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身近だけれど奥深い“コケ”の不思議

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 道端のコンクリートに生えているコケに目を向ける人は、あまりいないだろう。
 しかし、苔園や園芸などコケを趣味にする人もいる。身近にありながらコケの生態を知る人は少ないかもしれないが、実はコケは奥深いのだ。

 『コケのふしぎ』(樋口正信/著、ソフトバンククリエイティブ/刊)では、コケの基礎知識から見分け方、コケとの上手な付き合い方を豊富な写真とともに解説していく。

 地面や岩の上、コンクリートの隙間や塀…見過ごしていることも多いが、いろいろなとこに生えているコケ。そもそもコケとはどんな生き物なのか。生物の分類では、「コケ類」「コケ植物」、あるいは「蘚苔類」と呼ばれる陸上植物の1グループになる。
 胞子で増える点は、キノコやシダに似ている。しかし、緑色をしていることからわかるようにコケは葉緑体をもっていて、光合成を行う。なので、葉緑体をもたず、ほかの生物に栄養を依存するキノコやカビの仲間とは、栄養摂取の点で大きく異なっている。シダは体が緑色で光合成を行い、キノコやカビよりはコケに近いが、大形で、体が根、茎、葉からなり、体の中には水や栄養分を運ぶ維管束がある点でコケと区別される。
 一方、緑色で体が小さいという特徴から、コケは川や池に生える藻類に似ている。しかし、藻類の多くは体が単細胞か糸状の細胞でできており、生殖器官も単細胞。陸上に生え、体のつくりがより複雑で、多細胞でできた生殖器官と受精卵が多細胞化した胚をもつコケとは異なっている。
 まとめると、光合成を行い、胞子で増え、維管束をもたず、多細胞性の生殖器官と胚をもち、藻類とシダの中間的な生き物がコケということになる。

 コケは森のパイオニアとも呼ばれる。造成地が放置されると、いつの間にか草が生え、木が侵入して林になる。このような変化のことを「遷移」と呼ぶ。特に、新しくできた火山島のように無生物の場所から始まる遷移を一次遷移といい、このような場所に最初に侵入する生物がコケなのだ。胞子による長距離散布が可能で、土がなくとも生育できるからだという。時間の経過とともに岩石が風化して砂礫になり、コケの成長により有機物が蓄積し、少しずつ土壌が作られ、草が生育できる環境ができてくるのだ。

 深い森と豊かな雨に恵まれている屋久島のコケの森には多くの種類のコケが生えている。このように景観の中で、コケが主役となる場所が日本にはある。本書では、日本蘚苔類学会が認定している18か所の「日本の貴重なコケの森」も紹介。コケの入門書といえる本書でコケに興味を持った人は、コケを観察しに出かけてみるのも面白いかもしれない。
(新刊JP編集部)



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