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日本の「ものづくり」に明るい未来はあるのか?

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日本の「ものづくり」に明るい未来はあるのか?
 日本のビジネスはどのように変わっていくのか。そして「ものつくり」はどのように進化を遂げていくのか。
 それを紐解く上で欠かすことのできない一冊が『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』(クリス・アンダーソン/著、関美和/訳、NHK出版/刊)だ。デジタル革命は、コンピュータの中だけの世界ではない。ITとリアルが連携し、これまで以上のスピードで発展する、21世紀の製造業の姿を描いた本書では、これまでのスタイルとは一線を画す起業家の姿が提示されている。

 今回、『MAKERS』オーディオブック版の発売にあたり、作家エージェントとしてクリエイティブをサポートする佐渡島庸平氏と、ももいろクローバーZのクリエイティブをはじめ、あらゆる「モノとコト」の編集・デザインをおこなう草なぎ洋平氏(*1)という、日本を代表する「メイカー」2人の対談が実現。そこで見えてきた、日本の「ものづくり」の今とは?(*1…「なぎ」の字は、弓へんに前と刀)

  ◇    ◇    ◇

―今回は日本のコンテンツ業界を牽引する立場にいるお二人にお越しいただきました。現在のコンテンツを取り巻く環境は大きく変化している、いわゆる過渡期にいると考えられますが、草なぎさんはどうお考えですか?

草なぎ「最近、個人で出版をする人がいて、とても楽しそうだなと思います」

佐渡島「そうなんですが、個人で作ったものでも、情報に敏感な人たちの間で話題になって売れる部数は1〜2万部くらいなんです。マスとはかなり隔たりがあって、爆発的にヒットするという雰囲気は全然作れていません。
本の出版って趣味でする人もいますが、社会に何らかの変化を与えようと思って本を出す場合もあるじゃないですか。そうなったときに、今の仕組みはまだしんどいですよね。インターネットは選挙の投票率をはじめ、まだリアルにそこまで影響を与えられていないということに代表されるように、まだメジャーに達していなくて、しんどいなというのは感じます」

草なぎ「僕はあまりマスに影響を与えるというところまで考えたことはないです。でも、去年の僕の会社の忘年会に(IPS細胞騒動で話題になった)森口(尚史)教授をブッキングして、DJをしてもらったんです。
そうしたら大炎上して、『森口教授 DJ』でGoogleの検索ランキング第7位まで上がったんです。また、これはいけない例ですけど、冷蔵庫のTwitter炎上も一個人のいたずらですけど、あれだけインターネットで騒ぎになっています。だから、個人でも、やり方次第で良いボールを投げれば、広まっていく環境はあると思うんですね」

佐渡島「インターネット上で広がった話題って、印象には残っても記憶には残りきらないところがあると思います。その中で、企業は商品やブランドを記憶として残してもらわなければならない。その記憶に残るストーリーをどう生み出そうかと考える人たちに対して、アドバイスができる、もっといえば情報の整理ができる人は誰? となると、それは編集者じゃないかと思います。
今、企業に食い込んでいて活躍している人たちって、実は広告代理店の人たちなんです。でも彼らは、記憶よりも印象に残すということが得意のように思えるんですね。逆に、ストーリーを通じて記憶に残す仕掛けをアドバイスできるのは編集者なのかな、と」

草なぎ「つまり、記憶にどれだけ残せるかが大事だということですよね」

佐渡島「漫画家の井上雄彦さんが神奈川県の廃校の黒板に『SLUM DANK』の続きを書いたことがあったんです。それってすごく記憶に残りますよね。体験としての記憶を残すのが、ストーリーの力なのかなと思うんです。僕が編集者として作りたい本というのは、一貫して体験として人の記憶に残る作品なんです」

草なぎ「佐渡島さんがやろうとしていることはすごいですね。今日はお会いできてよかったです。
『MAKERS』を読むと、日本は本当に崖っぷちにあるという気しかしないんです。日本人って職人気質で作り込もうとするけれど、『MAKERS』に登場する海外の人々はそれとは真逆で、どれだけ合理的に大量にどれだけ拡散できるかということを重要視しています。
例えばiPhoneの部品を作っていた日本の会社が、いつの間にか切られていて、中国でその技術が使われていたというニュースがあります。それはAppleが職人さんの手元をビデオで撮っていたからでした。つまり、『MAKERS』的なやり方っていうのは、技術をコピペして安く大量生産するという方法なんです。それって日本とはかなり相容れない部分があるなと思って読んでいました。
「『MAKERS』は、ものづくりのイノベーションが世の中を変えていくという話です。新しいテクノロジーが出てきて、個人がそれを使ってどんどん社会に変化をもたらすことができる。でも、実際に日本でそれをビジネスとして実践している人はあまりいないように思います。
自分でビジネスを考えてアクションを起こすかどうかはその人次第ですが、起こしたら上手くいくかもしれませんし、一人くらいなら食べていける規模は充分可能だと思うんです。10個くらいサイドビジネスを抱えて、自分のライフスタイルに合わせてビジネスを変えていけば、意外と生きていけると思いますし、いろんなやり方があるんだということを『MAKERS』の中から学びましたね」

―草なぎさん、まとめていただきありがとうございます。また、佐渡島さんからは『MAKERS』で予見されている、コンテンツを取り巻く大きな変化に私たちはどう対応していけばいいのかを教わった気がします。個人がコンテンツと向き合わなければ、日本は立ち行かなくなります。その上で『MAKERS』とお二人の言葉は大きな示唆を私たちに与えてくれました。

(了)

【対談者プロフィール】
佐渡島庸平
2002年に講談社に入社し、井上雄彦「バガボンド」、
安野モヨコ「さくらん」のサブ担当を務めた後、三田紀房「ドラゴン桜」、小山宙哉『宇宙兄弟』などのメガヒットを連発し、TVアニメや実写映画化も実現。伊坂幸太郎「モダンタイムス」、平野啓一郎「空白を満たしなさい」など小説連載も担当。2012年10月、講談社を退社し、作家エージェント会社、コルクを創業し、三田や小山らのエージェントを務める。

草なぎ洋平
2006年に東京ピストルを設立。文学カフェ「BUNDAN」のプロデュース、「ももいろクローバーZ」のクリエイティブをはじめ、紙、Web、アプリから空間まで、あらゆる「モノとコト」を編集・デザインを行う。著書にはウェブからリアルなものを生み出す日本のメイカーたちをまとめた『JAPANESE MAKERS』等。

【『MAKERS』オーディオブック版特設ページ】
http://www.febe.jp/documents/special/makers/



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