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3月24日 アベノミクスの今後の展望について、田原総一朗氏と竹中平蔵氏の緊急対談

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3月24日 六本木アカデミーヒルズにて
経済政策「アベノミクスチャンネル」
安倍内閣の放つ三本の矢は、日本経済を成長軌道へと導くことができるのか?  
アベノミクスの今後の展望について、
田原総一朗氏×竹中平蔵氏緊急対談全篇です。
【協力:アカデミーヒルズ】【主催:東京プレスクラブ】
プロフィール
【田原総一朗氏】
1934年、滋賀県生まれ。
60年、岩波映画製作所入社、 64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。 77年にフリーに。
テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』で テレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。 
98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。
現在、早稲田大学特命教授として大学院で講義をするほか、「大隈塾」塾頭も務める。 『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。 また、『日本の戦争』(小学館)、『田原総一朗自選集(全5巻)』『絶対こうなる!日本経済』『田原総一朗責任編集 ホリエモンの最後の言葉』(アスコム)など、多数の著書がある。 
【竹中平蔵氏】
1951年和歌山県生まれ。一橋大学経済学部卒業。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て、2001年小泉内閣で経済財政政策担当大臣を皮切りに、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣兼務、総務大臣を歴任。2006年より現職。経済学博士。
著書は、『経済古典は役に立つ』(光文社)、『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)、『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』(日本経済新聞社)、『研究開発と設備投資の経済学』(サントリー学芸賞受賞、東洋経済新報社)など多数。

書起し全篇です。
司会:それでは皆さんこんばんは。
お時間になりましたので、始めさせていただきます。
本日は3月から正式オープンします、安倍内閣の経済政策を徹底検証することを目的とするニコニコ動画のチャンネル、「アベノミクスチャンネル」のオープンを記念しまして、特別対談として開催することとなりました。
本日ゲストにはジャーナリストの田原総一朗様、そして慶応義塾大学教授グローバルセキュリティ研究所所長、アカデミーヒルズ議長の竹中平蔵先生をゲストにお迎えしています。
それでは早速、特別対談「アベノミクスはどこへ向かう」を始めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

竹中:田原さん、今日はよろしくお願いいたします。

田原:よろしくお願いします。

竹中:アベノミクスについて、今更「三本の矢」の解説も必要ないと思うんですけれども、これまでの安倍内閣の動き全体を、田原さんご自身はどんな風に総括をしておられますか。

田原:まず、お尋ねしたいんですが、実はアベノミクスに日本の有力な経済学者、エコノミスト、本音は全部反対なんです。
ところがマーケットが円安になり、株価が1万2千円と上がってきた、かつて8千800円ですからね、円だって77〜78円、これが95〜96円。
マーケットがアベノミクスに右上に反応してるから、本当は反対の東大はじめ、経済学者が怖くて反対できない実態があります。
アベノミクスに「本当にこれはいいよ」と言ってるのは、いくらもいない。それはもう竹中さんと高橋洋一と浜田幸一ぐらいなんですよ、はっきり言って。

竹中:今の浜田先生の名前も挙げられて、田原さんのご指摘は実は冷静に考えると非常に正しいんです。なぜならば、インフレ・ターゲティングの議論は10年前からやっています。10年前から私たちはずっと主張してきたけれども、多くの反対で実現しなかった。
もう一つはいわゆる上げ潮戦略というか 成長戦略。これはもうずっと10年前から言ってるんですけども、これはメインストリームの人たちは確かに反対している。

田原:自民党でも上げ潮戦略っていうのは中川昭一さんくらいで全然孤立した。

竹中:ただ逆に言うとやっぱり”総理の力”ってすごいと思うんです。
一点突破した安倍さんの力。私はすごいと思うし、同時に一度安倍総理として総理を退かれてから今までの間に安倍さんご自身がどんな風にしてここまで強く、この信念を成長と、脱デフレ、インフレ・ターゲティングに、どこまで強く信念をお持ちになったのかっていうのは、これ一度ゆっくり安倍総理ご自身に聞いてみたいところなんです。
でも田原さんはだいぶインサイドストーリーをご存知かと思うんですが……。

田原:いやぁ、そうでもないですが、やっぱり安倍さんが1年で辞めちゃった。僕はあのときに参議院選挙で負けてただちに辞めるべきだと思ったし、安倍さんに言ったんです。あのとき続けろって言ったのは麻生太郎なんです。で、一ヶ月で体調悪くして、倒れちゃった。そのときは正直言って「だらしないな」と思った。
ところが、野党になった。で、安倍さんが野党でね、やっぱり正直言って、自民党で誰かって言えば安倍さんしかいないと思った。ただ、吉田茂以外に二度総理大臣になったのは誰もいない! こういう中で安倍さんしかいないけど、相当時間がかかるだろうと思った。こんなに簡単に総理になるとは思わなかった。竹中さんどうですか。

竹中:ご指摘の通りで、私も参議院選挙で敗れて、あのまま退いておられたら、次のチャンスはあると思ってたんですが、まぁああいう形で、はっきり言ってヨレヨレになってですね、もう辞めざるをえない。これでまぁ「安倍さんの将来は難しくなったなぁ」と。可能性があるとすれば、かなり年数が経ってから「どこかの内閣で外務大臣かなんかで復活することあるのかなぁ」と。ただし総理大臣になるのは大変難しいだろうなぁと、正直言って思いました。

田原:正直言って、60後半だと思ってた。(安倍さんが)総理になるのは。

竹中:そこがしかし、安倍さんがですね、わぁっと一気に、こう復活してこられるわけですよね。

田原:そこで竹中さんに聞きたい。正直言って安倍さんがそんなに経済に詳しいとは思えない。今まで、自民党も、それから民主党もケチケチ経済です。財政赤字、1千兆。だから「いかに財政を絞るか、絞るか、絞るか」こればっかりですね。
野田さんになって消費税増税までやった。絞る絞る絞るだった。この時に安倍さんが成長戦略「三本の矢」誰がこういう知恵つけたんですか。安倍さんに。

竹中:そこを安倍さんにゆっくり聞いてみたいと思うんですが、多くの方が「安倍さんが総理として復活するのは難しい」と思っておられてそういう中で、ある種安倍さんはものすごく精神的自由になって「いろんな人といろんな議論をされたんだろうな」と思うんです。
私の認識では、「実は安倍さんは、経済に対してかなり強い」私はそういう認識持っているんです。これは安倍さんのすごいわかりやすいエピソードがあるんですけれど規制改革で特に”タクシーの待ち”が増えただとか、

田原:タクシーがどんどん増えた。

竹中:増えた、と、増えすぎだとかいう批判があったときに、安倍さん面白い話をされたんですよ。「自分はそう思わないんだ」と。実はこれ官房長官のときですけどね、たまたま

