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メディカル・デザインの現在、近未来、遠未来(3)【テレスコープマガジン】

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医療における現場で、医師や科学者、エンジニアとともに、近年では重要な役割を担うのがデザイナーだ。医療器具の形状や色をデザインするだけではなく、その職能はテクノロジーとともに深化して、全体的なシステムを描く存在としての期待が高まっている。いくつかの事例を見ながら、これからの”医療のかたち”をデザインの世界から考察していこう。
■現行の法制度内で実現させる夢
先端医療産業の特区である神戸ポートアイランド内に、2013年1月の竣工を目指して急ピッチで進む工事がある。名称は「チャイルド・ケモ・ハウス」(仮称)。小児がん治療中の子どもたちと、その家族に向けた日本初の専門施設だ。小児がんの患者家族や専門医らが所属する、同名のNPO法人が開設する。2005年から、足掛け7年にわたる”夢の病院”を作るプロジェクトだ。

写真:神戸「チャイルド・ケモ・ハウス」(仮称)建築模型 cTezuka Architects

病室のベッドに看病で付き添って一夜を明かす際、幅の狭い簡易ベッドを利用した経験のある読者も多いだろう。これは日本の病院のほとんどで、患者や医療従事者以外の宿泊が認められないためだ。より広い部屋を希望する場合には「差額ベッド代」を請求されるのも、法制度上の理由だ。
この新しい施設の最大の特徴は、患者の家族が24時間滞在できる19戸の居室が、病棟とガラス1枚で隔てられて隣接していることだ。

写真: 家族用の居室から病棟側を望む。無菌治療が行われていない間は、患者とここで一緒に過ごすこともできる。cTezuka Architects

小児がんの中で頻度の多い「小児白血病」の場合、抗がん剤による化学療法(ケモ)を行う際には、数週間の無菌治療期を迎える。無菌室にいる間は外の世界や家族とも切り離されてしまうところを、この施設では互いの姿を見ながら自分の家にいるような感覚で過ごせるのだ。
施設を設計したのは、手塚貴晴氏と手塚由比氏が代表の手塚建築研究所。「ふじようちえん」(2008年日本建築学会賞、2009年日本建築家協会賞、2011年OECD/CELE学校施設好事例集最優秀賞などを受賞)の園舎を建築したことでも知られる著名な建築事務所だ。手塚貴晴氏はこう説明する。

「私たちは、患者の家族が病気と戦う子どもたちと一緒に居られる空間を作っていますが、これは非常に難しい問題があります。小児がんと戦う子どもたちは雑菌に弱く、家族はその雑菌を持ち込むからです。チャイルド・ケモ・ハウスではこの問題を、家としても成り立つ広い病室を作ることで解決しました」

写真:施設の全体図と一部を拡大した図 cTezuka Architects

上の図では、建物の外部に面して家族用の居室玄関があるのが分かるだろう。また、ガラス壁を示す点線+波形のカーテンで示された場所(赤丸部分)が、小児がん患者の病棟と家族用個室の境界線にあたる。まるで施設の屋内と屋外が反転したような具合だ。

手塚氏はプロジェクト当初から幾度の計画変更にも粘り強く対応し、ようやく今年2012年6月、施設の着工に漕ぎ着けた。

「患者さんにとって一番良い病室空間とは、病院にいることに気がつかないほど快適な空間だと思います」。

そう語る手塚貴晴氏は、副島病院の設計で、1997年度のグッドデザイン賞金賞を受賞した経歴を持つ。

「以前の副島病院では、患者さんの目線の高さから街が見える病室を設計しました。これは簡単なようで難しいことなのです。患者さんから街が見えるということは、患者さんが街から見えてしまうということですから。副島病院では幅4mのルーバーを窓の外に付けることで、この問題を解決しました」

このときの経験から、デメリットだった「患者が外から見える」ことを、今度は積極的に利用するデザインが浮かんだのではないだろうか。

写真:家族は共用部を通らずに、居室へ直接入ることができる。 cTezuka Architects

「単順に形態や機能性だけで、患者に優しいデザインはできません。医療従事者は建設会議に立ち会えますが、患者さんは立ち会えないのですから。そのため患者さんの視点はどうしても後回しになるか、医療従事者の視点があたかも患者さんの視点であるかのように語られることも珍しくありません」

建築家の立場からこのような警鐘を鳴らす手塚氏は、患者の側からあるべき理想の未来像を示して、何度も絵を描き続けた。来春の施設開業で、まもなくその夢を実現させる。

このように、デザインの役割には「人々に来るべき未来を目に見えるかたちで示すこと」がある。最後に紹介する2つの事例は、もしかしたら訪れるかもしれない、数百年後の未来についてのデザインだ。

(つづく)

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記事提供:テレスコープマガジン

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