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ゴシックデザインに魅了される理由は?『シザーネックレス』製作者・夜虎さんインタビュー「アンティークな空気感を追求したい」

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ゴシック系好き女子の一部で密かな人気を集めているマテリアルな質感の小さなはさみを装飾したアクセサリー。この『シザーネックレス』の製作者・夜虎さんは、ボーカロイド巡音ルカのサンプリング音声を担当した浅川悠さんのイベントの衣装を手がけているほか、イラストの講師を務めるなど幅広いジャンルで活躍しています。
今回、ワークスコーポレーションから『ゴシック&ロリータ アクセサリー素材集』を刊行したばかりの夜虎さんにインタビュー。クリエイターを志したきっかけや『シザーネックレス』をはじめとするアクセサリー作りに込めたこだわりについて、お話を聞くことが出来ました。

--オリジナリティーあるアンティークな作品を発表されている夜虎さんですが、子供の頃からずっとクリエイターになりたい、と思っていたのですか?

夜虎:うちの家はみんな手先が器用で。お父さんが電気修理の技工士で手作業が得意ということもあり、飛行機や車のプラモデルを作っていたので、立体物がたくさんあるような家庭でした。それで、兄が感覚的に鋭くてちょっと「凡人じゃないぞ」という感じだったんです。

ーー「凡人じゃない」とは?

夜虎:兄が小学生の時にはB4の紙を使ってエッシャーのようなデザインのピラニアの切り絵を作っちゃったりしていましたね。そんな兄とことあるごとに比べられて「悔しいな」ということがあり、それがもの作りを継続する原動力になりました。家族が当たり前のようにできているから自分もできないとおかしい、という意識が強かったですね。

ーー感性が磨かれるような家庭環境だったのですね。影響を受けたというマンガはありますか。

夜虎:一番なのは藤田和日郎先生ですね。今でも『うしおととら』など毎回読むたびに号泣するんですけれど、心理描写がすごいじゃないですか。秋葉流という天才が「自分は努力をしてはいけない」というじゃないですか。何もしないでもできちゃうんだ、と周囲から思われるのは本人にとっては悔しいことなんだって読むことで知れました。あとは山の中で”さとり”に保護された実という目の見えない男の子に対して潮が嘘をつくシーン。嘘をつかないという性格なのに嘘をつかなければならなくなってしまうという業を描いていることがすごいです。

ーー真っ先に男子向けコミックが挙がりましたが、少女マンガや女子を描いたイラストなどはどうでしたか?

夜虎:実はずっと少女マンガは感覚に合わなかったのですが、中学生になっていのまたむつみ先生の『テイルズ・オブ・ディスティニー』のパッケージイラストに衝撃を受けて「女の子ってかわいいな!」と感じるようになりました。とにかく目力がすごい。それまで硬い線やリアルな描写に憧れがあったのですけれど、身体つきや指先まで華奢なんだなぁ、と。この人の絵がすごい好きと心底から出てきて、こういうものが描けるようになりたいと思う一方で、悔しくも感じてましたね。

ーーその頃には完全に創作者としての視点でいろいろなものを見ていらっしゃったということですね。ファッション・服飾に興味を持ったのは?

夜虎:もともと普通の女の子とは感覚が違うというか、欲しいというものが違っているところがあって、一般的な服が合わなかったのですね。みんなが着ているようなパステル調の服が面白くないな、と。それでゴシック系のお洋服のアンティークな部分に関心が行くようになっていきました。実家は三重県なのですけれど、そういったアイテムを扱っているお店は一軒しかなくて。そのオーナーさんと仲良くなって、バイト代をそこにつぎ込み…というようになっていって、あっという間にクローゼットが真っ黒になりました。シルエットも形も面白いデザインばっかりで刺激的、なのに真っ黒。黒って一色じゃなくて、深かったり、艶があったり。変な言い方ですが黒の中にある彩りにも惹かれたのでしょうね。

ーー夜虎さんにとって、ゴシック系ファッションの魅力を一言でいうならばどのような部分になるのでしょうか。

夜虎:普遍であり、異端であるということですね。作品や商品としては真新しく出来たばかりのものなのにアンティークな雰囲気があって、どの時代にも存在するような、昔からずっとあったような空気感がする。妖怪みたいですね。そういうものはどれもパーツ一つ一つにこだわりがあって、かっこいいけれど作っている人は「おかしい」みたいな(笑)。そういうものに憧れるし、自分でも自分のルールを追求したものを世に出したいと思っています。

ーーそのようなアンティークなデザインやアイテムのインスピレーションはどういったものから得ているのでしょうか?

夜虎:ヨーロッパを舞台にした映画が多いですね。『ドラキュラ』や『エリザベス』、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』、『テンプル騎士団』とか、好きな作品はセリフを覚えるくらい繰り返し観ています。現代を舞台にしたものでも、『スリーピー・ホロウ』のように時代がかった衣装のものを参考にすることもあります。あと『オペラ座の怪人』が私にとっては特別で。舞台装置が素晴らしいし、元凶になったファントムの身を引く様が美しいのが好きです。

ーーなるほど。絵を早くから描くようになられて、服作りを高校・専門学校で学ばれている一方、手がけられた『シザーネックレス』が評判を呼ぶことになりました。作ろうと考えられたきっかけを教えて下さい。

夜虎:2010年なので、約3年前ですね。ふとアンティークショップで雑貨として文房具のところにはさみが並んでいたんです。たまたま一緒に行った友だちの誕生日が近くて、ふと「これネックレスにしたら可愛いよね」と考えたところからはじまっています。アクセサリー作りがこれがきっかけですね。「自分が作るものはこれだ!」と閃いたんです。

ーー最初はプライベートな理由からはじまったアイテムを作り続けることになったのは?