田原:小泉内閣。

竹中:小泉内閣の官房長官のときですけど、安倍さんたまたま運転手が、車がどうしても間に合わなくて、やむを得ずにタクシー乗ったんですって。
そうすると運転手さんが、「おう安倍ちゃんかい」って言って。こういう言い方がすごく安倍さんらしいんですよ。「安倍ちゃんかい」って言って。
「タクシー(の運転手)これね、俺たち(タクシーの運転手)給料安いんだよなぁ。でもね俺、前からタクシー運転手やってるんだけれども、今度リストラされた息子もね、車増えたんで運転手になったんだよ。そうすると前から自分の給料三割下がったかもしんないけどね、それで0.7になってもね、息子も0.7だからね、足すと1.4で前より増えてるんだよ」

田原:そういえばそう。

竹中:そういう話を安倍ちゃんはピーンと捉えるんですよ。

田原:そういえば、つまりバブルが弾けて、リストラが起きて、リストラされた人がね、多くタクシーの運転手やってる。

竹中:だから結局その一見確かに給料は下がった。で、競争で厳しくなったかもしれないけど、全体としてのパイは大きくなっているという。これ実は経済の本質なんですよ。そういうところ安倍さん、パンと見てる。

田原:なんでわかるんだろう。

竹中:いや、やっぱり安倍さんだから。

田原:大して経済勉強してると思わない。

竹中:いやいやいや、安倍総理とこの間話されたでしょう?安倍総理すごく速いテンポでかぁーっといろんなこと話されるじゃないですか。ものすごくフランクに。あれはやっぱりね、私は頭の回転の速さだと思うんですよ。

田原:自信もあるけど、僕びっくりしたのが、オバマ大統領と会いました。あのとき約20分、全く台本なしで喋ってるんです。こんなことありえない!今までの日本の首相で。なに、あれは!?

竹中:いや、やっぱりなんかすごく魅力的な方ですよ、その意味では。さっきの「安倍ちゃんかい」みたいな話でですね。
結構話をさせていただいても、先日『』産業競争力会議のメンバー全員で安倍総理と食事をさせていただいたんですけども、そのときもほとんど総理が話しておられた。ほとんど総理が話しておられてですね、

田原:ちょっとね。せっかく皆さん来てるんだから、一つ全く知られてないことを申し上げたい。
実は安倍さんがアメリカ行ったときに、9月22日に、安倍さん主催の晩餐会が行われた。ここが親日派のマイケル・グリーンとかいろんな人が招かれた。このなかに一人不思議な人が招かれた。これが、アラスカ出身の上院議員のマコウスキーという女性なんです。で、実はほとんど新聞も知りません。マコウスキーの父親はレーガン時代の有名な反日政治家なんです。反日政治家の娘を安倍さんが招いた。知ってますか?

竹中:それは知りません。

田原:なぜなんだと。実は今、この報道の、報道って言うよりは、プロたちの間でこれが非常に評判になった。なんだ?と。女性ですよ。マコウスキーを。で、僕はクロスファイアがあるから徹底的に調べた。経済産業省のプロたちに。徹底的に調べた。
わかったんですよ。実は今アメリカで新しいガスが出てきた。シェールガス。ところがシェールガス、”シェール革命”っていうけど、実はシェールガスが日本に入ってくるのは数年かかると言われてるんです。それで実は、なぜマコウスキーを呼んだのか。アラスカにいっぱいガスがある。シェールガスが入ってくるまで、アラスカのガスを日本で買おうと。これが安倍さんの戦略だと。なんで安倍さんそんなこと知ってるんだろう。

竹中:いや、安倍さんはああいう感じですごくフランクにいろんな方と話されますから一般に想像されている以上に、非常に広い情報源を持っておられると思うんです。それと精神的に非常にポジティブな方だと思うんです。で、実はこれも知られてないんですけれども、こないだ『ダボス会議』がありました。安倍総理は残念ながら出席できませんでした。そして名代として甘利大臣と茂木大臣が出られた。ちょうどこれくらいの部屋でマスコミも入れないクローズドなセッションをやったんです。ちょうどこれよりちょっと大きな画面に、安倍総理が渋谷のNHKのスタジオからテレビで出られたんです。これは

田原:『ダボス会議』のスクリーンにそれが映るわけだ。

竹中:映るわけです。それでほんの限られたメンバー、ここに甘利さんと茂木さんが座って、限られた特に有力者を呼んだんです。これはすごいメンバーだったんです。前のイギリスの首相のゴードン・ブラウン、元のメキシコの大統領のセディージョ、現職のOECD事務総長のグリア、ノーベル賞とったユヌス、フィナンシャル・タイムズのマーティン・ウルフ、これ一番うるさい人なんですけど。あとはロゴス。ケン・ロゴスとか、有名な人がずらーっと並んで、それで安倍さんは日本のスタジオから『アベノミクス』の考え方を何にも見ないで話したんです。

田原:『アベノミクス』について喋ったんですか。

竹中:喋ったんです。これが凄くいい話だった。凄く魅力的で、本当に“腑”に落ちてる話をするんです。なんか普通やっぱり政治家って官僚が書いたものを読み上げがちなんですけども、やっぱり腹に落ちたものを話すって、腑に落ちたこと話してるから、すっごい魅力的なんです。それを聞いた、

田原:竹中さん、よいから。せっかく竹中さんだから具体的に腑に落ちたってどういうこと言ったんですか。

竹中:なぜ自分は日銀に対してこう強いことを言ってるけど、なぜ自分はそういう風に思ったのかと。

田原:選挙の最中に日銀と喧嘩したんだ。

竹中:当然、日銀に対してね、あの政治家介入してはいけないってことは自分は当然わかっているんです。だから私はその中身について、金融政策の中身については何も言ってません。そうではなくて今、日本が、デフレっていうのがいかに日本を蝕んできたかっていうことを、その思いを話したんです。
これは思うに、2006年3月に日銀は例の量的緩和をやめて、あのときデフレを克服するチャンスだったんですよ。にも関わらず、さっこれでデフレを克服できるぞっと思った瞬間に日銀は量的緩和やめちゃって。それでまぁ今日みたいになっちゃったんですけど。あのとき私はもう総務大臣になってて、経済財政担当じゃなくて悔しい思いをしたんですが、実はそのときの内閣官房長官は安倍さんなんです。

田原:変な人が経済財政資本会議になったんだ。名前言いませんけど。

竹中:そうなんです。

田原:どうしようもなかったんだ、あの人は。

竹中:それでね、そういう自分の思いを伝えたんですよ。これはみんなすごいですよ。安倍さんはやっぱり魅力的なんです。それでそうだ、そうだとみんな賛成したんです。

田原:これ、僕はそこは安倍さん偉いと思う。やっぱりデフレから脱却だということをまず言った。日本でも実はこれは円安にするためにやっているんだということを言う人もいたし、新聞もそう書いた。それ言わなかった。わかってんだから。

竹中:そうなんです。それでね、結局ね、円安のためにやってるっていう批判はその場では全くないんです。

田原:あ、ない?

