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「早く原発潰さないと安心して死ねない」 ルポライター・鎌田慧さん<「どうする?原発」インタビュー第2回>

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原発と闘い続けるルポライター、鎌田慧さん

 40年間、原発と闘ってきた。
 ルポライターとして、1970年から新潟県の柏崎刈羽原子力発電所や愛媛県の伊方原子力発電所などの地元を訪ね、原発がはらむ問題を取材して歩いた。その結論は、「原発はいいとこがないんだよ」。

 事故が起こる何十年も前、福島第一原子力発電所の1号機から4号機までが建つ福島県大熊町も訪ねている。建設反対運動が消え、用地買収がどのように行われていったのか。実際に東京電力へ土地を売った男性に話を聞いた。著書「日本の原発地帯」には、男性の不安がこう書かれている。

<これから、二十年、三十年の間に、事故がないかどうか、そして、人体への影響がないかどうか、そしてつまりは、孫の代になって、原発を受け入れたことが「よかった」と感謝されることになるか、それとも「バカヤロー」と怨まれることになるか>

 杞憂(きゆう)は現実となり、事故は起きてしまった。「反原発運動はこれまでも各地にあって、僕もあちこち取材してルポを書いてきました。しかし、事故が起きてみると、あまり役に立ってなかったことが分かった。反対運動をちゃんとやろうと思った」と鎌田さんは語る。決意から、激動の日々へ。事故直後、10万人規模の集会を開こうと言ったら、周囲に「無理だよ」と笑われた。

 それでも、「さようなら原発5万人集会」の開催を計画。同時に1000万人を目標とする署名活動も始めた。いずれも呼びかけ人には、作家の大江健三郎さんや瀬戸内寂聴さん、音楽家の坂本龍一さんら、そうそうたるメンバーが顔をそろえた。「今までの原発反対運動の反省は、大集会をやろうとしなかったこと。著名な人達と大集会を開けば、マスコミも取りあげるし、運動が広がると思いました」。その狙いは当たり、昨年9月、会場となった東京・明治公園には目標の5万人を超える6万人が集まった。
 
 これまでの反省は、他にもある。「今までの運動は全部、政党と労働組合が作ってきた。一応の形はできるけれど、それ以上は広がらない。原発を潰すにはどうしたらいいのか。少しでも多くの人が参加して、政権を揺るがすという運動をしないと」。鎌田さんは、政党や労働組合の関係者は集会の檀に上げない、労働組合にも旗を掲げて組織を誇示することがないよう依頼した。

・特集「どうする?原発」
http://ch.nicovideo.jp/channel/genpatsu

■普通の人達が17万人集まった

 講演会や集会、デモ。人はどんどん増えていった。署名運動も今年6月には780万筆が集まり、野田首相に提出した。7月16日には、東京・代々木公園で「さようなら原発10万人集会」を開催。世界的に人気の現代美術家、奈良美智さんの絵が掲げられ、大江さんや坂本さんらが檀上に立った。「普通の人達が、17万人も集まりました。なぜか。みんな原発が不安だから。原発に反対する人は今、7割。2割は賛成じゃないけど電力問題が心配という人。賛成する人は1割もいない。絶対に賛成なのは、メーカーや官僚、議員の連中だけ。だからこれは、日本の大多数の運動なんです」

 安保闘争を経験した世代でもある。当時の運動とどう違うのだろうか。「若い人がこんな形で来ることはなかった」と回想する。当時は、労働組合の中央組織である「日本労働組合総評議会」が指揮を執り、全国で動員をかけた。すぐに20万人以上集まったという。組織的ではあるが、誰でも気軽に参加できるデモではなかった。

 「昔からそういうのをやっている僕らは、何か勝手にやったらすぐに逮捕されたから、すごく慎重で、あちこちに連絡して場所を押さえたり、弾圧されないように著名人を集めたりする。そんな時代を知らない若い人達は、勝手にやってますよ。でも、人数が多くなってくると、そうもいかないから、昔からの人達と若い人達が一緒になってやってます。そういう関係は今までなかった。初めてじゃないですかね。いろいろな立場や組織の原発反対の人達が全部来るというのは」

■「原子力絶対体制を若い人達も考えて」

 ここまで運動が広がれば、その影響は大きいとみる。「政治家はぎりぎりとのところまで追いつめられていると思う。昔、原発反対運動は各地域であったけれど、少数だった。原発反対運動に勝ったところは、原発がない。でも、反対運動に負けたところは原発がある。つまり、原発は全部、反対運動から始まっているんです」。そんな経緯を取材をしてきただけに、原発を抱える地域の複雑な事情も知っている。電力会社に土地を売り、雇用された人達は、簡単に「原発反対」とは言えないのだという。

「原子力村なんてもんじゃない。原子力絶対体制と僕は言っている。原発マネーで政府、電力会社、メーカーがつながっていて、日本が最も病んでいる部分。かつての自民党政権は原発優先で、太陽光や地熱発電に予算をやらなかった。でも、原発に代わるエネルギーや産業をきちんと作っていかないと。この問題は、若い人達にも考えてほしい」

 盛夏を前に、政府は福井県の大飯原子力発電所を再稼働させた。鎌田さんはこの夏も休めそうにない。「1000万人を目指す署名のうち、あと残りの220万筆を頑張って集めて、また首相官邸に持っていきます。それから、8月に政府がエネルギー政策を決めるといっている。その結論次第では、また抗議集会をする。首相官邸デモも一緒にやってるから、そこにも集中しないと」

 集会や講演会が近づくと血圧が上がる。夜も「あそこに電話するの忘れてた」と細かいことが気になってゆっくり眠れない。「早く原発潰さないと。安心して死ねないよ」。反原発を掲げて奔走する74歳は、そう笑った。

■鎌田慧(かまた・さとし)

 1938年、青森県生まれ。労働者や公害被害者など社会的弱者の問題を取材、多くのルポを発表してきた。原発の建設が本格化した70年代から各地を精力的に取材、反原発運動に身を投じている。著書に「日本の原発危険地帯」や「反骨 鈴木東民の生涯」(新田次郎文学賞)、「六ヶ所村の記録」(毎日出版文化賞)などがある。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]さようなら原発10万人集会 生中継 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv100058457?po=newsgetnews&ref=news
・[ニコニコ生放送]さようなら原発1000万人アクション~脱原発・持続可能で平和な社会を目指して~ – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv63923219?po=newsgetnews&ref=news
・[ニコニコ生放送]「さようなら原発」福島みずほ×鎌田慧ニコ生対談 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv66495726?po=newsgetnews&ref=news
・特集「どうする?原発」
http://ch.nicovideo.jp/channel/genpatsu

(猪谷千香)

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