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続報:伝染るんですか?アルツハイマー病って

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今回は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

続報:伝染るんですか?アルツハイマー病って

以前のブログ記事で、アルツハイマー病(AD)やパーキンソン病(PD)にも、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)のように動物から人、あるいは人から人への感染の可能性があるのかどうかについての研究報告をご紹介しました(過去記事1 *1、過去記事2 *2)。

*1:「プリオン病の最新事情」 2010年01月18日 『サイエンスあれこれ』
http://blog.livedoor.jp/science_q/archives/1003285.html

*2:「伝染るんですか?アルツハイマー病って」 2011年11月11日 『サイエンスあれこれ』
http://blog.livedoor.jp/science_q/archives/1560785.html

いずれの病気も、元々脳にある正常型のタンパク質を、何らかの原因で生じた異常型のタンパク質が、次々と異常型へ変えていくことで、脳に障害をもたらす神経変性疾患です。そのようなタンパク質として、CJDではプリオンタンパク質、ADではβアミロイドやタウタンパク質、PDではαシヌクレインタンパク質が知られています。(冒頭図はCJDの原因とされるタンパク質プリオンの構造図。左が正常型、右が異常型)

CJDの場合、この異常型タンパク質が身体の外からやってきても感染することが知られているため、同様なしくみで異常型が増えるタンパク質を原因にもつADやPDも、外からやって来た異常型タンパク質に感染して発症する可能性があるのかどうかに、人々の関心が集まっていたわけです。そして、これまでの研究結果では、動物から動物(過去記事1)*1、人から動物(過去記事2)*2への感染はあるかもしれないとのことでした。(もちろんすべて、異常型タンパク質の経口か、外科的な強制投与による人為的な感染なので、通常の生活で感染するわけではありません。)

しかし今回、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)とペンシルベニア大学病院の共同研究チームは、人から人への感染の可能性はほぼないだろうと、JAMA Neurologyオンライン版に2月4日付けで報告*3しています。その根拠とは、アメリカが1963年から行っていた、死後下垂体由来の成長ホルモン(c-hGH)注射を受けた人たちの記録です。

*3:「Evaluation of Potential Infectivity of Alzheimer and Parkinson Disease Proteins in Recipients of Cadaver-Derived Human Growth Hormone」 2013年02月04日 『JAMA Neurology』
http://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1566614

遺伝子工学によって作られた成長ホルモンに取って代わられるようになった1985年頃までの約20年間で、約7700人のアメリカ人がc-hGHの注射を受け、そのうち200人以上がCJDを発症したそうです。c-hGHに混入していたCJD患者由来の異常型タンパク質が原因と考えられ、1985年以降c-hGHの注射は行われていないのですが、当時注射を受けた人たちの追跡調査は、その後も30年以上に渡って続けられてきたのです。

その記録を精査していた研究チームは、CJDを発症した人はいても、AD、PD、FTLD(前頭側頭葉変性症)を発症した人が全くいないこと、3人のALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した人がいることなどを突き止めました。いずれの病気も正常型から異常型に変化するタンパク質が原因と考えられています。

一般的な発症率を考えると、c-hGH提供者の中にはCJD感染者よりも多くのAD、PD、FTLD感染者がいたと考えられ、それら由来の異常型タンパク質がc-hGHに混入していた可能性はずっと高かったと考えられるにもかかわらず、CJDを発症した人の数と比べ、AD、PD、FTLDの発症が皆無であったことから、AD、PD、FTLDの異常型タンパク質には、感染性はないのではないかと結論付けたのです。たった3人のALS発症者にしても、他のCJD、AD、PD、FTLDとは異なり、下垂体にALSの異常型タンパク質が見つかった例がないことから、それが混入している可能性の極めて低いc-hGHの注射が発症の原因ではない可能性が指摘されています。これでまずはひと安心というところでしょうか。

執筆: この記事は神無久さんのブログ『サイエンスあれこれ』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年03月12日時点のものです。

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