竹中:ないんです。とにかくアベノミクスの三本の矢は正しい。それをぜひしっかりとやってくれと。別のところで実は円安を批判する声はもちろんあったんです。それはドイツのメリケル首相がその話をしたんです。

田原:メリケルさんが批判したの?

竹中:したんです。でもそのとき皆なんて言ったかっていうと、「ドイツが言うなよ」って言ったわけですよね。

田原:だってユーロ安で儲けてるじゃない! ドイツは。

竹中:そうなんです。ドイツはギリシャとスペインのせいでユーロが下がりましたと。そうすると漁夫の利を得たような形で輸出力が強いドイツがわーっと、

田原:一人で儲けてる。

竹中:一人勝ちになっちゃったわけでしょ。だからそんなこと言うのはおかしい。だからその円安に対する批判っていうのは日本の新聞には結構大きく出ました。でもこれは全くバイアスがかかってます。

田原:あのダボス会議で円安の批判はなかったの?

竹中:だから各国が懸念って書いてたでしょ。それは違います。事実と違う。そういう意見もないわけじゃないけども、極めてそれはマイナーなものです。それはもう圧倒的にアベノミクスの三本の矢は正しいからそれをちゃんとやってくれっていう話です。

田原:更に聞きたい。こないだのG20のとき。実はG20で、先進国の、G20のとき。日本の新聞などは、つまり日本の円安政策を名指しで批判されるんじゃないかと。名指しで批判されるんじゃないかと、恐れに恐れてた。ところが当日になったら、どこも名指しの批判がなかった。あれはどういうことなの?
つまり日本が円安政策をやってる。円安政策で、実は途上国見捨てるところもある。ブラジルからね批判もあった。ところがだから、本当はG20のときに、アメリカをはじめ各国が日本を名指して批判するんじゃないかと。前日まで新聞が全部書いてた。なかった。なんでですか?

竹中:これはもう極めて単純明快です。だってアメリカの方が日本よりもっと金融緩和やってるんですから。

田原:つまりリーマン・ブラザーズの倒産のときに、まずアメリカが金融緩和して、言ってみればドル安政策打った。

竹中:だって一年間の間、要するにあの金融政策ってそんなに難しくなくてお金をたくさん出すのを金融緩和って言うわけです。お金をたくさん出すためには中央銀行はどうするかって言うと、何かを買うんです。普通国債を買うわけですね。国債を買ってお金を出すと。そうするとバランスシート大きくなるんです。

田原:お金を出すってことはドルをどんどん刷るってことだ。

竹中:バランスシート大きくなるから、バランスシートがどれだけ大きくなったかを見れば、どの程度金融緩和をしたかがわかるんです。実は一年の間に、リーマンショックの一年の間に、アメリカの中央銀行のバランスシートは2倍以上になっている。2倍ですよ。日本は10%くらいしか増えてないんです。

田原:そのときにイギリスもやった。

竹中:そうです。

田原:実は、金融緩和。

竹中:ヨーロッパ全体もやりました。日本は一番遅れてやったわけで、その一番遅れて、しかもその程度はまだアメリカよりも充分じゃないわけで、日本だけが批判されるという風に考える方がおかしい。

田原:ちょっと待って。そのときにアメリカもイギリスもヨーロッパも言ってみれば、自国のドル安、ポンド安やったとき、なんで日本はやんなかったの。本当ならむしろやるべきだ。

竹中:それは白川さんだからやんなかったんじゃないですか。

田原:政府にもそういう考えがなかったんじゃない?

竹中:当時の政府というのは、基本的にはやっぱり民主党ですから。民主党の経済政策って面白いんですよ。個々に見るとそれなりにいいこともやってるんだけれども、全体のマクロ政策という概念がごっそり抜け落ちているんです。
だから私はよく言うんですけども、たとえば船の廊下を一生懸命磨いてる。船の廊下ピカピカにだんだんなった。でもその船は全体としてどんどんどんどん沈んでいってる。船が沈んでいってるのに、一生懸命廊下を磨いてた。これは要するにマクロ政策がなくて、個別にはまぁちょっといいことやってる。

田原:ちょっと具体的に聞きたい。民主党政権になって、円はどんどん高くなった。株はどんどん安くなった。どこが間違ってたの? 行間の話でもうちょっと具体的に聞きたいんだけど。そのマクロ政策がなかったって、何がなかった?

竹中:基本的には、経済成長に対して関心を払わなかったっていうのが一番大きいです。経済成長に関心を払わないで「今あるパイを、どうぶんどって分けるか」分配のことばっかりやった。しかしそのパイがどんどんどんどん小さくなっていくんだから、要するになぜ円が高くなるかって言うと、円という通貨が希少だからです。円という通貨が少ないからです。対外的に。だから円が高くなるんです。国内的には何が多いかと言うと円という通貨が少ないから、お金の価値が上がって、ものの価値が下がるデフレになるんです。
だからデフレも国内のデフレも対外的な円高も、全部やっぱりマネーの量が少ないということで、極めて単純明快に説明できるんです。

田原:僕はそこで馬鹿なことを聞いたんですよ。今のルース大使、日本大使館行って。円高でしょ。日本は円高で困ってる。かつてドル高でアメリカが困ったときに、竹下さんですね、プラザ合意で日本は円高政策をとった。だからドル安になった。今、日本は円高で困ってる。「アメリカよ!なんとかね、円安政策になるようにやってくれ!」って言ったの。
そんなことは日本は自国でやればいいんだ。ルースさん。正しいわけね。

竹中:ええ、そうです。

田原:つまり本当ならば、円を刷ればいい。なんでやんなかったんだろう?

竹中:いや基本的にはですね、これはまぁ推測です。これは実はよく、今でもこういう議論するわけです。さっき言った「マネーの量が多いか少ないかだ」って言いました。GDPに対するマネーの量を見ると、実はアメリカより日本の方が多いんです。
だからよく知らない人は日本の方が金融緩和やってるって言うんです。でもこれ根本的に間違ってるわけです? なぜかって言うとアメリカってだってキャッシュ使わないじゃないですか。

田原:小切手だ。

竹中:そう。日本はキャッシュを使うんだから、GDPに対するマネーの量が多くて当たり前なんです。だからこんな量を比べても仕方ないわけで、その伸び率が高いか低いかを比べなきゃいけない。そこをやっぱりね、日銀は誤魔化していたんです。伸び率が低い、水準は高い。当たり前です、キャッシュ使う国なんだから。それを伸び率が低いのに「充分緩和してる、緩和してる」って言ってきて、よくわからない政治だとジャーナリストが誤魔化されてきたんです。

田原:日銀が言ってる金融緩和はゼロ金利だと。ゼロ金利だから、金融は緩和してるって言ってたのね。

竹中:そうですね、それも言ってました。

田原:量的緩和は全く増えない?

