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「表現は時間を超える時限装置」アジカン後藤正文さんインタビュー メリシャカLIVE2012レポート(2/2)

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2012年12月22日に開催された『メリシャカLIVE2012』のレポート後編です。今回は、『メリシャカLIVE2012』終了直後に行った、ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)のボーカル&ギターであり、『THE FUTURE TIMES』編集長の後藤正文さんとのインタビューを中心にお伝えします(前編「アジカン後藤正文さんと僧侶の対話「握っている手をどう離す?」 メリシャカLIVE2013レポート(1/2)」はこちら)。

“アート”としての『THE FUTURE TIMES』
――今日のパネルディスカッションのなかで、一番面白かったお話は?
「手を離す/離さない」ことへの考え方は、「すごい感覚だなあ」と思いました。特に震災発生後は、死と向き合うことを避けられなくなっていて、自分の死生観をちゃんと育てなければいけないという気持ちになったんですね。「あ、僕は死に対して何も準備できていないんだな」って。死への執着や所有に関する仏教の考え方は、そのヒントになるんじゃないかと思います。

人間も生き物だから、生存するために所有欲とかそういうものがある程度インプットされているみたいに言う人もいますけど、僕はあまりそういう考え方はしっくりきていなくて。たとえそうだとしても、僕たちがえんえんと揉めていることを乗り越えていく叡智が人間にはあるのだと願いたいし、祈りたい。そのためのヒントって、仏教に限らずいろんなところに書いてあるんじゃないかと思います。

しかも、もともとはドライな仏教の考え方が、日本ではウェットなものになっているという釈先生のお話はしっくりきました。日本の音楽もすごくウェットなんですよ。ロックをやっても、日本人がやるとウェットになって、カラッとしない。「やっぱり、湿っているんだなこの国は」という共通点に面白さを感じますね。

――パネルディスカッションで「『THE FUTURE TIMES』は、アートとして取り組んでいる」と発言されていましたね。アートは、未来に向けたものであるという感覚をお持ちなのかな? と思ったのですがいかがでしょうか。
基本的に、アートには時限装置みたいな側面があるんですね。僕たちは、ある種の何かをパッケージするんですけど、聴くかどうかは受け手にゆだねられています。それは時間を超えるんですよ。

――アートは時間を超える、時限装置。
何が面白いかというと、僕たちがいまだにビートルズのアルバムを聴いてドキドキしたり、中学生がビートルズのアルバムを買ったりだとか。たとえば、僕がジャック・ケルアックの小説に感動したりするわけです。表現物が時を超えていくということは、歴然たる事実として目の前にありますから、その力を信じていますね。

ただ、表現物それ自体に何かメッセージがなければいけないというわけでもないと思います。よく「メッセージは何ですか?」と聴かれるけれども、たとえば「この音は美しい」という思いのためだけに表現してもいいわけです。「この音は美しい」ということだけが世界を変えることもあると思うんですよ。

ひとつの表現がどこに作用するかはわかんなくて。それが一番面白いところだとも思うんです。だから、手を抜けない。僕がしょうもないものを作ったら、しょうもない結果を起こすこともあると思うんですよ。だから、やはり全方位で、全力で作品を作っておかないといけないという責任は感じています。

――「表現は時限装置だ」とおっしゃることと、釈先生が「宗教は死を超えていくストーリーを持つ」と話されたことがリンクするような気がします。
ブッダの教えが2500年後の今を生き抜いている、すごいことじゃないですか? つまり、これこそが希望ですよ。だからね、僕たちは書き綴ったり考えたり、何かを残すことを胸を張ってやればいいんです。

今は「強い言葉」が必要なんだと思う
後藤さんは、ソロライブのとき「東日本大震災発生後にミュージシャンとしてどう感じ、どう音楽と向き合ってきたのか」を、観客と同じ目線に立つようにして話しておられました。時がたつにつれて、被災地への関心が薄れていくなかで、久しぶりに力強いメッセージを聴かせてもらった、という感じもありました。

