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つながりのジャーナリズム 寺島英弥さんとの対話 第4回「幻想のハッピーエンドなんて誰も信じていない」

つながり4

この記事は藤代裕之さんのブログ『ガ島通信』からご寄稿いただきました。

つながりのジャーナリズム 寺島英弥さんとの対話 第4回「幻想のハッピーエンドなんて誰も信じていない」

当事者が引き裂かれていく中で、地方紙記者の役割を「他の世界とつなぐ」ことに見いだした河北新報の編集委員寺島英弥さん。東日本大震災による影響で新聞発行が危ぶまれる中で、ブログの扱いは「ベルリンの検問所のバーが突然上がった」ようになり、寺島さんは狭い「新聞盆地」を飛び出し、ブログで東北の様子を首都圏や全国の人に届けた。
ソーシャルメディアによって誰もが情報発信できるようになる中で、地方紙記者は当事者とやり取りをする中で、新しいつながりを生み、希望を紡ぐ。

つながりのジャーナリズム 寺島英弥さんとの対話 第4回「幻想のハッピーエンドなんて誰も信じていない」

第1回「暗闇の中でブログがつながった」*1
第2回「新聞原稿でもルポでもない文章と引き裂かれる当事者」*2
第3回「地方紙の記者は新聞盆地の住人だった」*3

*1:「つながりのジャーナリズム 寺島英弥さんとの対話 第1回「暗闇の中でブログがつながった」」2012年5月12日『ガ島通信』
http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20120512/1336846906
*2:「つながりのジャーナリズム 寺島英弥さんとの対話 第2回「新聞原稿でもルポでもない文章と引き裂かれる当事者」」2012年5月13日『ガ島通信』
http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20120513/1336920611
*3:「つながりのジャーナリズム 寺島英弥さんとの対話 第3回「地方紙の記者は新聞盆地の住人だった」」2012年5月16日『ガ島通信』
http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20120516/1337098977

寺島:伝えたい。だけどいろいろ壁にぶちあたっている記者もたくさんいるわけで。震災報道は、終わりのないマラソンみたいなものなので、その中で疲れ切っていく。自分達も希望が欲しいというのは、みんなで話し合ったということがあるわけではないんですよね。それが報酬みたいなものになっている。
藤代:希望が。
寺島:希望があるんですね。
藤代:僕はすごく嫌なんですね。地域に希望を見いだそうというキャンペーンが…
寺島:地域に希望という…
藤代:なんというか、希望を見いだすことが目的化する記事があるじゃないですか。地域を活性化させようとか。

■希望や地域活性化が目的化する記事

寺島:たいてい自己満足ですよね。宣伝みたいな。
藤代:そう。宣伝みたいな。
でも、寺島さんの記事はそうではないと思うんです。被災地は苦しいけれども、被災地で起きていることは現実を顕にしただけじゃないでしょうか。どの地方だって、人口は減って、若い人も減って、地域産業は苦しい。東京からのお金に頼って、自立が難しい。それが被災地で顕在化しているに過ぎないと思うんですよね。そして、地域を応援するキャンペーンをやる地方紙ででてくる。それって非常にうさんくさい。
寺島:まあ、伝統技ですけどね。
藤代:そう。地方紙のお約束。でも、寺島さんもこれまでのキャンペーンと同じような話をしていると思うんですよ。でも、どこが違うんですかね。
寺島:先が見えない。先が分からないんですよ。ハッピーエンドがあるわけではなくて。幻想のハッピーエンドなんて誰も信じていないし、最悪のことをみんな胸に秘めながら会話をしているんですよね。それを口にしないまでもですね。もう故郷に戻れないんじゃないかとか、あの子はもう帰ってこないんだとか…
最悪のことを経験したり、最悪のことを思いながら、だけど口にせずに向きあってるのが、今の状況だと思うんですね。だから幻想のハッピーエンドなんてまずあり得ないし。そんな先の希望なんて誰にも示せない。自分のことすらわからないんですからね。
だから、その日その日の希望だと思うんですよね。ちっちゃなろうそくの火みたいなもの。共同幻想としての希望なんてものはたぶん誰も信じていない。それぞれに置かれた状況がもうあまりにも違うし、家が残った人、流された人、放射線量の関係で家に帰れる人、帰れない人とかね。だけど欲しい。
藤代:そうですね。
寺島:だから今までのような地域キャンペーンのようなあり方ではないんですね。
藤代:でも、なんかたぶん本当はそうだったんじゃないかなあって思うんですよ。僕の故郷の徳島でも、島根や鳥取でも。口には出さないけれど、この地域が終わりだなと思っている人いるような気がするんです。
寺島:ああ、なるほど。
藤代:だから、これまでの新聞の地域おこしキャンペーンのような安易な答えを出すことが軽いというか、説得力がなくなってきている。寺島さんの言葉が胸に響くのは、被災地の人だけ響いているわけではないと思うんです。多くの人が反応して、東京の人も読んでくれる。
僕が思うのは、誰しもが幻想のハッピーエンドなんてないって分かっている。だけど、小さなその希望がないと心が折れてしまう。

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