竹中:ええ。でもまず、量が。マネーの量って増えていかなきゃいけない。これはね、すごい単純な算数だと私は思うんです。
例えば経済、GDPがもしも実質で1.5%成長するとしましょうか。それで物価上昇率が2%するとしましょうか。そうすると名目GDPは3.5%成長しますよね? GDP、だから物価2%ぐらい上昇するような普通の経済にしようと思ったら、名目GDPって3.5%成長になるんですよ。そうしたら必ず、マネーの量は3.5%以上増えてないといけないんです。つまりGDPの伸びよりもマネーの伸びの方が普通高いんです。これが世界の普通の傾向だから、だから4%くらいマネーが増えてないと、今言ったような正常な経済にならない。ところが、日本のマネーの増え方っていうのは、ここのところ1%代です。2%増えてない。デフレになるの当たり前なんです。それをしかし日銀はちゃんと管理してこなかった。

田原:更に危険なこと聞きたい。デフレですよね? もっと言えば、宮澤さん以降ずっとデフレなんですよね。小泉内閣を除いては。そのデフレからの脱却とい発想がどうして日本の歴代総理になかったんですか?

竹中:基本的には小泉内閣のときはもう一歩でデフレが脱却できるところまでいったんです。おそらくそこはマクロ経済に対するチェックの仕方が弱かったんだと思います。

田原:どうしてですか?

竹中:いや、そうやってマクロ経済チェックするのは経済財政資本会議です。我々のときは、私たちが経済財政資本会議やってるときはこれはダメだと、このままじゃダメだ、日銀もっとしっかりしろっていうことをずっと言ってきたわけです。ところがそのマクロをチェックする経済財政資本会議が小泉さんが去られたあと、それが上手く機能しなくなって、民主党政権に至ってはそれをなくしてしまったわけですから。
だからさっき言ったように、マクロ経済運営という概念がもうなくなっちゃったという言い方を私はしたんです。

田原:なるほど。ところでもう一つ聞きたい。今株価がどんどん上がってきた。円がどんどん下がってきた。だけど実はアベノミクスは、まだ何もやってない。まぁプロローグなんですね。プロローグで、このマーケットが反応してるんだけど、これから本当に実態伴いますか?

竹中:あの私は正確に言うと、三本の矢のうちの一本半は飛んだと思います。

田原:一本は、まず安倍さんは需要を増やす、と。需要。

竹中:一本は金融政策ですね。

田原:間違いなく金融政策。

竹中;一本目には金融政策で、

田原:金融緩和。

竹中:これは黒田さんという方を日銀総裁にして、私はいい人事だと思います。それで一本目は飛んだと思います。

田原:物価成長を2%にすると。黒田さんも言ってる。

竹中:曲りなりにも飛び始めた。二本目の矢は財政政策で、これはまず短期的には需要をつけるために、財政を、お金をまぁ使いますと。

田原:具体的には公共事業で。

竹中:公共事業も、やります。でも後半は2020年までに財政を再建します。これが二本目の矢なんですよね。

田原:どういうことですか。

竹中:これだから、今、こないだ10兆円規模の補正予算をやりました。だからこれ半分やって、しかし2020年までに規則的財政収支を黒字化するという、つまり財政再建はやりますと言ってるわけです。

田原:そこね、そこで安倍さんは言ってるんですよ。新聞やなんかの批判は、今でさえ一兆円以上借金があると。更に公共事業をやる。これは、自民党が決めたわけじゃないけど、10年間で200兆と、国土強靭計画だと。こんなことしたらね、借金どんどん多くなって、財政破綻を招くんじゃないかと。こういうこと。

竹中:ですからそうならないように、財政再建のプランを発表しなきゃいけないんです。ところが、それを発表してこうしていくというのが二本目の矢の後半部分です。これがまだ何も飛んでないんです。全く示されてないし、あえて言えば、このプランをいつ公表するかということが、明らかになってないんです。

田原:プランはあるんですか?

竹中:プランは今のところないです。

田原:だからそこで僕は一番竹中さんにズバっと聞きたい。産業経済力会議、ですよね。これが、二本目の矢が本当に需要を生み出すためには、思い切った構造改革が必要だ、と。ところが産業経済力会議は竹中さんや、新浪さんや、三木谷さんと、もう一派古い経済界の連中と対立してるじゃない。大丈夫?

竹中:コメントがだんだん難しくなってきたんですけども、正確に言いますと、二本目の矢の財政再建は実は経済財政諮問会議でやらなきゃいけない話で、二本目の矢の後半半分はまだ飛んでません。これは経済財政諮問会議でしっかりやってくださいね。こないだですね、この基礎的財政赤字のGDPに対する比率が約7%だってことが発表されたんですよ。これほとんど新聞も何も反応してませんけど、これすごい数字なんです。

田原:どういうことです? 7%って。

竹中:7%をですね、2020年までにこれを0にするということは、あと7年でこの7%を0にするということは、毎年毎年1%ずつ赤字を減らしていかなきゃいけないでしょ。

田原:1%って額で言うとどれくらいなの?

竹中:GDP比1%、5兆円。

田原:5兆円。

竹中:5兆円。だから毎年毎年、

田原:1%が5兆円ね。

竹中:だから毎年毎年GDPの成長率1%下げるようなプレッシャーが働きますよっていうことを意味してるんです。

田原:そしたら経済成長できないじゃない。

竹中:そうそう。だから、大変なことで、まぁこれ私勝手に言いますけど、私はマクロの専門家として勝手に言いますけども2020年でこれやるの難しいと思いますよ。相当難しいと思う。だからそこの判断も含めて、きちっとやらなきゃいけない。これが二本目の矢の後半です。今、田原さんがおっしゃった産業競争力会議が担うのは、まさに三本目の矢の経済成長なんです。

田原:経済成長。

竹中:成長戦略なんです。

田原:本当に成長できるのかどうか。

竹中:できる。

田原:もっと言えば、公共事業で需要を増やしても民需が伸びていくのか。

竹中:そうです。公共事業で一時的に需要を増やすことはできるんです。これは簡単にできるんです。これは。しかし重要なのは、公共事業っていうのは一種のビタミン剤ですから、ビタミン剤を飲まなくても自分の体力で筋力をつけて、だんだんだんだん強くなってく。これが経済成長なんですよ。で、これを担うのが産業競争力会議。ただ、これ私よく言うんですけれども、過去7年の間にこの成長戦略っていうのは、7回作られてるんです。過去7年で成長戦略7回作られてるんです。

田原:7回?

竹中:7回。

田原:ああ、毎年作ってるの?

竹中:毎年作ってるんです。ほぼ。これもちろん、成長戦略とか、その実現のためとか、フォローアップとか、そういうもの含めてです。で、私よく言うんですけど、これ本当なんです。 私は4年半、経済財政担当大臣やりましたけども、私は

田原:小泉内閣ね。

竹中:私は成長戦略一回も作ってません。

田原:え? 小泉内閣で?

