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古市憲寿「世界中の小さな戦争を見逃さないでほしい」

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乙武: 8月は原爆投下もあり、終戦記念日もある。日本では様々な形で「戦争」というテーマがクローズアップされる時期ですよね。もちろん、過去の戦争について振り返ることは大切だと思うのですが、そこからどれだけの学びが得られているのか、それが何より重要だと思うんです。

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古市: 日本で戦争といえばどうしても第二次世界大戦ですよね。しかし現代ではこうした国家間の“総力戦”よりも、紛争や内戦といった「小さな戦争」が増えています。しかもその担い手も、徴兵された兵士ではなくて、民間軍事会社に雇われた傭兵になったりしている。「戦争=第二次世界大戦」というイメージが強すぎると、世界中で起きている「戦争」を見落としてしまう危険性があります。

乙武: なるほど。第二次世界大戦だけを振り返ることで、戦争がいかに悲惨なものであるかを学ぶことはできても、かえって「今起こっている小さな戦争」をイメージする想像力を奪ってしまうかもしれない。それが“二度と戦争を起こしてはならない”という本来の教育目的に合致しているのかどうかは検証する必要がありそうですね。

古市: 最近では、無人機やロボットを駆使した戦争だって現実のものになっています。そういう“人が直接人を傷つけない戦争”が一般的になっていけば、第二次世界大戦のイメージで凝り固まった人たちは、批判の言葉を見つけにくいのではないでしょうか。実際、誰も死なない戦争を批判するのってすごく難しいですよね。

乙武: うーん、たしかに。技術と技術で戦って、ロボットが壊れるだけならば、「戦争の何がいけないんだろう?」と感じてしまう人も増えていくかもしれない。

古市: 時代や見え方が変われば、それが本質的には「戦争」であったとしても、リアルに感じられなくなることもありえます。

乙武: 日本で「戦争」といったときに、「関ヶ原の戦い」をイメージする人はまずいない。関ヶ原の戦いだって、日本の歴史を振り返るうえでは欠くことのできない重要な戦争なのに、僕らが「戦争を繰り返してはならない」といった時、それは第二次世界大戦を指している。

古市: たとえば、関ヶ原でピースサインをしながら記念撮影することに、多くの人は抵抗を持ちませんよね。でも、原爆ドームで今それをやるのははばかられるし、おそらくこれからもそうでしょう。それはたぶん、ひとつには単純な時間の問題。もうひとつは、僕らが第二次世界大戦の延長線上の世界に生きているからだと思うんです。今この世の中が、先の大戦によって作られた仕組みの上にあるからだ、と。

乙武: なるほど、たしかに「関ヶ原の戦い」は、すでに二次元の世界になっていますもんね。同じように人と人が殺し合いを繰り広げた出来事でありながら、当事者である武将は英雄視されているし…。

古市: 実際に世界をまわってみて感じるのは、日本のように「平和=非軍事」が前提となっている国は、特殊であるということ。たとえばアメリカでは戦争を勝利に導いた軍人たちが、平和をもたらした存在として称賛され、ドイツ・ベルリンではプロイセン時代の弾薬庫がそのまま歴史博物館に使用されていたりします。日本ほど軍事的な要素をタブー視していないんですよね。

乙武: たしかに日本で「平和」といったら、軍事的な要素は一切排除されているイメージがある。でも、それは決して世界のスタンダードではない、と。僕ら日本人が目を背けてきた部分にも、もしかしたら「平和」へのヒントが隠されている可能性がありそうですね。

(構成:友清 哲)

【今回の対談相手】
古市憲寿さん
1985年、東京都生まれ。社会学者。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍、慶應義塾大学SFC研究所訪問研究員(上席)。近著に『誰も戦争を教えてくれなかった』(講談社)がある

(R25編集部)

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