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高校野球の大阪代表が弱体化したワケ

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 出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
 記念すべき50回目の今回は、講談社「ヤングマガジン」で、『砂の栄冠』を連載中の三田紀房さんが登場してくれました。
 『砂の栄冠』は、高校野球の爽やかなイメージの裏側に隠された本当の姿に焦点を当て、そのイメージを利用しながらしたたかに甲子園を目指すという、これまでにはなかった野球漫画。
 今回は三田さんが本作の取材で知った高校野球の裏側や、『砂の栄冠』の今後など、気になるテーマについてたっぷりお話を伺いました。

■地域から高校野球を切り離すとダメになる
―『砂の栄冠』の今後の展開ですが、連載の方では春のセンバツが終わり、夏に向けて再始動というところです。高校野球は春と夏では戦い方が全く異なり、そのあたりをどう描かれるかが注目されますが、もう構想はできあがっていますか?

三田「できています。秋は新チームができて、長いシーズンのスタートですから、まだ余裕がありますけど、夏は負けたらそこで終わりです。まさに一球一球が運命をかえるわけで、そのプレッシャーは秋や春の比ではありません。そこが試合の内容にも関わってきますよね」

―夏は地区大会の盛り上がりも他の季節と全然違いますからね。

三田「そうですね。親も学校も熱狂的です。神奈川とか強い県に行くと、地域がどれだけ高校野球が好きかっていうのがわかります。その県の甲子園での勝利数と地元ファンの熱さは比例してると思います」

―神奈川は一回戦のレベルが他の県より断然高く、高校野球の裾野の広さを感じます。

三田「『甲子園へ行こう!』を連載していた時は、舞台が神奈川だったのでよく神奈川大会を観に行っていたんですけど、一回戦から球場が満員なんですよね。平日にも関わらずおじさんがビールを飲んでいたりする(笑) ただ、東海大相模など強豪校の試合かというとそんなこともなくて、普通の県立校同士の試合だったりする。それでもお客さんが入るんです。だから、横浜スタジアムで東海大相模対横浜なんていったら満員札止めですよ。神奈川県が強い理由っていうのはそういうところにあるんですよ。地元のお客さんの熱気が全然違う。
去年、大阪桐蔭が全国制覇したじゃないですか。でも、それまでの何年間かは大阪代表の成績が悪かったんです。それがなぜなのか不思議に思って大阪の新聞社の人に聞いたら、野球場の応援に対して、近所の人からうるさいという苦情があったらしいんですよ。それで大阪の高野連の会長が、大阪大会決勝の会場を府のはずれにある舞州スタジアムに移してしまった。一般のお客さんは入れないし、ブラスバンドもダメ、野球部員と父兄しか入れないようにしたんです。これを何年かやっていたら急激に大阪代表が弱くなったそうです。
野球って日本人の心情の中に根付いていて、打球音や野球部の声っていうのは街が生きてる証拠だと思うんです。去年の大阪桐蔭は別格でしたけど、僕は地域から高校野球を切り離すとダメになると思っています」

―高校野球のレベルは、この10年ほどで格段に上がった気がします。トレーニングの発達というのがその理由としてよく言われますが、他にも思い当たることはありますか?

三田「練習試合を含めて年間にこなす試合数が格段に増えたことも挙げられると思います。試合をすればするほどレベルは上がりますから。
昔は他県に遠征するとなるとものすごく時間がかかりましたけど、今は交通網が発達して容易になっています。そうなると高校野球の監督は自分のチームの選手と他の地域の選手がどれくらい違うのかを目にする機会が増えるわけです。それで、遠征に行った時にどうみても相手方の選手の方が大きかったら、監督は何をするかというと“お前らもでかくなれ、飯を食え”と(笑) 見劣りするのが嫌なんでしょうね。そして、日本全国で選手を大きくするために飯を食べさせるという指導が流行します。そうなるとパワーがつきますし、パワーがつけば打球は飛ぶようになり、球も速くなる。そういう一連の流れが見えます。
技術的にもうまくなりましたね。昔は無死2塁の場面で送りバントをしてきたら、3塁には投げるなというのが基本でした。悪送球になったら点が入ってしまいますから、リスクがあるということですね。
でも、今は3塁に投げてランナーを刺せというのがセオリーになっています。そうなるとランナーも速く走らないといけませんし、バントの技術も上がります。守る方はバントシフトの練習が必要です。こういう風に野球のセオリーが変わったことで技術が伸びているということもあると思います」

第三回:『クロカン』と『砂の栄冠』に共通するもの につづく



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