竹中:私作ってませんよ。うん。私作ってないですよ。

田原:だけど成長したではないですか。

竹中:いやぁ、そうなんです。で、私が辞めてから毎年成長戦略作るようになって、成長戦略作るようになってから、成長下がったんです。

田原:ちょっとそこ聞きたい。なんでそうなっちゃったの。

竹中:これはやっぱり、重要なことをたぶん意味していて、そんな成長戦略ってそんな打ち出の小槌ないってことですよ。

田原:本当は。

竹中:本当はないですよ。これは私よく学生に言うんですけどねぇ、学生よくどんなしたら勉強できるようになりますかって聞かれるんですけど。勉強しろと。そんな打ち出の小槌なんかないと。結局経済も結局一生懸命がんばって競争して、自分たちの力を強くして、競争して競争力をつけて、強くなっていくしかないんですよ。

田原:なるほど。

竹中:結局しかしそれをやらなきゃいけない。私はよく言うのは、7年で7回成長戦略を作ってダメだったんだから、今度作る成長戦略は今までとは全く次元の違うものを作らないと意味がない。

田原:そこで聞きたい。つまり、どうも日本は中小企業を守ろう、倒産は良くないという発想がある。典型的なのはJALですよね。

竹中:中小企業じゃないのに、ないのに残った。

田原:つまりJALは倒産しなかった。それを救った。誰も反対しないと。これどう思う?

竹中:これはもう戦後最悪の政策だと思います。だってこれ皆さん考えてください。皆さんの会社のライバルが杜撰な経営をして、無茶苦茶になっちゃった。そしたら政府が乗り込んできて、全部債務免除して、お金もつけてくれて、ピカピカの会社になって、今度は新しい競争相手になった。怒りませんか? 皆さん。でも本当これやっちゃったんですよ。この国で。もう無茶苦茶なことやったと私思います。

田原:今だけども、新聞やなんか大騒ぎになってるのは、中小企業の金融対策。これまで要するに期限付きで中小企業に対して返さなくなっても、銀行がまぁ一時的に返さなくてもいいよと。あるいは金利を上げないとか、やってきた。これはなんだと言われるんですか。

竹中:えっとこれはいわゆるモラトリアム法っていうやつで、3月に終わるんです。

田原:で、そこで新聞がいろんなのが、これなくなったら中小企業大変だと。どうするんだ。モラトリアム法をもっと伸ばせと。どう思う?

竹中:これは何を意味しているかというと、一回変なことやるとそれを正常化するのはいかに大変かということなんです。これやっぱりつっかえ棒です。つっかえ棒だから、つっかえ棒はこれ外さなきゃいけないんだけれども、外す瞬間大変だっていうことは、紛れもない事実なんです。

田原:だけど最近、政府が”つっかえ棒”を形の上では外すんだけど、自主的には外さないんだよ。特に政府。

竹中:だから、これは少しずつ外す。時間の経過をとって少しずつ外す。外し方を上手くやらなきゃいけないということは間違いないんです。ところが田原さん言われたように、外す代わりに、気がついてみると官民ファンドみたいなの作って。それでなんか今まで銀行が融資してたものを、今度国が融資してますとか。要するにこんなのリスクの付け替えです。銀行のリスクを国民に付け替えてるだけですから。こんな安易なことやっちゃダメなんです。

田原:そこなんですよ。さっきの産業競争力会議で竹中さんたちは構造改革が大事だと、意識を変えよう!と、要するに雇用が大事だ。セーフティネットは大事だけど、企業は倒産してもいいんだ。ここでね。どうも今企業倒産させない。例えば、さっきの産業競争力会議でも、竹中さんたちは、構造改革と言っている。構造を変えて、意識を変えて。ところが、旧財界の人たちは政府もっと金出せと。例えば科学の技術。科学技術の振興のために政府もっと金出せよと。真っ二つに割れてる。

竹中:基本的にはもうおっしゃるとおりです、これはもうどの時代もそうだったんですけど経済成長させようと思うと必ず二通りの考え方が出てくるんです。
第一の考えは、政府は企業にできるだけ多くの自由度を与える。そして伸び伸びとやらせる。これが第一の考え方。
第二の考え方は、政府は企業に金をつけてやれと。この考え方。
現実の政策はやっぱりリアリズムが必要なので。ある程度両方は必要なんですけれども、圧倒的に前者に重点がなければ意味がないんです。ところが役人は自由を与えるんではなくて、金をつけたいわけです。

田原:だって自由を与えたら、役人の意味がない。存在理由なくなっちゃう。

竹中:役人の影響力を行使するためには、やっぱり金を与えたい。これでね、民間も、一部の民間企業はやっぱり志が低くて、もらえる金はいただきますよっていう風にみんな言うわけです。
結局それでなんやかやと政府だけが肥大化して、霞ヶ関が気がつくと、霞ヶ関は成長産業だと言う人もいるわけで、そういう風になっちゃって、今回もやっぱりそういうね、傾向がかなり露骨に見えます。

田原:露骨に見えて。でもさっきの産業競争力会議、大丈夫? 竹中さんのペースでいきますか?

竹中:いやいや私なんかマイノリティですから。あっちで叩かれ、こっちで叩かれですけれども、でもまぁこれは、私はもう総理にも申し上げたし今まで7年で7本の成長戦略を使って、今度は景色の違う成長戦略を作る。これをやれば日本の景色は変わるというものをやらないと、意味がない。

田原:そこ聞きたい。景色が違う。変わるって、今までとどこがどう違うの?

竹中:例えば、東京っていうのはすごく重要なんです。東京の景色を変える。皆さんちょっと考えてください。これができたらドラえもんみたいなもんでこれがあればいいなと思うものをあげればいいですよ。これが、景色を変えるんです。
私は例えば羽田。羽田の国際化。これができて本当に便利になった。羽田の国際化だって、10年前に、小泉内閣のときにやり始めたから今日になってるんです。これで羽田にもう一本滑走路作ってそれで国際空港の機能を三倍にしよう。そして羽田から東京駅に新幹線を繋ごう。そしたら景色変わらないかと。例えば。

田原:だからそこが問題で、本当ならば羽田が24時間運営できる空港にならなきゃいけない。ところが実際は、24時間営業の空港は仁川にとられてる。みんな羽田やなんかから一回仁川行って、韓国へ。ここから国際線乗る。

竹中:これはもう十何年前からずっとそうなってるんです。だからこれしかしそういう風に本気で景色を変えないと。例えば本気で景色を変えるやり方ってあるわけです。
だって日本の鳥取の田村耕太郎さんっていう参議院議員が梨をドバイに持って行ったら、3500円で売れた。一個ですよ? 一個3500円。そりゃ砂漠の国の人から見れば、こんなみずみずしい甘い果物が世の中にあったのかと思う。
で、今度田村さんは調子に乗って次スイカを持って行ったら、今度3万円で売れるわけです。オランダという国はあの小さな国で、実は農産物の輸出世界で第二位なんです。だから日本だってその気になれば、オランダみたいになれるんです。
それはなぜかって言うと例えば、企業が商社でもなんでも、農業にちゃんと参入して、そういう新しいタイプの農業作ればできます。そういう風なことをやって景色を変えていけば、日本は間違いなく強くなれるんです。