夜虎:完成してみて、いろいろな人に「欲しい」と言われて。「同じはさみが手に入るかどうか分からないよ」と言っても、「何年かかっても欲しい」というのがひとりふたりではなかった。だから「求められている」というのがあって、ならば今のうちに自分が作れるようになってしまおう、ということになりました。

ーー毎回一点ごとにお作りになっているわけですよね。持ち主からすれば、一点ものの魅力があると思います。

夜虎:一つの製作に約2時間かかるので、一日あたり最大で8本。腱鞘炎にもなります(笑)。毎回はさみはパーツとしてそのまま使って、動かないように拘束するところに石を使ったりしてデティールや素材の組み合わせで個性を変えているのですけれど。実は、私がいつも身に着けているのが一番最初に作ったものなのですね。それで、今作っているものの装飾性は上がって来ていますが、並べても遜色はないな、と。デザイン性や自分の持っているイメージは崩さず、クオリティーラインを守るようにしています。

ーー刊行された『ゴシック&ロリータ アクセサリー素材集』についてもお聞きします。本を出すことになったきっかけは?

夜虎:自分の絵を多くの方に知ってもらうにはどうしたらいいのかと考えて、2012年の春のコミティアで作品のCD-ROMを頒布したんです。それがこの本の編集さんに目に留まって、「素材集を出しませんか」とお声がけ頂きました。

ーー『シザーネックレス』をはじめ、紋章やロゴといったデザインパターンのデータもあって、実用的でもあるのですが、冒頭に写真とイラストがミックスされたページもあって、通常の素材集とは一味違っています。

夜虎:絵の世界とモデルさんの写真を入れることで、私の世界を表現してみました。現実と仮想の世界を融合させるイメージですね。衣装やアクセサリーも私が作っているので、パターンのデザイン性と現物のマテリアル感を両方感じて頂ければと思います。

ーー細部のデザインまでかなりこだわられたということですが。

夜虎:やはり自分で納得するものを出したいということはもちろんなのですが、「手元に残したい」と思ってもらえる本を作りたかった。表紙のデザインもですけれど、裏の色や遊び紙を入れてみたり、素材ページの背景のパターンも毎ページ変えたりして、普通の素材集ではあり得ないこだわり方をしています(笑)。編集さんにはかなり無理をお願いしてやって頂いたので本当に感謝ですね。

ーー星座やサーカスをモチーフにした紋章や、さまざまな生き物のパターンもあって、これを約1300点も手描きされるというのは、素人からすれば気の遠くなるような作業に思えます。

夜虎:私は細かい絵を描き込むことが苦でないんですね。ですが、これまでアナログ専門で、Illustrator をはじめて使ったので苦労しました。初めてのデジタルで自分はどこまでできるのかなというチャレンジでもありますね。データは自由に使えるようになっているので、マンガやデザインのページなんかで、自分の素材を使われるようになって、私のことは知らないかもしれないけれど、知らないうちに読む方の目に入っているということになればいいですね。

ーーこれまでお話をお聞きして、まさに「クリエイターズ・クリエイター」という印象を受けました。今後どのようなご活動をされていきたいとお考えですか?

夜虎:藤田先生にお会いするきっかけがあったのですけれど、ある時に「私は先生の漫画から沢山のものを得ているのに、何も返す事ができない」と言ったことがあったんです。すると先生は「それは違うよ、僕ら漫画家は、顔も名前も知らない沢山の人達の時間を、自分の漫画を読んでもらうことで、人生の数分を独占しているんだ、それって凄いことなんだぜ」とおっしゃって頂いて…。私も似た様な事をずっと考えていたので、この言葉を頂いた時は鳥肌が立ちました。私の名前は知らなくてもいいから、作品を手に取ってくれた人の一瞬を奪うことができればものすごいことだと思っているので、何をするにしてもそれを目指しています。

ーー心に残るものを送り出したい、と。

夜虎:毒みたいな存在になりたいですね。蜂に刺された痕のように、意識の中にずっと残っている。そんなインパクトが残るような作品を送り出していきたいです。あとは、その道でプロでやっているひとがいる限り、自分は手を抜かないようにしようと決意しています。何事も先人に失礼にならないように。そういった礼儀を大切にしていきたいです。

『ゴシック&ロリータ アクセサリー素材集』 /夜虎 著|ワークスコーポレーション
http://www.wgn.co.jp/store/dat/3285/ [リンク]

夜虎道楽(公式ブログ)
http://ameblo.jp/yako723/ [リンク]

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記者:

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

ウェブサイト: http://yaplog.jp/parsleymood/

TwitterID: parsleymood

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