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仏教をポップに翻訳して歌っちゃう!/二階堂和美さんインタビュー(3/3)

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歌手でありお坊さんでもある、二階堂和美さん(以下、ニカさん)インタビュー最終回です。今回はいよいよ「お坊さんとしてのニカさん」にフォーカス。ニカさんが伝えたい仏教のこと、お坊さんとしてやってみたいことを伺っています。

「伝える」ということでは、歌手もお坊さんも同じ。でも、ひとりの表現者としてずっと「伝える」ということに真剣勝負で向き合ってきたニカさんの「伝わらなければ伝えたことにはならない」という言葉には、ぐっとくるものを感じました。私たちは毎日、誰かと、何かを伝えあっているはずだけれど、ホントに「伝わる」ってどういうことなのかをちゃんと考えられているのかどうか? 原稿をまとめながら、何度も何度もそのことについて考えさせられました。

このインタビューを通じて、ニカさんという人のことを「あなた」に伝えることができるなら、私はとてもうれしく思います。まだの方は、ニカさんインタビューの1回目2回目もあわせてご一読ください。

仏教の良さをちゃんとポップに伝えてみたい

――ニカさんが『にじみ』で演歌風のメロディにかわいい歌詞をつけてポップに歌ったみたいに、仏教も「歌詞を変えてアレンジ」できないのかなあって思っていて。
そうね、そんな感じでできたらいいね。それも、私の使命のひとつなのかなと思っていて。同じ世代にいる意識の高いお坊さんたちのなかで、私に任されている分野はここじゃないかなって。

――ニカさんに任されている分野ってどんなところでしょう?

翻訳かな、やっぱり。仏教の良さっていうものを、ちゃんとポップに伝えるというか。かと言って「お坊さんもフツーの人なんだ」と思ってもらうとか「お寺行くと落ち着く」とか「仏像巡りおもしろい」とか、そういうのではなくて。それでわかったような気になったり、お寺の価値をそこで終わらせるのは、むしろ逆効果だなと思っていて。

そういうポップさではなくて、人の悩み苦しみに対する仏教的な解釈は用意されているわけだから、そこにつなげるために翻訳していくっていうかね。深い部分にぽーんとたねを投げ込みたい。でもまちがって”お坊さんシンガー”みたいに言われないようにはしたい。

――”お坊さんシンガー”ではなく、歌うときはあくまで歌手として。
たとえば、エディット・ピアフは愛だの恋だの歌って、それに振り回されて生きた人だけど、実はものすごく敬虔なクリスチャンだったっていうような、そういう感じが好きなんです。たとえばゴスペルって、賛美歌をR&B風のリズムや歌唱法に変えて流行ったわけだけど、私がやりたいのはそういうことではなくて、そういう目先のおもしろさや取っつきやすさよりも、もっと深層に迫ってみたい。愛だの恋だの歌っているけれども、「私は仏教徒だ!」っていうことをちゃんと恥じずに持っていれば、自然な形で伝わるんじゃないかと思っていて。だって結局、愛だの恋だの、願望だの欲だのって中に、人の迷いや苦しみがあるんだもの。スタイルとしてではなくて、信仰として「仏教ってアリかも」というところに持って行きたいんです。

――今、「仏教のどんなところが好き?」って聞かれたらどんなふうに答えますか?
おごった気持ちをへし折ってくれるところかな。やっぱり自分にとって、「仏教だぁー」って思えたところがそこだから。がんばっている人にとって、「自分の力で何でもできると思わない方がいいよ」なんて言われたらおもしろくないと思うんだけど、そこを受け入れて次に進んだ方が、強いから。謙虚な気持ちっていうのがすごくこの世を生きやすくしてくれると思うんです。でももちろん「自信を持つな」ってことでも「人任せ」でもない。浄土真宗の「他力」の考え方って、やっぱりすごく伝わりにくいと思うんだよね。「他」っていうのが「他人」だったらまだ理解しやすいと思うんだけど、「阿弥陀様」のことだからね。「えっ!突然そんなこと言われても・・・」ってなると思う。そこはすぐに納得してもらえないくらいが当たり前だと思ってる。だから歌で直接「仏」とか言わない。「他力」って考え方に対して、疑念も抱きつつ、ひっかかり続けられればいいんじゃないかな。私自身、今もそうだしね。