田原:そこで一つ心配がある。TPPの問題で、つまり、聖域なき、要するにTPPには参加しないでいた。聖域を作る、たぶん米みたいなものは、例外にするんだと。結局農業は攻めの農業にならなきゃいけないのに、下手をすると守りの農業のままで、不完全なんじゃないかと。これはどうですか。

竹中:私はもう前から言ってるんですけども、農業農業ってひとくくりにするのがやっぱりおかしいわけです。農業っていうのは、大きく、少なくとも3つに分ければいいです。だって工業、工業って言わないじゃないですか。自動車産業、電気機械産業ってみんな言うんだから、

田原:農業だけ、農業って言う。

竹中:農業だけ、農業っていうのはおかしいでしょ。まず第一は、果物とか露地野菜、皆さん露地野菜って要するに普通の野菜です。あれ日本の関税率って何%だか知っていますか? あれ3%なんですよ? 3%としかかかってない人もやってるんだから、競争力ある。つまり第一のポイントは、すでに競争力があって、輸出もできるような農業。二番目は規模は小さいけれど、規模を大きくすれば、生産性が向上して世界的に競争できる農業。私は米はそうなれると思います。

田原:なるほど、米なれると。例えば余計なことだけどさっきの中川昭一って人が。亡くなった。彼は帯広なんですね。田原さん、残念ながら帯広は寒いから米はできない。だからしょうがないから皆、長芋を作ってる。長芋は今、台湾韓国中国の臨海、もう大産業です! ねぇ、輸出できるんですよ。

竹中:輸出できるんです。三番目の部類はいわゆる中山間地で。中山間地。山の中の非常に小さな農地で、これは社会政策という観点とか、環境保全という観点から、別の形でこれやっぱり政府がある程度お金を出してやっていきましょうと。

田原:環境保全ね。

竹中:だからそういう風に3つに少なくとも分けてやっていければいいわけで、それはやっぱり日本はオランダ以上の農業輸出国になれると思います。

田原:実はオランダからして、種苗ってあるでしょう、種屋さん。種苗は世界で一位二位が日本、オランダなんです。種苗は、農業はダメって言うけど、種苗は世界一なんです。で、実はオランダが二位で。実は今、日本の種苗をアメリカや中国がなんとかM&Aで買収しようとしている。

竹中:おっしゃるとおりで、実はこれもう典型です。米と種、種の最大の違いは皆さんなんだと思いますか? それは米は保護されてきて、競争してなかったから。種はなんにも保護されてなかったから、世界中で競争したからです。競争したから競争力ついたんですよ。

田原:さらに言うと、種、種苗は今や完全にグローバル産業で、例えばキャベツにしても、白菜にしても、この種苗は日本で作ってない。その種苗をどこで作ると一番いいか。イタリーで作ったり、南米で作ったりしている。実は。もうグローバル。

竹中:これ種のサカタとかタキイ種苗とか、もう世界的な輸出企業が日本の農業にはあるわけで、これはご指摘の通り、実は戦前から輸出企業なんです。戦前から。例えばアメリカ。これはちょっと古い数字ですけどね、アメリカのトマトの何十%からその日本の種なんです。それだけの世界的なシェアを持っている農業が日本にはもうあるわけです。だからさっき言ったように、強いところにはもっと強くなってもらって、それで規模を集約化して生産性上げて強くなるところも出てきて、それで守るべきところは守る。

田原:なんでこれに農協が反対するのはいいけど、どうして農水省が反対しているの?

竹中:一度聞いてみたいですね。基本的には改革に反対するのは常にそうですが、既得権益を持っている人がいるんです。その既得権益をもっている人の代弁者に一部の官僚がなるんです。財界と官僚と背後の政治家の鉄の三角形っていうんですけれども脈々と生きているんです。

田原:さっきの産業競争力会議で事務局を完全に官僚が独占している。数十人いるんですね。そこで竹中さんたちは事務局に「民間人をいれろ」と。やっと四、五人はいる。だけど数十人の中で四、五人じゃ力発揮できるのかな?

竹中:本当に、非常に苦しい戦いです。実は小渕内閣の時に経済戦略会議というのが作られて、なくなったアサヒビールの樋口博太郎さんが座長になって、中谷巌さんや私がメンバーに入りました。あの時は事務局長も民間人、事務局の半分は民間人。
ところが今回はなにを言ったかというと、民主党政権の時に「民間人を事務局に入れて大混乱して、うまく行かなかった」と。だから民間人は入れないと最初に言われました。私は「ちがうだろう、民主党政権の時にうまく行かなかったのはそれが民主党だからだ、べつに事務局の人と関係ないでしょう」と言ったわけですけども。とくに一部の省庁の人達が自分たちの省庁のやりたいことだけをやろうとしているのではないかと疑われるわけです。それに対してそれでは困ると我々も言って少しずつ改善はされているんですがこれで景色が全然違う成長戦略が出来るぞというところまでは残念ながらまだまだ残念ながらいってません。我々も努力しなくてはいけません。

田原:もう一つ。これは一つの懸念だけど、竹中さんたちは構造改革という言葉を盛んにおっしゃってる。安倍さんは構造改革って言葉を使わない、なんで?

竹中:おそらく日本の政治の、永田町全体として構造改革っていう言葉が嫌いなんです。理由は簡単で構造改革というのは既得権益を取り上げるぞという意味ですから既得権益を持っている人はこの言葉は大嫌いです。

田原:官僚もそうだけど経済界でも既得権益を持っている人は嫌なんだ?

竹中:既得権益にしがみつきたい人はみんな嫌!

田原:既得権益の代表が国会議員ですよ。国会議員がたとえば今の選挙制度を変えるっていうのに反対、なぜなら今の条件で国会議員になってます。もし選挙制度を変えたら落ちるかもしれない。

竹中:みなさん、考えてみてください、既得権益ってもってたらいいよね。なんにもしなくても楽できるから凄くいいじゃないですか。それはみんな手放したくないわけでそれは結局構造改革にならない。日本では構造改革っていうのを皆すごく避けるんですが今G8でもG7でもG20でもキーワードはストラクチャルリフォーム、構造改革ですよ。世界がそれを活用してマーケットの構造を変えてゆかなくてはならないときに。

田原:実はいま株価がどんどんあがってるのが落ちるんじゃないかと。こういう危惧があるんですがどうですか?

