あえて“トンデモ本”を読む人たちの集団とは?

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 日本では、年間なんと9万点もの書籍が出版されているそうです。その中から自分に合った本を選ぶのは本好きの楽しみだといえますが、「失敗した」と感じることも少なからずあるはず。単に自分の感性に合わなかっただけならまだしも、論理の裏付けがいい加減だったり、内容が支離滅裂だったりするとガックリきてしまいます。
 しかし世の中には、あえて“トンデモ本”を読んで楽しむ人たちの集まりが存在しました。その名も「と学会」。今回は、「と学会」会員の桜井信二さんにお話を聞いてみました。

 ◇  ◇  ◇

―「と学会」とはどのような集団なのでしょうか。

桜井「もともとは謎の読書集団というか、本好きが集まって各々が見つけた“著者の誤解、知識不足、調査不足のせいで、本来の意図とは異なった視点から読んで楽しめるようになってしまった本”、要は面白い、変な本を紹介し合う集まりだったんですね。それこそ喫茶店の一角に陣取って(笑)。で、それらの本を我々は“トンデモ本”と呼んでいまして、創設から20年経った今では、定期的に集まって“トンデモ本”を中心に紹介しながら談話する集団となっていますね。1997年からは『と学会年鑑』という例会で発表されたネタをまとめた本の出版も行っています。…まあ、最近は滞りがちですが(笑)」

―では、正式名称は「トンデモ本学会」なのでしょうか。

桜井「いえ、正式名称で「と学会」です。創設時にパロディとして「学会」を名乗ろうということになりまして、頭に何を付けると一番間抜けかとなったときに、トンデモなものを総称して呼んでいた「と」を頭につけたんです。そうして、「と学会」になりました。…のハズです。何せこんなに長く続くとは誰も思っていなかったので、みんな記憶があいまいなんですよね(笑)」

―著者や出版社から抗議が来たことはありましたか。

桜井「今のところ抗議が来たことはないですね。“再批判”のような形で、どこかの紙上で書かれたことはありましたが、直接言われることはありませんでしたね」

―「トンデモ本」の定義とはどのようなものでしょうか。

桜井「先にも述べましたが、“著者の誤解、知識不足、調査不足のせいで、本来の意図とは異なった視点から読んで楽しめる本”ということですね。誤解されがちなんですけど、本や著者を糾弾したいわけではなく、あくまで“笑い飛ばそう”という気持ちが根っこにあるんです。一時、代替医療が新聞紙上を騒がせたことがありましたが、代替医療自体が問題だとは思いません。代替医療やスピリチュアルな方法論で、実際に体調不良が治る方もいるわけですから。まあ、そういう場合、ストレスが原因なことが多いんですけど(笑)。ただ一方で、金銭面や精神面、健康面の被害を受けている方がいることも事実で。ですから我々は、“その理論には科学的根拠はありませんよ”“自然科学の法則上、そうなることはありませんよ”と根拠立てて説明しているわけです。ただ、“そこまで分かった上で信じるならば、あとはアナタの自由ですから、とやかくいうつもりはありません”というスタンスですね。とはいえ、代替医療やスピリチュアルだけに偏ってしまうと問題が起きることもあるので、西洋医療や現代科学にも耳を傾けつつ、バランスを取ることが大事だとは思いますが」

―例会はどのような雰囲気なのでしょうか。

桜井「今のような難しい話をすることは全くなく(笑)、公民館などの会議室を借りて、前に発表者が立って“これが、私が見つけた変なネタです!”と発表するんです。それを見て出席した会員がゲラゲラ笑うという、大学生サークルよりぬるい雰囲気ですね(笑)。どちらかというと落語の寄席に近いかもしれません」

―本好きにはとても楽しそうですね。どうやったら「と学会」に入会できるのでしょうか。

桜井「年4回開かれている例会に、ゲストとして参加してもらい、そこで“トンデモ本”、もしくは“トンデモな物件”を発表してもらうことになります。その発表がウケて、会員2名以上の推薦を受けることができれば、晴れて会員になれるわけですね。でも、ゲストとして参加するにも既存会員の紹介が必要になりますので、一見さんがポンと入れるものでもないんです。だから会員の高齢化とか、女性不足が現在深刻な問題となっています(笑)。結構ハードルが高い上に、会員になったところで酔狂なオヤジたちと知り合えるぐらいしかメリットがありませんから、しょうがないといえばしょうがないんですけどね(笑)」

 一度読んで面白くなかった本でも、視点を変えると別の楽しみ方ができるかもしれません。とても楽しそうな「と学会」が年に1度開催している、前年の出版物の中から最もトンデモな本を決めるイベント「第21回日本トンデモ本大賞」の模様は、ニコニコ生放送(http://live.nicovideo.jp/watch/lv91347889)で見ることができるそうです。

(Podcast番組「新刊ラジオ第2部@プレミアム」今週のスゴい人のコーナーより)



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