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“野心”と“諦め”どっちが大事?

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■絶滅危惧種並みのすさまじい野心

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男に永ちゃん(矢沢永吉)がいるなら、女にはマリーちゃん(林真理子)がいる。不況がデフォルトとなった現代日本で「上」を目指せと発破をかける『野心のすすめ』から漂う清々しさは、永ちゃんの『成りあがり』とよく似ている。

その「暗黒時代」も半端じゃない。山梨の中学生時代には、同級生の男子たちから「林真理子を百回泣かせる会」を結成されるわ、就活では四十社以上の就職試験を落とされるわ、会社でも「早く田舎に帰れ」といじめられるわと、さながらサンドバッグ状態。この屈辱が野心に変わるのだから、欲望の量が桁外れなのもうなずけるというもの。

有名になりたいという気持ちをいっさい隠すことなく、そのための努力や投資を全肯定する。一流好き、ブランド好きも公言して憚らない。「表に出るのが嫌い」「恥ずかしいから目立ちたくない」といった言い草に対しては、「そんな言い訳をしているだけで何者にもなれないのは、才能と努力が足りないだけではないでしょうか」と一刀両断。が、それを嫌味と感じさせない圧倒的な野心と努力は、いまの時代には絶滅危惧種並みに貴重かもしれない。

かつての野心は「おら東京さ行くだ!」が基本形だった。しかし、近年の野心の向かう先は、「グローバルに働きたい」であり、そんな海外志向を煽りまくっている一冊が『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』だ。

■野心の向かう先もグローバル化している!?

著者のプロフィールを見ると、大学や大学院を国内外含めて5つも卒業しているという勉強好き。「日本にいて日本語しかわからないとどんどん情報弱者になっていく」「世界に出ていき、世界の変化とテクノロジーの変化を見極めるのだ」といったメッセージは、まさにグローバル人材に向けた「学問のすすめ」と呼ぶにふさわしい。アメリカ留学の次善の策として、シンガポール留学(アジアのハブで英語が学べるから)、インド留学(カオスなエネルギーに満ちているから)を推している点に、著者のこだわりが感じられる。

でも、何のための野心なのか。為末大の『諦める力』は、「やればできる」「夢はかなう」に冷や水を浴びせる、スポーツ選手としては異色の本。「人生は可能性を減らしていく過程でもあ」り、何かを選ぶことは、何かを捨てることになる。そこで重要なのは「勝利条件の設定」、すなわち自分にとって「何が勝ちか」をはっきりさせておくことだという。それにしても、この本はおそろしく内省的だ。不条理な人生、生まれによる不平等にまで思索が広がっている。そんな「走る哲学者」為末さんに、『野心のすすめ』の感想を聞いてみたい。

(斎藤哲也)

<書籍紹介>
●『野心のすすめ』林 真理子/講談社現代新書/777円
●『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』田村耕太郎/マガジンハウス/1365円
●『諦める力』為末 大/プレジデント社/1575円
(R25編集部)

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※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびweb R25から一部抜粋したものです
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