――ソロのときはいつも、曲の間にお話を交えながらライブをされるのですか?
そうですね。楽器も一本しかないですし、パーソナルな思いが多めに入ってきます。アジカンは装置として大きいことはわかっていますから、「この後、大きなロボットに乗るんだと思っているパイロット」じゃないですけども、力についても考えますよね。「いったい何を書くべきなのか?」っていうことに対しても。

ひとりでやるときはそういうことは考えないで、パーソナルなものを書き綴っています。そういうところに、普遍的なものが宿っていたらいいなとは思いますが、最初から期待はしていないですね。

――震災後は、発言するミュージシャンが叩かれるような状況があったとおっしゃっていましたが、今後も思いを伝えながらのライブを続けていかれるのでしょうか。
表現する、発言することには、自由がある一方で責任もまた伴います。自由と責任は、どちらも常々意識されなければいけないことなんですけれど、世の中の流れとして「発言するな」「控えろ」という同調圧力というか、「空気を読め」という無言の要求が『Twitter』や『Facebook』を通して可視化されてきていると思うんです。これには、やっぱりちょっと抗っていかなければいけないな、と。

直感なんですけれど、何年か前から「これからの音楽には強い言葉が必要だ」と思うようになっていたんですね。『Twitter』なり『Facebook』のようなメディアを通して、人々の思いがどんどん言葉になって世の中にあふれてきているからこそ、強い思いで綴られた言葉が必要なんじゃないかって。自分にも言い聞かせています。「書くことは甘くないよ。なめるなよ」って、自分を叱咤して戒めているというか。一方で読むことも簡単ではないと思います。でも、書かないと変わらないと思うんですよ。

――今、思いがあっても声を出せずにいる人たちに向けて、何かメッセージをお願いします。

いつか声を出したいと思ったときに、一緒に声を出したいです。それまでは、僕が矢面に立っていろんな批判を一身に受けますから。いつか、横に並んで一緒に声を上げてくれることを願うし、その声は僕と意見が違うことであってもいいと思う。意見が違うなら、立ち止まって話し合えばいいだけだから。

――ありがとうございました!

今回の『メリシャカLIVE』をきっかけに、『THE FUTURE TIMES』で後藤さんと僧侶の対話が続けられるかもしれません。仏教が2500年にわたって伝えてきた智慧が、今を生きる私たちの未来を導く可能性を、いろんなカタチで見てみたい――後藤さんのお話を伺って、改めてその思いを強く感じました。

『THE FUTURE TIMES』は、ウェブサイトでも読むことができます。また、紙の『THE FUTURE TIMES』は、TOWER RECORDS、HMV、JINS、BEAMS、Ciaopanic、CA4LAなどの店舗のほか、全国各所で無料配布されています。ぜひ、紙の『THE FUTURE TIMES』を手にとって、一緒に読みたい人と共有してみてください。きっと、そこから始まる未来もあるのではないかと思います。
(写真:メリシャカ提供)

後藤正文さんプロフィール
1976年生まれ。ASIAN KUNG-FU
GENERATIONのボーカル&ギターであり、全ての楽曲の作詞とほとんどの作曲を手がける。これまでにキューンミュージック(ソニー)から7枚のオリ
ジナル・アルバムをリリース。10年にはレーベル「only in
dreams」を発足しwebサイトも同時に開設。また、新しい時代やこれからの社会など私たちの未来を考える新聞「THE FUTURE
TIMES」を発行するなど、
音楽はもちろんブログやTwitterでの社会とコミットした言動でも注目され、後藤のTwitterフォロワー数は現在210,000人を超える。

ASIAN KUNG-FU GENERATION http://www.asiankung-fu.com/
THE FUTURE TIMES http://www.thefuturetimes.jp/
THE FUTURE TIMES 配布場所 http://www.thefuturetimes.jp/list/
後藤正文さんのTwitter https://twitter.com/gotch_akg

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ウェブサイト: http://www.higan.net/

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