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乗らなくても楽しい! 熱気球フェスティバル in ケベック

定刻から1時間遅れた19時、熱気球が飛び立つこの開場付近の風速と風向きが詳細にアナウンスされ、今夜の飛行が可能であることを伝える。

goサインを待っていたクルーたちが動き出す。草原に広げられたバルーンに空気が送り込まれ、色とりどりの球皮が地面を波打ち始める。大型のバーナーが轟音をたててバルーンの中の空気を温める。バルーンは地面からにょきにょきと立ち上がり、思いのほかあっさりと地面を離れ、次々と空に浮かぶ水玉になっていく。一番のりで宙に浮かんだ熱気球は、すっかり小さな点になった。ああ、草の匂いと水っぽいビールが心地いい~!

国際バルーンフェスティバル、毎年40万人の観光客が訪れるカナダ最大級の熱気球のフェスティバルが、カナダのケベック州、サン=ジャン=シュール=リシュリウ(Saint-Jean-sur-Richelieu)で始まっている。

乗らなくても楽しい! 熱気球フェスティバル in ケベック

開催期間中(8月11日~19日)、カナダ、アメリカ、フランス、ブラジル、ケベック州、協賛団体から参加の125の熱気球が一斉に飛び立つ様が、毎日朝晩6時の2回観られる。暖気は冷気より軽いという原理を利用した熱気球が飛ぶためには、バルーン中の空気より外気が冷たくなくてはならない。冬は日中でも飛べるが、夏の飛行となると、早朝か晩に限られるのは、大気が冷たく安定しているからだ。

開場では、予約の上、高度1000フィート程度を30分~1時間ほど飛行することもできる(170カナダ$~)。ゴンドラにはパイロットを含め2~6人が定員。乗る気球は選べず、パイロットが話す言語(フランス語か英語か)も選べない。熱気球は、飛行船などと違い自らの推進力を持たず、風の流れを使って移動するため、飛行時間や飛行経路、ランディング場所をあらかじめ決めることはできない。

そもそも風速12km以上の強風や雨、雷、逆に弱風でも飛行はできない。実際、今夜のフライト予定の18時の段階では、飛行50km圏内に雷雨の発生が確認されていたため、フライトは危ぶまれていた。フランスのモンゴルフィエール兄弟によって18世紀後半に発明されて以来、この、”すべては風まかせ”という熱気球の性質が、移動手段として、乗り物化されなかった理由のようだ。

となると、心配なのが帰り道。自力でもどってこられるのか? パイロットは飛行中、熱気球が着地地点まで追いかけてくる地上クルーと無線通信を使って連絡を取り合い、風向きと高度と風速をみながら、ランディング後の気球回収がしやすいよう、道路にアクセスがよく、すでに土地の所有者の了承を得ているランディング場所をみつける。着地後は、地上クルーが回収した気球の装備とともにスタート地点まで送ってもらえる。バルーンだけで8万カナダ$、ゴンドラが2万カナダ$するという個人所有はちょっと難しい熱気球と距離を縮めるには、車で気球を追う地上クルーのボランティアに参加するのも手だろう。

夏でも朝晩は涼しくなるケベック州では、飛行中は相当寒く感じるのではと思ってみたが、高度が1000フィート上がるごとに大気中の温度は2℃下がる。つまり、地上の気温が20℃なら、1000フィートの飛行では18℃程度で、しかも風と同じ速度で進むので、風を体に感じることはない。

もうひとつ面白いことを聞いた。この熱気球フェスティバルに夫婦で何度も来ているという初老の男性が言う「高所恐怖症の人は、気球は大丈夫なんだよ」という理論。気球は橋や高層ビルのような構造物と違って、地面と接している部分がないから、と言う。この地面との接続がないという事実によって、恐怖心を必要以上に煽る心理作用が働かなくなる、ということなのか?

インフォメーションセンターで聞いてみると、飛行中のゴンドラはほとんど揺れがないことと、地面と接していないことをポイントに、やはり同じようなことを言われた。筆者は、観覧車ほど怖い乗り物はないと思う高所恐怖症だが、確かに、観覧車に乗っているときの恐怖心や意識は、観覧車の構造物に向けられている。ガタッと揺れるたびに、地面に接して高く組み立てられた鉄の枠組やボルト、ゴンドラとの接続部分などに全意識が集中してしまう。同乗者が声を立てて笑っただけで、その振動が観覧車を支えている構造に響くのではないか、という恐怖で、思わず「シーッ!」などと言ってしまうのだ。

乗らなくても楽しい! 熱気球フェスティバル in ケベック
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