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本の「自炊」、合法と違法の境界線

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本をスキャナーで電子データ化する「自炊」の3つの態様

著作権法21条は「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」として、複製権が著作者に帰属することを定めています。しかし、同法30条では「個人的に又はその家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下、「私的使用」という)を目的とするとき」に、「その使用する者が複製する」ことを許容しています。

自己が所有している本をスキャナー等で電子データ化することを「自炊」と呼びますが、本の所有者が「自炊」をする態様としては以下の3つが考えられます。

1、本の所有者が、自分の所有するスキャン機材を用いて、自分でスキャンする

2、本の所有者が、本を持参して業者の店舗に赴き、業者が所有するスキャン機材を利用してスキャンする

3、本の所有者が、本を業者に送付し、業者が所有するスキャン機材を用いてスキャン。その後、電子データが本の所有者に送付される

スキャンを行う者が「本の所有者」か「業者」か

第1の態様については、「個人的又はその家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」で使用される限り何ら問題はありません。ここでの「その他これに準ずる限られた範囲内」とは、一家族の人数を大きく上回らない程度であって、家族に準ずる程度の親密かつ閉鎖的な関係のあるグループ内と考えればよいでしょう。

第2の態様について、スキャン行為自体は本の所有者が行うものの、業者がその場所とスキャン機材を提供している点で第1の態様と異なっていますが、これについても今のところ許容されるとする見解が主流です。

問題になるのが第3の態様です。これは、スキャン機材の所有者およびスキャンを行う者が「業者」となっている点で、第1の態様と異なります。この場合、スキャンを行う者が業者であるため、「その使用する者(=本の所有者)が複製する」にならないのではないかということで法廷闘争が繰り広げられました。

本の著作者から訴えられた業者側は、「本の所有者から頼まれて行うのだから、社長が秘書を使ってコピーさせるのと同じであり、スキャン行為の主体はあくまでも本の所有者であって、業者はこれを手伝ったに過ぎず、本の所有者の手足に過ぎない」と主張していました。しかし、東京地方裁判所が今年9月30日に言い渡した判決では、スキャン行為の主体は業者であるとして、業者側の「手足論」を退けました。ただ、最高裁判所の判断ではないため確定した解釈ではありません。

著作者の利益と社会の要請をどのように調和させていくのか

情報の電子化が進み、紙ベースの本を所有しているとスペースを取ってしまうため「自炊」により本を電子データ化したいという要請も時代の流れとしてはやむを得ません。また、「自炊」作業を本の所有者自らがやるのでは手間がかかるため、これを代行する業者が出現することも効率性の観点からは理解できます。著作者の利益と社会の要請をどのように調和させていくのかということが今後も課題となります。

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