竹中:最近はこういう言い方をするんですが安倍内閣はどっちにでも行く可能性があるんだと思います。一つは小渕内閣型になるパターン、もう一つは小泉内閣型になるパターン。小渕内閣の時にみなさん覚えておられますか? 小渕内閣の最初の時にいまでは普通になった信用保証協会の保証をつけて財政財政が拡大して経済もいっきにグヮーンと行くんです。あのとき小渕さんが大根のカブをもって株上がれ、株上がれとパフォーマンスをやられていたのを覚えていると思います。2ヶ月で17%上がってるんです。
安倍内閣の最初で13%くらいですから安倍内閣の最初より小渕内閣の最初の方が上がっているんです。それをうけて小渕さんも構造改革に入ってゆく予定だったんです。そのための経済戦略会議の提言も出ていました。それがなかなか進まずに株価もじり貧になってくる、そうこうしているうちに小渕さんが倒れてしまう。
小泉内閣の場合は最初から構造改革を前面に出して敵と戦いながらやってゆく。安倍内閣は今後の成長戦略でどれだけきちっとしたものを作れるかによって両方の可能性があるんです。
当然のことながら安倍さんは腰折れしないでやってゆきたいと思っている。その為に安倍さんは強いリーダーシップを示してくれると思いますが、過去の例も踏まえてここで絶対腰折れさせてはならない。抵抗勢力と戦って今までと本当に景色の違う大胆な成長戦略を作らなくてはならない。わたしたちはそのつもりで頑張っています。

田原:なるほど、僕は、私のBSの番組に安倍さんに出てもらった。ここで一つ、つまり世の中が考えてる安倍さんと違うなと思ったの。どこが違うか。今新聞もテレビも、安倍さんは7月の参議院選挙までは無難におとなしくしている。参議院選挙に勝ったら、右翼になってやりたい放題やる。こう思ってる。ところが、僕が安倍さんに「あなたは参議院選挙までおとなしくやって、それを過ぎたらやりたい放題やるんじゃないか」って言ったら、違うって。現に、例えば普天間の問題。一般的には、普天間を今、辺野古に移そうとしている。辺野古の埋め立て用地場計画を、実は一般的には参議院選挙後にやるんじゃないかと言われてた。ところがもうやる。つまり、例えば私があえてあの番組で、憲法96条を変えるというのは大騒ぎになっている。
96条を変えるっていうことは、今までは憲法変えるのに、国会議員の3分の2以上の賛成が必要だった。これを半分にする。新聞もテレビも96条を変えるのはいいか悪いか。朝日新聞は反対する。96条を変えるかはどうでもいいんじゃないか。本当は、だから安倍さんに聞いたの。「あなたは96条を変えるっていうことは、憲法を変えたいんでしょ? どう変えたいんですか?」実は安倍さんは、NHKはじめ、各局に全部ですよ。誰ひとり「あなた憲法のどこ変えたいんだ」と聞いた人いないんですよ。みんな96条ばっかり。なんでこうなったの? 私は憲法のどこ変えたいんだって言ったら、9条だと。私も実は今の憲法は問題ありだと思う。なぜなら今の憲法できたのは昭和21年。つまり日本は占領下。全く資源もなかった。当時はまだ冷戦も起きてない。だからアメリカは連合国は日本が二度と戦争できない弱体国にするっていうことで憲法9条作った。問題ありだ。だから憲法改正するのはいいけど、私は憲法9条の一項は変えるべきでない。つまり国権の発動としての武力行使、戦争はしない。で、安倍さんにあえて聞いたの。「9条を変えたいのはわかる、9条の一項はどうするんだ。私は変えるべきではないと」と。安倍さん「その通りだ」と言った。これで安心した。ところが新聞がみんなそう書いてない。彼は憲法9条の一項を変えないと言ったのに、新聞は、毎日新聞読売新聞も9条に手を突っ込むと書いてる。つまりこれは新聞が安倍は右翼だとこう決めつけたいんです。
で、余計なこと。さっきのTPPをはじめ、普天間の問題も中国の問題も安倍さんは参議院選挙前にやろうとしている。

竹中:ご指摘の通りで、私は安倍さんは守りに入ったら負けると思いますし、そのことを安倍総理ご自身がちゃんと認識しておられると思います。だからTPPもやっぱりやる方向なんですよ。常に前向きに戦っている方向を見せることが、攻撃こそ最大の防御であるというこの鉄則を、安倍さんは前回の経験から学ばれたと思うんです。

田原:僕は安倍さんですごいと思ったのは、実は本当は安倍さんは1月に訪米するはずだった。なぜ行けなかったか。TPPがあった。自民党の中で200人以上断固反対。過半数ですよ。だから行けなかった。今度も新聞やテレビのほとんどがアメリカ行ってもTPPのはっきりした表明はできない。なぜなら、200人以上反対なんだから。ところが彼は参加表明した。実はもっとこのあと、帰ってきた月曜日に、翌日です。200人以上の自民党の絶対反対派が「絶対反対」と絶対反対のものを作れと、幹事長のところへ行こうとした。中心的メンバーに安倍さんが直接電話して「お前ら何やってるんだ」と言ったんで崩れちゃった。
僕は実は余計なことだけど、安倍内閣はうまくいかないと思ってた。なぜならば今までは自民党がうまくいったのは、野中広務とか梶山静六とか森喜朗とかこういう長老たちが裏で調整やったんです。全部いなくなった! だから安倍内閣はもしかしたら民主党と同じことやるんじゃないかと。なんでできてるんだろう。長老いなくなったのに。

竹中:基本的には安倍さんの戦う姿勢、リーダーシップだと思いますが、同時に今の菅官房長官が非常にうまく行政府と党の間を繋いでおられるということも重要な要素なんだと思います。

田原:菅さんっていうのはね、裏表がない。安倍さんを(放送)やる一週間前に菅さんを(放送)やった。はったり駆け引き全くないのね。彼は秋田県出身で集団就職で東京、横浜にやってきて、夜学の高校、夜学の大学出た。本当に、そういう意味じゃあ、世襲でもなければなんでもない。官僚でもない。この菅っていうのは実は。なんでこんなこと言うのかという言うと、竹中さんが随分菅さんに世話になってるんだよね。郵政民営化のときに。ちょっと言って。

竹中:私が総務大臣のとき、菅官房長官は総務省で一緒に仕事をしてくださったんです。私が国会答弁やなんかで追われているときに、省の中の人事考課まで含めてすべて菅さんにお願いして、その菅さんが非常に強く官僚をグリップしてくださって、それでうまくいろんなことをやることができたんです。菅さんっていうのはいろんな意味で苦労されてきた方で、個人的に伺っていると、ものすごく選挙に強い方なんですけど、一番最初に無所属で横浜の市議会議員に出たときが一番大変だった。
それに比べればそれ以降のことは大したことない。本当に自力でここまで来られた方で、私は安倍総理のリーダーシップと、それを支える菅官房長官とのコンビが非常にうまく機能して、TPPに関してもまず役員会で総裁一任を取り付けるんですよ。こういう手順がちゃんとしてるので皆、もちろん反対の人もいるし、最後まで反対と言うけれども、最終的には収まるところへ収まっていくという政治のツボみたいなものを今の安倍菅ラインはうまくおさえられていると思う。

