ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

鎌倉名物の「しらすトースト」 人気漫画で描かれ再ブレイク

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 1年間の話題のマンガを顕彰する「マンガ大賞2013」の大賞が吉田秋生氏の『海街diary』に決まった。同賞の選考委員でもあり、食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が、作品に登場する鎌倉の名物料理を通じて作品世界の魅力を伝える。

 * * *
 「食」がその背景をともなって物語に描きこまれた作品には、例外なく人をひきつける力がある。先日発表された「マンガ大賞2013」の大賞受賞作『海街diary』(吉田秋生)もそんな作品だ。

 『海街diary』は鎌倉に暮らす3姉妹のもとに、父を亡くした腹違いの4女がやってくるところからはじまる叙情的な物語だ。描かれるテーマは「家族の絆」であり、「食」が主題というわけではない。しかし随所に盛り込まれた「食」がテーマとなる「家族の絆」のモチーフとして、大切な役割を果たしている。

 例えば1巻。4女・すずが3姉妹のもとに引っ越してきたとき、姉妹の間で「引っ越しっていったらソバでしょ」「やっぱソバはゆでたてじゃなくっちゃ」といったやり取りのあと、大きなザルに盛られた蕎麦を“家族”でたぐる。ほかにも、姉が作った自家製の梅酒に中学生のすずが口をつけ、ひっくり返り、叱られて「あたし ああいうの はじめてなんだもん 自分ちで作った梅酒って飲んでみたかったんだもん」と訴えかける。

 この作品での「食」でとりわけ読者からの支持を集めるのが、4巻に登場する「しらすトースト」だ。トーストにバター、しらす、きざみのりという、違和感のある組み合わせにも見えるが、これがまさに取り合わせの妙で、あっという間に食べ進んでしまう。

 作中ではすずが「お父さんたちはここへきたかも知れない」というカフェで、しらすトーストに巡りあう。「お父さんがよく作ってくれた」というこのメニュー、実は本当に鎌倉のカフェに実在するメニューでもある。

 しらすはカタクチイワシの稚魚であり、バターなど油との相性もいい。アンチョビやオイルサーディンといったイワシ加工品は、料理や味つけの土台に使い勝手のいい素材でもある。鎌倉をはじめ相模湾近くの飲食店では「しらすのペペロンチーノ」や「しらすのピザ」など、洋風のしらすメニューを供する店も多い。

 鎌倉のある湘南・相模湾でのしらすの旬は春。1~3月は禁漁期で3月中旬に漁が解禁される。ちょうどいま頃出回るしらすには、身の小さなものと大きなものが混在している。ちなみに身の大きなものは「越冬しらす」と言われ、冬の間も湾内にとどまっていたもの。最盛期はまさにこれから。今年孵化したしらすが湾内に入ってくる4月中旬以降となる。

 季節や食事をともにする相手も含め、食べるという行為には、記憶にひもづく要素があまたある。ほかにも『海街diary』の作中には、精肉店で揚げたコロッケやトンカツ、食堂のアジフライ定食、甘味屋のあんみつ、法事みやげの温泉まんじゅうなど、さまざまな食べ物が情景をともなって登場する。そこに描かれた「食」は読者ひとりひとりの記憶や共感を喚起する装置でもある。



(NEWSポストセブン)記事関連リンク
小泉今日子・中井貴一がドラマでさぼった店のしゃぶしゃぶ
ヨン様 縁結び寺の後は150円ミルク味アイスキャンディー
抹茶アイス堪能オバマと胡錦濤との会談でカンペ棒読み菅直人

カテゴリー : エンタメ タグ :
NEWSポストセブンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。