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A.ジョリーの乳がん手記は米最高裁遺伝子特許権裁判への牽制

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 女優のアンジェリーナ・ジョリー(アンジー)が遺伝子検査の結果、乳がんを予防するために両側の乳房を切除、再建手術を行ったとみずから発表したニュースが日本でも話題になった。日進月歩の遺伝子研究には、多くの問題点があると諏訪中央病院名誉院長で『がんばらない』著者の鎌田實氏はいう。

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 アメリカだけではなく、日本でもいま、乳がんは激増している。年間約6万人もの人が新たに乳がんになっているといわれる。そのうちの5~10%が、遺伝性の乳がんとされる。

 これはきちんとした遺伝子検査が行なわれていない数字で、専門家によれば、20%近い人に遺伝性の乳がんがあるともいう。

 遺伝性の乳がんは若くして発症し、進行が早く命を落としてしまうことが多い。

 5月初め、『ニューヨーク・タイムズ』紙に、アンジーが「自らの乳がんを引き起こす遺伝子検査を受け、両側の乳房を切除し、乳房再建手術を行った」と手記を発表した。手記でアンジーは、こうも言っている。

「BRCA1、BRCA2の検査は、アメリカでは3000ドル以上かかります。これが多くの女性にとって障害になっているのです」

 これ以上のことをアンジーは詳しく書いていないが、この発言の裏には、現在、アメリカの最高裁で係争されている遺伝子の特許権についての牽制が含まれているような気がした。

 これはアメリカのミリアド・ジェネティクス社を相手取り、アメリカ自由人権協会や15万人もの遺伝学者、病理学者、研究員らが起こした訴訟だ。

 同社は、BRCA1とBRCA2の遺伝子を単離(分離させること)する技術と、単離された遺伝子をスクリーニングできる技術を特許とすること。さらに単離された遺伝子そのものにも同社の特許が及ぶとした。これを聞いて「遺伝子そのものに及ぶとは──」と猛反発が起きた結果、訴訟に発展したのだ。

 いくら単離できる技術があるとはいえ、遺伝子に特許というと何か奇異なものを感じるが、実は下級審ではミリアド社の主張が認められている。

 元々、遺伝子の解明には、世界中のたくさんの学者たちが総力を挙げて検査した結果、わかったことが多い。ミリアド社のある人が、遺伝子の中の一部であるBRCAに初めて注目したからといって、遺伝子の特許をもつというのは、きわめておかしい。

 遺伝子治療は、いろいろな病気に苦しんでいる人たちが希望を託す治療でもある。その病気を治せるように遺伝子情報はオープンにして、固有の特許を与えるべきではないのだ。

 これまでアメリカは、IT関連分野でもそうだが、知的財産でアメリカ型の資本主義を守ろうとしてきた。今回のケースもまったく同じといえる。最高裁の判決は6月下旬ごろに下されるが、予断を許さない状態だ。これが認められれば、各界に影響が及ぶ。

 日本でも多額の特許料を払わなければ、薬の製造や検査法、新しいがん治療の開発ができず、高い障壁となってしまう。

 組み替えられていない遺伝子に関しては、特許を認めるべきではないだろう。そして、アンジーがいっているように、遺伝子検査を希望するすべての女性たちに対し、検査を受けやすいようにしてあげたい。

 30万円などという高額な検査料ではなく、その10分の1くらいで受けられるようにすべきなのである。

※週刊ポスト2013年7月5日号



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