田原:そこがすごくて、例えば普天間の問題にしても、TPPの問題にしても自民党には反対がいっぱいある。まとまんない。普天間の問題で防衛大臣、外務大臣、沖縄担当山本一太さん、官房長官。どうしようか。結局収集つかなかった。そこで菅さんが、官房長官が安倍一任と。結局TPPも安倍一任。それから普天間も安倍一任。これ取り付けた。

竹中:先ほど言ったように既得権益を持ってる人たちは容易にそれを手放さないし、これから成長戦略作成に向けてものすごくたくさん山があると思うんですが、しかしそれでも三本の矢は一本半は飛ばして、あとの矢もなんとかついていくんじゃないかと期待を繋いでいるのは、安倍菅ラインの非常に巧みなツボを抑えた政治の効果だと思うんです。
アルジェの人質問題なんかでもすっごい安心感があるんです。国民から見てて。ある官僚が言ってたんですけど、「久々に官房長官が内閣をグリップして、総理官房長官のラインが非常にしっかりと見えてる内閣は久しぶりにできた。そういう緊張感が霞ヶ関にある」

田原:本当にグリップしてる?

竹中:役人から見るとここがグリップされてるって怖いんです、変なことやれないから。その力で成長戦略もぜひ引っ張っていっていただきたいと思うんです。

田原:国民にとって景気が良くなったというのが実感できるのは収入が多くなるということ。これはどうですか。

竹中:これは実はダボス会議で大変面白いシーンがあったんです。ジョージ・ソロスという投資家がいます。ヘッジファンドの。彼がやっぱりこれくらいの部屋のミーティングだったんですけどね。彼が「アベノミクスが成功するための最大のポイントは給料が早く上がることだ」って言ったんです。ジョージ・ソロスっていう人は本質を見てるなぁと思いました。

田原:ボーナスは満額改定っていうのは多いんだけど、ベースアップする、これはあんまり出てこない。

竹中:論理があるんです。給料っていうのが何で決まるかっていうと、基本的には物価の上昇率プラス生産性の上昇率で長期的には決まっていくはずなんです。だからデフレからインフレになれば、マイナス1%からプラス2%に物価がなれ給料も上がっていくはずなんです。間違いなくそうなっていくと思うんですが、これが遅れるんです。給料は必ず遅れるんです。半年、一年くらい遅れるんです。もしも物価の上昇がわーっと高いと、一年遅れることによるダメージが我々生活者にとってすごく大きいから不満が出る。そうすると支持率が下がって政治的に持たなくなる。だからここからあんまり遅れないようにすることが重要だ。これがジョージ・ソロスのメッセージで、そのことを安倍総理はちゃんとわかっておられるんです。それで財界、同友会集めて、協力を要請するわけです。

田原:つまり給料を上げてくれ。具体的に安倍さんの言い分は、政府のできることはやってる。つまり金融緩和もした、株価も上がった。だから今度は経済界が経営者が給料上げろ! とこう言ってる。

竹中:実は単に心情的に言ったわけではなくて、マクロ的に見ると非常にロジカルなんです。どういうことかと言いますと、我々の国民所得、いわゆる付加価値です。付加価値を労働と資本でどれだけ分けるかっていうのを労働分配率、資本分配率っていうわけです。労働分配率はバブルのときぐらいまでだいたい3分の2なんです、66%くらい。ところが失われた10年の間に、経済が悪くなったわりには、給料下がらなかったんです。だから2000年ぐらいに75%くらいになるんです。資本の取り分が一気に減って企業が弱くなっちゃう。それを元に戻す必要ができたんです。それでずーっとそれ以降は労働分配率が下がってきて、リーマンショック前に69ぐらいまで下がってきたんです。66くらいだったものが75になります、それが69ぐらいまできました。だからなんとか給料を再び上げられるような、マクロ的な環境が整っているんです。そのことを見据えて総理は企業に対して協力を要請しているわけで。

田原:ここで変なのが、本当は従業員の給料を上げるのは労働組合の役割。ところが労働組合が首相が給料上げるって言うのはおかしい。てめぇら何してるんだ?って。その辺どうですか?

竹中:労働組合っていつも文句言ってるからそれでいいんじゃないかと思うんですけど。基本的にはマクロ的なロジカルな議論を総理はしてるってことが重要なんです。私はやや残念なのは、今はそういう状況にあるんですというマクロ的な解説を、経済財政諮問会議がちゃんとやるべきなんだけども、そこは残念ながらそういう声は発してないんですね。総理が一人でやってる感じなんですよ。経済財政諮問会議はもう少し声を上げて、良くも悪くも話題になってほしい。

田原:安倍さんと菅さんががんばってるんだよね。そういう経済財政諮問会議、あるいは財務省とか、いろいろ問題ありだよね。

竹中:甘利大臣は両方見ておられるわけで、甘利大臣は我々が言うことと官僚が言うことの調整、板挟みになるという大変つらい立場にあるんですけれども、そこは非常に真摯に対応してくださっているんです。甘利大臣はしっかりやってくださるって我々は信頼感をもってやっています。そこと総理官邸のラインがしっかり組んでいって、非常に敵の多い構造改革を、規制改革をこれからどれだけやっていけるかどうかですね。

田原:本当に経済が成長したと思えるのはいつ頃ですか。

竹中:私はどうしてもやりたいことの一つに、これちょっとカタカナ語で恐縮なんですけど、コンセッションっていうのがあるんですね。コンセッションっていうのは日本ではあまりやられていないんですけど、世界では結構やられてます。具体的に言うと道路とか空港とかこういうものはインフラだけれどキャッシュ・フローを生み出します。つまり通行料とか取れるし。それを運営する、料金をとって運営する権利を民間に売るんです。インフラそのものは国が持ってればいいですよ、でもそれで料金を取って運営する権利を売るとすごい大きな金額になるんです。このお金使って、例えば道路も強化しなければいけません、羽田空港も整備しなければいけませんと、そういうお金に使って、うまくコンセッションができれば、そのお金が使えますから、比較的早く経済が目に見えてよくなってくると思います。しかし本当はやっぱり教育の効果とか、製造改革の効果だとかが出てくるのは、ある程度時間がかかる。それを繋ぐために。本当に教育の効果が出てくるのは5年10年ですからね。しかしそれはやっぱり待てませんので、それが早く出てくるように、今言ったコンセッションっていうのをやって、それで国土強靭化、全部とは言いませんけど、必要な一部はやっていく。そうすると目に見えてお金が回ってきますから。それを非常に安易な官民ファンドで政府がお金を出してあげますよ、これはやっちゃダメです。これを避けるというのも大変重要な課題だと思います。

田原:もっともっと聞きたいんですが、時間が来てしまいました。これで一応終わりましょうか。

司会:どうもありがとうございました。それでは本日の特別対談として開催させていただきましたが、こちらで本日終了させていただきたいと思います。田原先生、竹中先生、大変どうもありがとうございました。

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