人間は生まれてきたら死ぬっていうことは、2500年前からお釈迦さまが言ってることなんだけど、それを遠ざけようとする今の社会の雰囲気をまず変えたいと思っているから、「死ぬんだよー、死ぬんだよー?」って言って回りたい気分。震災後は「そんなことわかってる!」ってみんなが思っているから、逆に言いにくくなってるし、そこをストンと受けとれるためにはどうしたらいいのかなあって探っているところなんだけど。今の私にとっては、歌で「おわーかれのーときー」って歌うほうが伝わるなぁと思います。

伝えることは「相手の心の触れること」

――伝える/伝わるってふしぎな感じで。たとえば、私はニカさんの歌を聴いているとき、私なりのイメージを重ねていて、それはニカさんの世界を見ているのか自分のなかの世界を見ているのかわからなくなっていくというか。
私を見ているようで、実はみんな自分の心に触れて、わーっと涙が出たりするんだと思ってるんですよ。歌手はそこに導くだけ。だから伝道者なんだなあと思うし、「じゃあ、お坊さんといっしょじゃん!」って。

お坊さんも自分の言っていることがちゃんと自分の中にストンと落ちていないと、やっぱり伝わらないと思う。今はまだほんとに不勉強で、お坊さんとしてはどうしようもない落ちこぼれなんだけど、ただ「自分はストンと落ちている」っていう手ごたえは持っていて。感覚的に「うんうん」っていうのはあるし、光が見えているのでそれは強いと思っています。言葉で説明するのはちょっとどう言ったらいいかわかんないんだけど「でも、包まれてるんです!」みたいな(笑)。

それを自分の言葉で話せるようになりたい。誰かの受け売りじゃ、やっぱり伝わりませんよね。言ってることがいくら正しくても、伝わらなくちゃ意味がない。その人の琴線に触れたり、心を握ったりすることができないと、伝わったことにならないと思うんです。

――ニカさんの歌や言葉を聴いた人が、その人自身の心に触れるようなことが「伝わる」ということ。
うん、私はそうだと思っていて。それには伝える側の実感が伴っていないとだめだと思う。何かひとつのフレーズでもいいから心に触れたとしたら、あるいは「歌詞は何ひとつ覚えていないけれど、声や表情から、くるものがあった」というのでも伝わったと思う。それができなかったら伝わったことにはならない。それは、歌手としても、ものを書いたとしても、お坊さんとしても、全部に対して言えることなんじゃないかな。

お葬式で「お別れの時」を歌えたら
――お坊さんとして、法話をするときはどんなことを話していますか?
今はまだ人の死に接する時のご法話しかしてないから、命が儚いこととか、それでも亡くなった人の命は心の中にずっと生き続けるとか。「あの人だったらどうしていただろう」と思い出せば、それは生きていることになると私は思うし、だから「そんなに悲しまないで」「無念に思わないで」って言いたくて。

私はお祖父ちゃんを亡くしたときに、最初に仏教に興味を持ったんです。21歳のとき。「もっとああしておけばよかった」とやっぱりすごく後悔しちゃったし、今でも家族をなくしたら無念に思っちゃうと思う。でも、仏教が一番望んでいることは、「じゃあこれからどうするか」っていうことに少しでも早く気づいて未来につなげるということ。自分が生きていること、今生きている命を輝かせることに目を向けてくださいねってことを伝えたい。でもまだ上手に伝えられないなあと思います。

去年の地震や津波があってから、普通の人の口から「あたりまえがあたりまえじゃなかった」とか、仏教的な言葉がどんどん出てくる。それは、仏教の常套句のはずなんだけど、今新鮮に聞こえてくるってことは、伝わってなかったんだよね、全然。やっぱり、自分の身に降りかかってこないとわからない。でもそれを事前に聴いていたら、きっと少しは違うと思うんだ。絶望的な状況でも、一筋の光になるかもしれない。だからやっぱり「うざいな」と思われながらも、何でもないときにも布教ってしていかなくちゃいけないんだなと思ってるんです。「法事の時、坊さんが何か言ってたな」って思い出してもらえるように。

