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『千日の瑠璃』169日目——私は警告だ。(丸山健二小説連載)

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私は警告だ。

町役場からの働きかけで警察が三階建ての黒いビほルへ発する、露骨な警告だ。事務所開きや新築祝いの名目で《義理掛け》をやるのは勝手だが、このまほろ町では絶対にやらせない、それが私の主旨だ。そして、私への返答はこうだ。転入したからにはこの町の歴とした住民であり、法律に従い、税金も納めるつもりでいる国民である者が、どこでどんな祝い事をやろうと勝手だ、といくらか弁才に長けたやくざ者がそう力説する。

もとよりそれしきの小理屈で引き下がる私ではない。もしどうしても強行するつもりならこっちにも相応の覚悟がある、と言い、呼び寄せた女を使って何を始めたのか知らないとでも思っているのか、と言う。だが先方の態度は終始一貫しており、かれら三人の言い分はまったく同じで、結束も固い。なかでもオールバックの髪型の長身の青年は、まはろ町の申し出を悉く峻拒し、私をせせら笑う。遺憾の極みだ。

担当の刑事は「その気になれば今でもぱくれるんだ」と言い、「田舎の警察だってやるときはやるぞ」と言う。しかし、結局私は鼻であしらわれ、両者の対立は一層深化するばかりだ。クルマへ戻った刑事は、後ろの座席で小さくなっている貧乏くじを引かされた役場の職員に、鬘をつけないことには歩けない男に、こう言う。「現行法ではこれまでですな、町長にそう伝えておいてくださいよ」
(3・18・土)

丸山健二×ガジェット通信

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