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ロングインタビュー「郷ひろみ」

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「130歳で引退ってどうですか?」って(笑)

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R25世代が生まれたときにはすでに活躍していた。

たぶん僕たちの全員が知っている。

名前を聞けば、顔や声を想像することができる。

脳内で彼のヒット曲を再生しながら。

そして今も、ここにいる。

デビュー以来42年、彼は僕らの知る郷ひろみなのだ。

そのために、彼はいったい何をしてきたのか?

「アジアの郷ひろみ」
という新しい挑戦

ページをめくると、だだ曇りの風景。骨組みだけのビルの向こうに、統一感のない背の低い建物が並ぶ。車線からはみ出て走るクルマの群れが活気を感じさせる。その町に、彼は降り立った。スリムなブラックスーツにノータイ、素足にエナメルシューズ。通りを歩き、古くてダサいスクーターにまたがってVサインを寄越す。

台湾で撮影された郷ひろみの写真集だ。表紙(左ページを参照されたし)から予感されるとおり、入浴シーンもある。

当の本人に「25~34歳男子に写真集をどんなふうに見てもらいたいですか」と尋ねると「僕のコアなファン以外は難しいかもね」と笑った。「どうせ裸なら、女性の方がいいでしょう(笑)」。 

郷ひろみといえば、アメリカだ。2002年から3年半にわたってニューヨークに暮らしたこともあるし、そもそも30年以上前から歌と踊りのレッスンで毎年のように訪れていた。そんな事実を抜きにしてもハリウッド的、ラスべガス的ショービジネス感みたいなものがよく似合うぜ! HIROMI GO!

…でも今回は「アジア」だ。

約1年ぶりのシングル「Bang Bang」がリリースされる。作詞・作曲は韓国のマルチアーティスト、オ・ジュンソン。

「クラシックをみっちりやられていて、音楽に関してとてつもなく間口が広い方です。僕はもともと韓国のメロディが大好きで、去年の段階から話を進めていました。『Bang Bang』は今までにないミディアムナンバー。これまでと違う僕の声の感じがうまく出せたと思います」

それと写真集がシンクロし、「アジア」というテーマが打ち出された。ロケ地は台湾、撮影は香港の写真家ジミー・ミン・シュン。48時間密着して撮りまくった。ジャンクで活気ある台湾の風景と郷ひろみはミスマッチで、非常に新鮮なビジュアルになっている。

「アメリカで撮るとスッとなじんだのかもしれないですね。僕にはこれまで“アジア”というイメージがなかったと思うので」

だがその一方で、すべて“郷ひろみの写真”として成立しているのも事実。ポーズをキメていても、足裏マッサージに顔を歪めていても、普通に車道を渡っていても“ヒロミ・ゴー・オーラ”がページを支配してしまう。

「本人はあんまり何も考えてないんですけどね(笑)。だって“僕ってオーラあるね!”って自分で思うのはヘンでしょ? それはあくまで他人が感じること」

だが、この取材でメインカットを撮る際、インタビューチームはそのオーラを実際に体験している。カメラマンの指示でレンズから目線を外した郷ひろみの、その眼力がカメラ脇に控えていたわれわれを直撃したのだ。彼はただスッとこちらを見ただけにすぎない。凄まず、媚びず、単に見ただけ。なのに目をそらさざるをえない“何か”があった。

「いや、だからそれが本人が一切感じてない部分なんですよね」

困ったような顔でそう言う。

「なんでも…誰でもそうだけど、ひとつのことをずっと続けていくことで生まれるものってあるんです。その仕事の“奥行き”って、そこまで突き詰めた人にしかわからないでしょう? 途中で違うところに行ったら、その場所までは絶対に到達できない。そこまで行って初めて吸収できるものがあるんですよ」

オーラもそのひとつなのか。

ずっと変わり続けている。
だからこそ“変わらない”

8年前、『R25』は郷ひろみを一度取材している。彼がちょうど50歳を迎えるタイミングで、ニューヨークでの3年半にわたる休養を終えて帰国した年。向こうで素晴らしいボーカルトレーナーに出会い、歌への自信を新たにしていた。そのとき「ピークは50代にやってくる」と語った。

今、57歳の郷ひろみは「ピークは60代」だと言う。

「いざ帰国してチャレンジしていくと、理想に到達するにはもっと時間がかかることがわかったんです。今にして思うのは、あれは長い長い基礎づくりの終わりだったんだなあ、ということ。四十数年かかってしまいました。僕が追い求めているものは、それだけとてつもなく大きかったんです。夢が大きければ大きいほど、それに費やされる時間が膨大なものになっていくのは、当然のことですよね」

