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楽天koboストアが配信するWikipedia人物記事にライセンス違反の疑いが浮上

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7月に楽天が満を持して発売した電子書籍リーダー『kobo touch』は発売時点で「8月中に6万冊の電子書籍配信」という目標設定を掲げたものの、8月31日時点での配信冊数は3万9027冊と目標に届きませんでした。現在は「年内20万冊」を目標に設定していますが、中にはグラビアアイドルの写真1点を「1冊」とカウントしたものが約2000点やギターコード譜が曲単位で約6300点含まれるなど、冊数の“水増し”が疑われるようなコンテンツも散見される状態となっています。そんな中、9月18日には『Wikipedia』日本語版に掲載されている作家の人物記事342点が著者・発行元とも「ウィキペディア」の名義で無料配信され「また水増しか?」と言う声も上がる中で、19日になり楽天の三木谷浩史社長が『Twitter』で『koboストア』の『Wikipedia』記事配信に関して、以下のようにコメントを発表しました。

koboイーブックストアでウィキペディアの作家さん情報 約500件の配信を順次始めました。作家さんの情報や、作品の時代背景などに関する理解も深めていただき、本選びの参考にぜひご活用ください。読書の楽し みがさらに増しますね。Koboで、より充実した読書をお楽しみ下さい!

(出典URL・画像:https://twitter.com/hmikitani/statuses/248338414871658496 [リンク]

つまり、『koboストア』で『Wikipedia』の人物記事を電子書籍として配信しているのは「作家さんの情報や、作品の時代背景などに関する理解も深めていただき、本選びの参考に」活用していただくためだということで、巷で言われているような冊数の水増しが目的ではないと言うことらしいのですが、今回の『Wikipedia』記事配信に対しては冊数カウント以外の問題もいくつか指摘されているのです。

DRM付き配信はクリエイティブ・コモンズのライセンス違反?

『Wikipedia』の記事は、文章に関しては原則としてクリエイティブ・コモンズ3.0の「CC-BY-SA 3.0」、日本語版では「表示-継承 3.0 非移植」ライセンスが適用されます。このライセンスに基づく利用許諾条件の詳細は『Wikipedia』の解説ページに記載されていますが、要するに「出典がWikipediaであることの表示」と「二次著作物を作成する場合は現著作物と同じ条件で許諾する」という2点が最低条件とされており、この点に関しては著者・発行元の表示を「ウィキペディア」としているので特に問題はありません。しかし、ライセンスの細目部分では以下のように「CC-BY-SA」を適用する場合は技術的保護手段(DRM)によるプロテクションを行ってはならないと定められているのです。

4.制限

前第3節により付与された利用許諾には、明示的に次の制限を伴います。

(中略)

b. あなたは、以下のいずれかのライセンスに基づく限りにおいて、二次的著作物を頒布または公共で発表することができます……(IV) あなたは、二次的著作物の頒布または公共での発表にあたって適用するライセンスによって付与される利用許諾受領者の権利の行使を変更または制限するような 技術的保護手段を用いることはできません。(後略)

(出典URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/Wikipedia:クリエイティブ・コモンズ_表示-継承_3.0_非移植 [リンク]

『koboストア』で無料配信されている『Wikipedia』の人物記事はDRMがかかっており、現状ではこの第4節b項に違反していることは疑いようがありません。

「ISBNコード」と称する架空のコードを生成・付与?

日本に限らず、世界中で商業流通している書籍のほとんどは国際標準図書番号(ISBN)と呼ばれる固有の番号が割り振られています。日本の場合は「978-4-」で始まる13ケタの番号がそれに該当し、日本図書コード管理センターが出版社からの申請に基づき登録した出版社別の番号を設定していますが、同センターのサイト(http://www.isbn-center.jp/ [リンク])で「楽天」を検索してもは「楽天舎書房」や「楽天堂」などの無関係な出版社しかヒットしません。

『koboストア』で配信されている記事では、例えば「芥川龍之介」には「5080000000024」なる番号が割り振られていますが、前述のように日本で発行された書籍は「978-4-」で始まるのでこの番号が正規のISBNでないことは明らかであり、ストア側で擬似的に生成した番号を「ISBNコード」と称して割り振っていたと見ざるを得ません。この「ISBNコード」表示に関しては、指摘を受けてさすがにまずいということになったのか20日になって「商品番号」へ表示が修正されました。

「本選びの参考」にしようにも肝心の作品が見つからない

三木谷社長が今回の人物記事配信について「作家さんの情報や、作品の時代背景などに関する理解も深めていただき、本選びの参考に」活用していただきたいとコメントしているのは良いのですが、当の『koboストア』を検索しても肝心の作品がまだそろっていないことに気付かされます。『青空文庫』(http://www.aozora.gr.jp/ [リンク])からの著作権保護期間を満了した登録作品はまだしも、今なお著作権保護期間内の川端康成や司馬遼太郎、有吉佐和子らの著書は9月20日現在で1冊も登録されていません。

今回の『Wikipedia』人物記事配信は「年内20万冊」と目標を高く設定している『koboストア』が直面している課題を浮き彫りにすると共に、コンテンツを充実させるための一層の努力が求められていることを内外に強く認識させる出来事だったと言えそうです。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「84oca」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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