するという規制のあり方は合理的であるとは思えない。どうしても臭いを嗅がなければ販売できないのであれば、「臭いを調査しなければ販売してはいけない」という法的規制をかけるべきであるが、そんなお馬鹿な規制はありえまい。

役所というのは、新しい技術が出現し、それが世の中で利用されようとするときでも、その技術にあった新しいルールを作るというよりは、これまでのルールを強引に当てはめるという保守的な姿勢をとりがちである。そのお役所の不作為が、新しい技術を世の中に広め、経済的価値を生むことを妨げてきた。何もしないことの理由を上手く述べたり、既存の規制を頑なに守り続けたり、既存業界との調整をうまく成し遂げることが評価される官僚ではなく、新しい技術に見合った新しい規制を生み出す知的な生産能力がある官僚が評価される公務員制度をつくらない限り、本当の意味での規制改革は実現しない。

そうした意味では、規制改革と公務員制度改革は表裏一体なのだが、果たして安倍政権はそれがわかっていだろうか。

東京プレスクラブの記事一覧をみる ▶

記者:

東京プレスクラブについて: 「オープン&シェア」を合言葉に、現在話題となっている出来事の取材やネットでのオープンな資料・素材公開をおこなっているブログメディアです。特定の記者やジャーナリストだけではなく「新しいテクノロジーを使って誰でも参加できる情報共有の場をつくる」ことを目標に、共有すべき資料は迅速に共有し拡散することで皆さんのお役に立つことを目指しています。 東京プレスクラブに掲載された情報は転載・引用・転送・共有・拡散、すべて自由です。もちろん、ブログ、ニュースサイト、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等々のメディアでの利用も自由です。

ウェブサイト: http://tokyopressclub.com

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。