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弁護士出身政治家 国会で相手論破目的化する致命的欠陥あり

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 政治の世界で存在感を高めつつあるのが「弁護士(法曹)出身」政治家である。国会では40人の大勢力となっている。とりわけ、目立っているのが「日本維新の会」の共同代表の橋下徹・大阪市長だ。

 その橋下氏だが、今回の「従軍慰安婦」発言では当初、“どこの軍にもセックスサービスはつきもの。だから沖縄米軍の兵士に性犯罪を犯させないためには風俗をもっと使えばいい。日本の風俗は合法だから”と、いわば必要悪として肯定する論理展開だった。

 それが国際的な批判を浴びると、「法的には間違いではない」と強弁し、外国特派員協会で開いた釈明会見では、本当にいいたかったのは“日本は慰安婦問題を反省すべきだが、各国も自国の兵士が女性の人権を蹂躙した事実に真摯に向き合うべきだという趣旨だった”と論点を変えた。

 こうした論点のすり替えは政治家にとっては大きな問題をはらむのではないか。平野貞夫・元参院議員は、議会政治の面でも、弁護士出身者には致命的な欠陥を持つ議員が多いと指摘する。

「議会政治では相手を納得させ、あるいは勝ちを譲っても、幅広い合意をつくることが重要だ。しかし、弁護士議員は法廷のように国会で相手を論破することが目的化している」

 言い方を変えれば、橋下氏がそうであるように、「敵」とみなせば徹底的に攻撃する闘争本能が弁護士政治家の特徴だ。小沢一郎氏の陸山会事件をめぐる民主党内抗争でも弁護士出身議員が大きな役割を演じた。

 検察審査会で小沢氏が強制起訴されると、江田氏や仙谷氏ら菅政権中枢の弁護士政治家たちが「起訴は起訴だ」「強制起訴なら離党勧告」とその闘争本能を発揮して攻撃し、民主党執行部は小沢氏を党員資格停止処分にして代表選への出馬を含めて政治活動を封じ込めた。それが民主党分裂につながり、政権を失う結果を招いた。

 しかし、そもそも小沢裁判は、検察の捜査段階から、政治資金収支報告書の入金日の「期ずれ」問題(※注)という、他の多くの政治家は報告書の修正で済ませている事務手続き上の瑕疵(かし=欠点、欠陥)が問われた事件である。

 そんな形式犯の容疑で、果たして政権党の大黒柱だった小沢氏の政治的行動を縛ることが国民に益をもたらすのか。この事件は国家において政治と法のどちらが優先されるかをめぐって、形式犯でも違法は違法と見る「弁護士政治家の正義」と、瑕疵があったと違法性を問うより有権者への責任を果たすことの方が重要だという「政治家の正義」が正面からぶつかった戦いといえた。

 最終的には小沢氏は後に無罪が確定し、違法性さえも認められなかったわけだが、それならなおのこと、弁護士政治家が仕掛けた内紛はマニフェストの実現を挫折させ、国民の生活を混乱させて政権交代への期待まで潰し、戦後日本にようやく定着したかに見えた「国民の政権選択が可能な2大政党制による政治」を大きく逆戻りさせただけではなかったのか。

 江田五月・元参院議長がこう振り返る。

「あの時、小沢氏は強制起訴で刑事被告人になった。民間人が被告人になっても、推定無罪の原則から会社をクビになったりするのは間違っているが、公務員であれば判決確定まで休職扱いになります。ましてや、国会議員という権力行使や立法に関わる人が、被告人になっている状況は矛盾がある。だから党員資格停止処分にしたのは間違っていなかったと考えるが、結果、小沢さんが無罪でよかった」

 裁判官出身らしく、政権党の分裂で国民生活を混乱させても、「法律家の正義」を優先すべきという姿勢に見える。

【※注】小沢氏の政治資金管理団体「陸山会」は2004年10月に世田谷区内の土地の購入契約を結び、翌2005年1月に本登記した。同会はこの土地の取得を「登記日」である2005年の政治資金収支報告書に記載したが、検察審査会は「購入日の2004年分に記載しなかったのは虚偽記載」と小沢氏を政治資金規正法違反容疑で強制起訴した。小沢裁判で問われたのは「購入契約日」か「登記日」に記載すべきか、という手続き上の瑕疵の責任の所在だった。

※週刊ポスト2013年6月14日号



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