――歌うときと法話するときでは、聴く人との関係も違うでしょうし、伝える側としても難しいところがあるのかなと思います。
そうですね。でも法話をしたり、月参りをしていても「何かにさわりたい」と思うんです。せっかくお互いに時間を使って場をもっているんだから。現実には、積極的な気持ちで仏法を聞きにきている人は少ないと思うけど、10分なり30分の時間がせっかく自分に任されてるんだから。音楽だとそれがうまくいくんだけど、お坊さんとしては経験値も少ないし、向こうにも「法事ってこんなもんだろう」みたいな感覚があるから、そこを壊す作業から始めないといけないんだよね。ガード硬いなあ、みたいな(笑)。

――歌で伝えるほうが早いな、っていう感じがありますか?

そうね。葬儀で、法事で、「お別れの時」を歌いたい(笑)。でも、音楽だって10年やってきてようやく最近伝わるようになったなあと思ってるから、お坊さんとしてはまだ時間がかかって当たり前と思う。ただ、音楽で得た「伝わる」感覚とか活かせることもあるから、10年後は前の10年分より成長していたいですけど。

――私も、自分のお葬式でみんなに「お別れの時」を聴いて歌ってほしいな。
自分が責任を取れる立場になったら、そのくらいやっていってもいいかなと思っていて。でもまだ今は、うちのお寺の住職は父だから「和美の代になったら好きなようにやれ」って言われています。今は、その時に何をやりたいかをちゃんと準備しておく時期だなあと思っています。もちろんお経も音楽だから、きちんと読めば、きちんと伝わると思って、心を込めて歌ってますよ。

「それでも生きる」という希望を届けたい

――書籍『しゃべったり、書いたり』のなかで、「仏法に触れることも音楽を聴くことも、自分自身を観る行為で、それによって支えになるものを見いだすことができるのではないか」という文章がありました。「支えになるもの」ってなんでしょうか?
ひとりじゃない、悲しいとかつらい思いは自分だけではないっていうか。「阿弥陀さまがいっしょだよ、苦しみを全部わかっていますよ」っていうのと似ているのかもしれないけれど。たとえば、美空ひばりさんの『悲しい酒』がヒットしたっていうことは、共感した人がたくさんいたっていうことですよね。

――そうですね。「好きな人と別れた後に、ひとりでお酒を飲んであきらめきれない思いに泣く」経験をした人、たくさんいると思います。

だったら、自分の今の悲しみもたくさんの人と似たようなものだっていうか。歌う、共感するっていうのは、そうやって安心感を得ていくものじゃないかなって思う。流行歌の効力ってそれでしょう?

一番危険なのは、「なんで私だけ?」「私ばっかり」ということで。「俺様!」って思っている人に「いやいや、あんたくらいの人はいっぱいいるから!」と鼻をへし折りもすれば、「悲しいのはあなただけじゃないよ」と救うこともできるのが仏教だと思う。「俺様」でも「なんで私だけ?」でもないところから、ようやくフラットに道が広がってどこにでも行ける。

――「私だけ」から離れたら、フラットな道が広がっていて自由になれる。
「『私が、私が』みたいなのを捨てて離れてみるとどうでしょう?」みたいな。「自分ではどうすることもできない」ってことを認めたところから、ようやくフラットな道が広がるっていうかね。「どうにもならない」「私はなにがしでもない」とわかっていたら、少々のことではくじけないし、へこたれないはずだと思います。

――ありがとうございました! これからもずっと、ニカさんの歌を聴かせてください。

坊主めくりアンケート

1)好きな音楽(ミュージシャン)を教えてください。特定のアルバムなどがあれば、そのタイトルもお願いします。

いっぱいありすぎますが、周期的に聴くのは、スカタライツ。

2)好きな映画があれば教えてください。特に好きなシーンなどがあれば、かんたんな説明をお願いします。

これもいっぱいありますが、近年、劇場で観てもっとも心揺さぶられたのは「息もできない」。韓国人監督の自伝的映画ですが、家族・血縁との、どうしようもないしがらみが描かれていて、そのあと電車乗って帰る道中、40分泣きっぱなしでした。
あと、案外「ローマの休日」は、見方によっては大人の話だなと近年思いました。お寺を捨てられない我が身をアン王女に重ねてみたりして・・・。

3)影響を受けたと思われる本、好きな本があれば教えてください。

インタビューで引用した早川義夫さんの「たましいの場所」は影響受けたと言えます。ゴブスタイン作・絵の「ゴールディのお人形」という絵本もすごくよいです。

4)好きなスポーツはありますか? またスポーツされることはありますか?

