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堀潤「現実の多様性をきちんと押さえたニュースが必要」

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乙武: 堀さんはNHK在職中から、Twitterを使って独自に情報発信を行っていましたよね。それは、やっぱり社内的にマズイことなんですか? 風当たりがキツくなるとか。

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堀: もともとはプライベートなアカウントではなく、局員としてオフィシャルに取得していた、頭に「NHK_」と付いたアカウントで情報を発信していたんです。でも、僕が勝手にいろいろ情報を出しちゃうことが局内で問題になり、ついに上司からアカウントの停止を命じられてしまって……。

乙武: でも、その時点で10万人くらいフォロワーがいましたよね。いくら上司からの命令とはいえ、「もったいない」という思いはなかったんですか? だって、10万人もの人に直接訴求できるツールって、なかなかないでしょ。

堀: 最初は「消せ」といわれても、「嫌です」といいつづけていたんです。でも、弁護士に相談したところ、「憲法で保証されている表現の自由は会社の内規に勝るので、個人のアカウントであれば問題ない」ということだったので、だったら会社のアカウントを消して、個人のアカウントでやればいいや、と(笑)。

乙武: なぜ、堀さんはそこまでして、個人による発信にこだわり続けたのですか? やはりNHKというメディアが、取材で得たはずの情報をきちんと公開しないことに不満があったから?

堀: そうですね。たとえばドキュメンタリーの場合は、ひとつのテーマにたっぷり時間をかけて検証できるので、さほど問題は起きにくいんです。しかしニュース番組は分刻みで内容が変わりますから、番組をどう構成し、どのような情報を流すか、難しい瞬時の判断を強いられます。だからこそ、震災時には安全運転になってしまい、完全に裏が取れていない情報は「様子を見てからにしよう」と流さなかったことで批判も浴びました。まずはこういう、システム面を改善しましょうと僕はいいつづけてきたんです。

乙武: なるほど。ただ、震災の時でいうと、情報の公開を控えたことに一定のメリットがあったのも事実だと思うんです。たとえば放射能。「こういう可能性もある」という情報を未確認のまま次々と出されていたら、僕自身もっとビビっていたと思うし、家族を混乱させていたかもしれない。もちろん、だからといって、堀さんが疑問を感じていたように「安全運転」でよかったのかはわからないけど…。

堀: うん、そういう意見もあるでしょう。実際、福島原発に近いある町では、自治体の判断でいち早く数千人が避難を開始したところ、普段なら30分で通り抜けられる道のりに、8時間かかったなんて話もあります。これを東北全体の規模でやっていたら、とんでもないことになっていたはず。何が正解だったかを判断するのは難しいけど、「しょうがなかった」で片付けてしまい、報道のあり方の検証を怠ってはいけないということなんですよ。

乙武: 結果的にどちらがよかったのかはわからないけれど、少なくとも当時の報道のあり方を検証すべきだ、と。でも、NHKはそれをしようとはしなかった。やっぱり、このあたりが巨大メディアの難しさでもあるんですかね…。

堀: そういうことです。たとえばTPP問題を報じるにしても、時間の限られたニュース番組のなかで、経緯や仕組み、世間の声などを取り上げ、さらに工業や農業などジャンルごとの視点で報じることは不可能です。だから、のっけから「農業問題としてのTPPが」といった表現になってしまう。すると、工業側の人から「農業だけの問題じゃないぞ」とクレームが入る。

乙武: ニュースって、どこに向けて作るかによってまったく違うものになりますもんね。でも限られた時間だと、すべての視点を網羅することは難しいから、結局は多数派に近いと思われる切り口を選択せざるを得ない。けど、たしかにその問題を違う角度から見たい人だっているもんなあ。どうしたらいいんだろう。

堀: そうです。だからこれを改善するには、現実の多様性がきちんと押さえられたニュースを作るしかないわけです。そしてそのためにはインターネットが不可欠なわけです。そこで昨年立ち上げたのが、市民ニュースサイト「8bitNews」なんですよ。

乙武: 堀さんが以前から標榜するパブリック・ジャーナリズムのひとつの形が「8bitNews」ということですよね。これについては、次回詳しくお聞きします。

(構成:友清 哲)

【今回の対談相手】
堀 潤さん
1977年、兵庫県生まれ。立教大学・文学部ドイツ文学科卒業後、2001年にアナウンサーとしてNHKに入社。原発事故報道に関する同局の報道姿勢に疑問を持ち、2013年3月末をもって退社。現在はパブリック・ジャーナリズムへの取り組みの一環として「8bitNews」を手がけるなど、新たなメディアの形を求めて活動中

(R25編集部)

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