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高層ビル化構想もあった? 東京駅のエキナカ戦略

 2014年に開業100周年を迎える東京駅。それに先駆けて今年10月1日、丸の内駅舎の復原工事が終わり、赤レンガが映える大正時代の創建当時の駅舎外観が甦った。
 歴史を大事にしながら、新しい時代の駅へと変貌する。日本の鉄道路線の中心地ともいえる東京駅は、単なるターミナル駅から“鉄道駅都市”へと進化している。
 そして、その計画の中核に位置するのが“エキナカ”の存在だ。

 『進化する東京駅―街づくりからエキナカ開発まで』(野崎哲夫/著、成山堂書店/刊)は、東京駅の歴史を交えながらいかにしてエキナカ開発、そして街づくりを進めてきたのかについて分析、解説する一冊だ。

 エキナカ(駅ナカ)とは文字通り「駅の中」を示す言葉で、2002年頃からJR東日本が“「通過する」駅から「集う」駅へ”というコンセプトのもと、駅構内に商業スペースを設ける取り組みを展開している。
 駅ごとの特色をいかに打ち出していくかというところが、このエキナカの肝であるが、東京駅のエキナカ施設である「グランスタ」は、「東京駅」という存在を中心に据えた独自色の強い戦略のもとに展開されている。

 東京駅といえば、新幹線をはじめとした様々な電車の始発駅であり終着駅。利用者は通勤客だけでなく、旅行者や出張者、地方からのお客など様々だ。

 「グランスタ」では、こうした多様な人たちが利用する際の「物語シナリオ」が徹底的に考えられているという。また、そこに並ぶ約50の店舗には「遊び心」「日常・非日常」「回遊性」が特徴づけられている。約100年に及ぶ東京駅の歴史が持っている価値に裏付けされた「物語シナリオ」が、旅行客たちの旅立ち(非日常)を演出し、さらに毎日使う通勤客たちの日常を取り込む。常に利用客一人ひとりが主役になれる環境がそこにあるのだ。

 利用可能時間の拡大も、利用客の多様化と「物語シナリオ」から生まれたものである。旅行となれば、朝早くの電車に乗って出かけるという人も多いはず。そんな利用客のために、一部の店舗は朝7時から営業をはじめ、さらにレストラン街の一部店舗は朝6時30分から開いている店もあるという。

 また、東京駅のエキナカ整備は、大手町や丸の内、八重洲や日本橋地区に至る周辺地域の街づくりと連動していることも大きな特徴だ。江戸時代に政治の拠点が置かれて以来、東京駅近辺は政治と経済の中心であり続けて来たが、今後は世界に誇る「品格ある都市づくり」を目指していくという。

 もともと、丸の内駅舎の復原に至るまで様々な議論がなされており、駅舎を壊して高層ビルを建て替えるという意見もあったそうだ。
 しかし、今、復原が終わり、そこには「歴史」と「文化」という何にも代えることのできない価値が漂う空間が生まれた。その上で、周辺の地域とともに新しい時代に向けて発展を遂げていこうとする東京駅。
 本書は空間づくりや都市づくりの好例を示した一冊だ。

(新刊JP編集部)



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