目標は「郷ひろみを極める」ということ。単純に考えると“究極の郷ひろみ像”を設定し、それに向けて自分をブラッシュアップしていく、ということになるのだろう。だが、郷ひろみ自身にとっても“究極の郷ひろみ像”ははっきり定まっていないのだという。

「僕はどんどん変化していきたいんです。変化とは、これまでにないことをやって“世界を広げる”ということ。自分が身につけたことが増えれば、考え方も変わるしキャパシティも大きくなるでしょう。それこそが進化だと思う」

今回の写真集と新曲も積極的に仕掛けていった変化のひとつ。

「みなさん、よく褒め言葉として“ひろみさん、昔とちっとも変わんないよね”って言ってくれます。でも僕は誰よりも変わってきたと思ってるんです。たとえば音楽ってこの数十年でアナログからデジタルへと劇的に変わりました。支持されるテイストも変わったし、ジャンルも多様化した。僕はその波に晒された世代なんですが、きっちり対応してきたという自覚がある。変化についていくには自分も変化しなくちゃならない。今ここにいて“変わんない”ってみなさんが思ってくれているのは、僕が変わってきたからこそだと思う。これが正しいって言ってるんじゃないんですよ。これが僕のやり方なんです」

芸能生活がそれをつぶさに物語る。「男の子女の子」「よろしく哀愁」「誘われてフラメンコ」など、今もグッと来るアイドルソングを繰り出し、樹木希林との驚くべきデュエット曲も完成度高く仕上げ、結果を残し、歌手として絶頂にもかかわらず賞レースやランキング番組への出演を辞退。82年に「哀愁のカサブランカ」で世に問うた“郷ひろみのスローバラード”は、93~94年の「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」「言えないよ」「逢いたくてしかたない」という、いわゆる“バラード3部作”として結実。その間にアッパーな郷ひろみの象徴「2億4千万の瞳―エキゾチック・ジャパン―」も成功させている。

変化し、新しいことに挑戦し、「これもまた郷ひろみ」とみんなに納得させる。そしてまた変化する…ということを15歳からずっとやり続けてきた。

「変化には時間がかかる。周囲に認められてこその変化。すぐやって、すぐ実績は残せない」という発言も、「変化に対して恐怖心は必要。それを克服することにも意義はある。恐怖に打ち勝って挑戦すれば、失敗しても何かが残る」という言葉も、「どんな人でも能力は開花する。それにはものすごい時間と労力を費やさねばならない。大半の人はそれができずに世を去る。能力の有無ではなく時間と労力をかけなかっただけだ」という分析も、全部経験に基づく実感。「基礎固めに40年かかった」と言えるほど、取り組んできた人ならではの、まさに魂の叫び。

今後も変化は続く。仮にまた8年後取材の機会があったとして、ひょっとして郷ひろみは「ピークは70代」と言うかもしれない。

「どうかなあ。先日、テレビ番組でカラダのいろんなデータを取ったんですよ。そのとき血管年齢(だったかな)っていうのも調べてね。この間オンエアを観たら、20代だって!(笑) 20代の最高の状態。その番組を観た人に言われました。『この際130歳で引退っていうのはどうですか?』って(笑)。うーん…僕には美学があるから。もし年齢以上に歌えたり踊れたりしても、“人前に出して大丈夫”という郷ひろみ像が崩れてたら、辞めちゃうんじゃないかな…まあ、声は年齢に応じて“良さ”が変わって味になったりするし、この先自分の理想像がどんどん変わっていくので、まあどうなるかわかりませんけどね」

きわめて真剣な顔で郷ひろみは答えるのであった。

プロフィール
「郷ひろみ」ごう・ひろみ

1955年、福岡県生まれ。71年に芸能界入り、翌年NHK大河ドラマ『新・平家物語』で俳優として、「男の子女の子」で歌手としてデビュー。76年『さらば夏の光よ』で映画初主演。「セクシー・ユー」「How manyいい顔」「お嫁サンバ」「素敵にシンデレラ・コンプレックス」「GOLDFINGER’99」など、日本歌謡史に残るヒット多数。ドラマ『ムー』『ムー一族』『刑事貴族』、映画『鑓の権三』『瀬戸内少年野球団』『舞姫』など、俳優としても活躍。現在、年間100本以上のライブをこなす。写真集『G 郷ひろみ』×CD「Bang Bang」の発売記念イベントが、6月16日(日)まで代官山蔦屋書店で開催中。6月10日(月)には福家書店・神戸店、 7月2日(火)には福家書店・福岡店でも開催。詳細は、ギャンビットHPまで。www.gambit-ent.com

(R25編集部)

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