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民主決定の電波オークション撤回の裏に大メディア懐柔の思惑

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 安倍政権は「富の創造」を掲げたアベノミクスの陰で、国民の資産を増やす重要な法案をひそかに葬り去った。
 
 電波の周波数帯の利用権を競争入札にかける「電波オークション」制度だ。現在、電波は総務省が裁量で放送局や通信事業者に無料で割り当てて年間の電波料を取っているが、これから利用が進む第4世代携帯電話向け電波などを入札にかければ、数千億円の収入になるとみられている。

  そこで民主党政権は次の電波割り当てから入札を実施することを閣議決定し、昨年の国会に電波法改正案を提出していた。しかし、安倍政権に交代するや、新藤義孝・総務相は「今国会に(オークション導入の)法案を提出することはない」と言明したのだ。総務省もオークション制度そのものの導入を撤回する電波法改正案をまとめている。

  もったいないだけではない。その裏には、安倍政権の大メディア懐柔の思惑が秘められている。民主党政権で仕分け人を務め、電波オークション導入を提言した鬼木甫・大阪大学名誉教授(経済学)が語る。

 「新藤総務相はオークション制度の撤回理由を『資金力のある事業者が周波数を独占しかねない』と説明しているが、それはおかしい。欧米諸国はほぼ全ての国でオークションを導入し、東南アジアでも一般的、東アジアで導入していないのは中国、モンゴル、北朝鮮と日本だけです。

  電波は国民の財産なのに、巨額のオークション収入を逃した上、電波事業はテレビ局と携帯電話会社に寡占されて特定企業の既得権になっている。オークションをすれば新規参入が可能になり、国民には新たなサービスや事業者の選択肢が増えるメリットがあります」

  しかも、テレビ局の電波料は通信事業者に比べてはるかに安く(テレビ埼玉は年間約119万円)、公共の電波を格安で利用してテレビショッピング番組をバンバン流し、荒稼ぎをしてきた。

 「メディア側にすれば、オークションが導入されれば外資など新規業者がライバルとして参入し、新たな脅威になる。それに対抗するには、現在支払っている電波料に加えて、オークションで競り勝つ高額な費用が必要になる。だから制度導入を阻止したいわけです」(前出・鬼木教授)

  実際、2010年9月に行なわれた携帯向け次世代マルチメディア放送の周波数割り当てでは、民放大手5社とNTTドコモの連合が、米国方式を採用したKDDI陣営と争ったが、入札ではなかったため、総務省は民放・NTT連合を採用した。既得権を守ったのだ。現在は、その周波数を使ってNTTドコモのスマートフォン向けマルチメディア放送局「NOTTV(ノッティーヴィー)」が運営されている。

  安倍政権は首相就任後の「ハネムーン期間」と呼ばれる、まだ支持率が高いうちに、電波オークション廃止を打ち出すことで大メディアに大きな恩を売ったわけである。

  大新聞・テレビがすっかり牙を抜かれて政権批判に目を向けない本当の理由はそこにある。

※週刊ポスト2013年2月15・22日号



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