ビジネスホテルが帝国ホテルにサービスで勝てたワケ

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ビジネスホテルが帝国ホテルにサービスで勝てたワケ
 ビジネスホテルといえば、とても利便性が高くて比較的安く宿泊できるけれど、高級ホテルほどのサービスやホスピタリティは望めないという前提のもとで利用する人は多いはず。
 ところが今、一泊4980円(最安値プラン)のビジネスホテルチェーンが、シティホテルを含めた日本の全てのホテルの中でも顧客満足度1位を獲得、さらに全業種でも12位にランクインと、高い顧客満足度を誇っています(サービス産業生産性協議会2010年度調べ)。これは、かの帝国ホテルやホテルオークラを上回る数字。顧客満足度が高いということは、それだけサービスの質が高いということになります。

 『1泊4980円のスーパーホテルがなぜ「顧客満足度」日本一になれたのか?』(アスコム/刊)は、高い顧客満足度を誇るスーパーホテルの会長・山本梁介氏がその秘密を明かした一冊です。そこには、サービスやホスピタリティの質を高めるスーパーホテル独自のやり方がありました。

■ロハスとエコを軸に健康と環境に優しいホテルを目指す
 スーパーホテルが打ち出している軸の一つに「LOHAS」(ロハス)があります。ロハスとは、健康や環境を重視するライフスタイルの中で、「エコ」の思想とセットで語られますが、これをどのようにホテルに取り入れているのでしょうか。

 スーパーホテルが2009年3月に奈良にオープンしたホテルは、このロハスの考え方を全面に打ち出しています。例えば環境を考えて天井に珪藻土を使ったり、お客の健康を考えて無料でヘルシーな「健康朝食」を提供したりするなど、こだわりを貫いています。
 また、スーパーホテルの系列店のうち50店舗が「天然温泉」を備えていますが、これはもともと会長の山本氏の母親への親孝行がきっかけで生まれたもの。さらに、大浴場を設置することで、宿泊客は個別のシャワーを使わなくなり、水道代の節約にもつながるのではないかと考えたそうです。
 宿泊客に健康になって欲しいという想いが下敷きとなり、そこに合理化の追求が相まってスーパーホテルの“軸”が生まれました。

■環境とロハスは、女性と子どもに優しいホテル作りにつながる
 こうした健康や環境への配慮によって、女性や子どもの宿泊客も増えてきたといいます。
 全面禁煙ホテルや、女性にとって嬉しいアメニティグッズをプレゼントなどのサービスも人気を集めている理由の一つなのですが、やはりエコへの配慮は、女性客たちへの好印象をより高める上で大きな影響を与えています。

 こう考えると、エコに配慮するホテルの姿勢そのものが、宿泊客にとってみてはホスピタリティに見えるのかも知れません。ホスピタリティといえば「おもてなし」という言葉からもイメージで出来るように、接客時の精神として使われることが多いですが、「環境」という、自分とは違うものへの配慮でも、そこに共感を覚えて、満足度を高める――これは、全く新しいホスピタリティの形ではないでしょうか。

■素人支配人が成長できる環境を提供している
 もちろん、スーパーホテルでは、従来のホスピタリティ教育もされていますが、その方法は他の企業とは一線を画しています。
 スーパーホテルは2013年5月現在105店舗ありますが、実はそのうちの93店舗が“ベンチャー支配人”によって運営されています。ベンチャー支配人というと少し分かりにくいかも知れませんが、これはスーパーホテルと業務委託契約を結んで店舗を運営している独立自営業者のこと。つまり、スーパーホテルが箱を用意し、経営を任せているということです。
 そして、それぞれのホテルの経営者たちは一般公募によって採用された、いわば“ホテル経営の素人”。中には接客業務の未経験者もいるそうです。しかもほとんどが夫婦で応募してくるとか。

 彼らとは4年契約を結び、その間に経営やホスピタリティについて学んでもらいます。それで経営は大丈夫なの? と思う人も多いはず。しかし、山本氏は客に感動を与えられるために自分の頭で考え、自発的な行動によってそれを示す経営をして欲しいと期待します。
 一方の素人支配人たちも、客の反応を直に見ながら自発的にホスピタリティあふれる接客しようとします。もちろん失敗もありますが、その一つ一つが経営者として成長させます。そして、それが売り上げにつながってくると、ますます面白くなってくるでしょう。経営者同士で競わせながら、ホスピタリティを高めていく。それがホテルの評判へとつながっていくのです。

 本書では他にも、山本氏の半生をはじめ、従業員の教育方法や、山本氏の考えるホスピタリティなど、スーパーホテルを“顧客満足度日本一”にさせた山本氏の経営術が明かされています。
 「モノ」と「人」、そのいずれのサービスも一工夫で大きく変わる。本書を読めば、客のニーズに気づき、しっかりと工夫を加えることの重要性に気づくことでしょう。
(新刊JP編集部)



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