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【書評】職業としてのAV女優

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今回は橘玲さんのブログ『Stairway to Heaven』からご寄稿いただきました。

【書評】職業としてのAV女優

コラムとして書いた原稿ですか、「面白いけど、うちではちょっと……」といわれてしまったので、BLOGにアップします。

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フリーライター中村淳彦氏の『職業としてのAV女優』*1は、アダルトビデオの現場で起きていることはすべて、需要と供給の市場原理で説明できることを教えてくれる。

「職業としてのAV女優 (幻冬舎新書) [新書]」 中村 淳彦(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344982649/

21世紀に入ってからのAV業界の大きな変化は、供給の爆発的な増加だ。かつてAV女優になるのは、家庭などに複雑な事情のある女の子たちだった。それが今では、インターネットに「モデル募集」の広告を出すだけで、AV女優志願者がいくらでも集まるのだという。

自分の性を晒すことに抵抗がなくなったこともあるだろうが、中村氏は、いちばんの理由はデフレ不況だという。

最近のAV女優の典型は、地方から東京に出てきて、働きながら看護士などの資格を取ろうとする真面目な女の子だ。

時給900円のアルバイトでは家賃を払うと生活が成り立たない。かといってバイトの時間を増やすと学業と両立できない。こんな悩みを抱えた女の子が、短時間でできる仕事をネットで検索してAVに辿りつくのだ。

AV女優が真面目なのには、別の事情もある。

キャバクラなどの風俗店で働けば、もっと簡単にお金を稼ぐことができる。だったらなぜ、AV女優などという“汚れ仕事”をするのか不思議に思うだろうが、女の子のなかには、知らない男性とは話ができないというタイプがいる。製作側からしても、遊びなれた女の子より、男性経験の少ない素人っぽい女性の方が人気があるのだという。

AV女優志願者は、ごくふつうの主婦にも広がっている。

これもデフレ不況の影響で、夫の収入が減る一方で子どもの教育費がかさみ、生活費の不足から消費者金融でつい借金をしてしまう。その返済に困った主婦も、子育てと両立できる仕事を探していて、ネットで「モデル募集」の広告を見つけると続々と応募してくるのだ。

AV女優の供給過多の一方で、需要側の変化は市場の縮小とユーザーの高齢化だ。どんな作品でも売れた時代もあったが、今はネットに動画が溢れていて、若者はAVにお金を払おうとはしない。優良顧客は、一人暮らしの年金生活者だったりする。

高齢化した消費者が若い女性を好まないことで、需要と供給のミスマッチはさらに拡大する。こうしてAV女優の“品質”が上がると同時に価格(出演料)が大きく下がった。

デフレ不況のAV業界では、若くてかわいいだけでは相手にされない。時間や契約を守り、礼儀と常識をわきまえ、プロフェッショナルな仕事ができなければ生き残れないのだ。

中村氏によると、こうした真面目なAV女優のなかには、将来のために倹約と貯蓄に励む女の子も多い。引退後は看護士や介護士になったり、理解のある男性と結婚して幸福な家庭を築く女性も珍しくないのだという。

AV女優は、いまや平凡な“職業”のひとつなのだ。

執筆: この記事は橘玲さんのブログ『Stairway to Heaven』からご寄稿いただきました。

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