スポーツは観るのもやるのも好きではありません。

5)好きな料理・食べ物はなんですか?

とうふ。すき焼き。わかめ。ゴーヤーチャンプルー。うどん。トムヤンクン。もずく。ラッシー。


6)趣味・特技があれば教えてください。

最近、裁縫にはまりそうです。


7)苦手だなぁと思われることはなんですか?

捨てること。


8)旅行してみたい場所、国があれば教えてください。

ブータン。タイ。ベトナム。トルコ。チェコ。


9)子供のころの夢、なりたかった職業があれば教えてください。

保育園アルバムの七夕短冊には「まんが家」ってかいてあるけど、その時もものすごく迷った憶えがあります。「パン屋さん」とか「ケーキ屋さん」とか、高校生くらいでは「宇宙飛行士」とか「科学者」とか言ってみてましたが、実は特になかったです。ほんとは「歌手」だったはずですが、やくざな商売だと思っていたので、とても言えないと思ってました。


10)尊敬している人がいれば教えてください。

親鸞先輩。


11)学生時代のクラブ・サークル活動では何をされていましたか?

小学校:鼓笛隊(小太鼓)
中学校:ブラスバンド(フルート)
高校:華道部
大学:軽音楽同好会


12)アルバイトされたことはありますか? あればその内容も教えてください。

1.ガソリンスタンド
2.喫茶店
3.不登校児の家庭教師
4.化粧品の売り子、エステシャン
5.イタリアンレストランのウエイトレス
6.美術クラブの先生
7.バー
8.居酒屋
9.パーティコンパニオン
10.ペットボトルの検品

13)(お坊さんなのに)どうしてもやめられないことがあればこっそり教えてください。

たまにくる激怒。


14)休みの日はありますか? もしあれば、休みの日はどんな風に過ごされていますか?

そうじ。料理。


15)1ヶ月以上の長いお休みが取れたら何をしたいですか?

何か作る。

16)座右の銘にしている言葉があれば教えてください。

(回答なし)


17)前世では何をしていたと思われますか? また生まれ変わったら何になりたいですか?

(回答なし)


18)他のお坊さんに聞いてみたい質問があれば教えてください。(次のインタビューで聞いてみます)

「お坊さんとしての使命感はありますか?あれば、どういったことですか?」


19)前のお坊さんからの質問です。「お坊さんになって一番嬉しかったこと、辛かったことを教えて下さい。」

生きている間に誰もが仏様と同じような尊いいのちをいただけるところです。

お通夜で会った女の子から、後日メールをもらって、私から「大丈夫」って言われたことが心強かった、と言ってもらったこと。
辛いってこともないけど、月忌参りに行っても家の人が別の部屋でテレビ観てるって状況はむなしいです。

プロフィール二階堂和美/にかいどうかずみ
http://www.nikaidokazumi.net/
1974年広島生。浄土真宗本願寺派僧侶。高校時代よりバンド活動を開始、1997年からギターを弾きながら歌うスタイルでソロ活動を開始。1998年、山口から東京へ移住。1999年ファーストアルバム『にかたま』以後、5枚のアルバムと2枚のミニアルバム、国内外のミュージシャンと数々の共作アルバムをリリース。2004年に広島へ帰郷する。天使のようなやさしい歌声から力強くソウルフルな歌声まで自由自在にあやつり、天真爛漫なステージでは聴く人の心と身体を和ませる。2011年、全曲を自ら作詞作曲したはじめてのアルバム『にじみ』を発表、高い評価を受ける。『mina” perhonen(ミナ ペルホネン)』の2011 秋冬の映像モデルにも抜擢された。


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○連載:坊主めくり

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