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『千日の瑠璃』132日目——私はダンプカーだ。(丸山健二小説連載)

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私はダンプカーだ。

闇に乗じてまほろ町の建設現場から盗み出されたばかりの、まったく特徴のないダンプカーだ。私は、これまたどこかで盗まれたらしい乗用車に先導されて街道をひた走りに走り、町中へ差しかかると急に速度を落とされ、のろのろと中心部へ向う。戦闘服に編み上げ靴という物々しいいでたちの男は、慎重にハンドルを握りながら、あたりに気を配っている。彼の緊張がそのまま私に伝わり、彼のろくでもない鼓動が私の振動と重なる。

乗用車からの指示がトランシーバーに入ると私は停止し、次の指示で以て静かに後退を始める。そしてひとたび方向が定まるやいなや、アクセルペダルがいっぱいに踏みこまれる。三階建ての黒いビルがぐんぐん迫ってくる。速度は増すばかりだ。遂に私は荷台のほうから玄関へと突っこみ、鋼鉄の板で補強された扉を押し曲げる。ビル全体が震え、凄じい音が響き渡る。家々の灯りが点いてゆく。運転席から飛び降りて私から離れた男は、乗用車に乗り替える。かれらのクルマは雪道を蛇行しながら逃げて行く。

ほかに何も起きないことが確認されてから、三人のごろつきどもがビルの外へ飛び出してくる。かれらは、私がヘッドライトで照らした、暴力とは一切無縁な、今夜の大気のように青々とした少年を敵と見間違え、慌てて私の下へ潜りこむ。迫るパトカーの音に、少年は猿にそっくりな奇声を発して飛び跳ねる。
(2・9・木)

丸山健二×ガジェット通信

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