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【Interview】高齢者の運動能力を適切に評価!医療機関との共同開発によるアプリ「iTUG」を追う

人間の体は、年を重ねるごとに弱っていく。特に難儀になるのが、歩くという行為。筋力の低下や視力の衰えなど、さまざま要因が重なり、バランスを保ちにくくなる。転倒の確率も高まり、思わぬ事故につながるケースもあるという。

そうしたリスクを避けるために必要なのが、運動能力の評価。これを適切に行えば、早期治療・介入が必要な高齢者を発見し、要介護の危険性を回避することが可能となる。「iTUG」は、そのために生まれたアプリ。ひとりでも多くの人に、長く自立した生活を送ってもらうため、医療機関との共同開発によって誕生した。

提供元は、2012年設立のデジタル・スタンダード。システム本部、取締役部長、青柳幸彦(あおやぎ ゆきひこ)氏と、システム本部、池端 美貴(いけばた みき)氏が、取材に応じてくれた。(4番目の写真が青柳氏)

・TUG(Timed up and go)テストが簡単に行えるアプリ

Q1:「 iTUG」とは、どんなアプリなのでしょうか。詳細について、あらためて教えてください。

(池端氏)“歩行を含めた機能的移動能力の定量的な評価”として、「Timed up and go」テスト(以下TUG)ができるアプリです。

iTUGのiは、Instrumented 、つまり、計器での測定を意味しています。TUGは、1991年にPodsiadlo博士が考案した検査で、椅子に座った状態から、スタートの合図で起立し、 3メートルまっすぐに歩き、Uターンして、再び3メートル歩いて戻り、椅子に座るまでのタイム(秒数)を計測します。

これまでのTUGは、タイムしか測れませんでしたが、スマートフォン内蔵の加速度センサーを使用することで、TUGのタイムだけではなく、測定中の3方向への加速度も、記録できるようになりました。

今回の研究で、この加速度の95パーセント信頼楕円体体積が、運動の評価に重要であることがわかりました。アプリでは、運動能力の評価として、タイムと体積を組み合わせた“iTUGスコア”を計算して、結果を表示します。

Q2:本アプリは、どのような場面で役に立つのでしょうか。また、これを使うことでユーザーは、どのようなメリットを得られるのでしょうか。

(池端氏)今回の研究は、特発性正常圧水頭症(iNPH)という病気から始まりました。iNPHは、歩行障害・認知症・尿失禁の3つが主症状とされ、三徴候と呼ばれています。TUGのタイムは、特に重要な症状である歩行障害に非常に有用なため、利用されています。(中略)

TUGは、転倒リスク評価としても広く知られていたテストですが、やはり、その秒数だけでは不十分です。しかし、“iTUGスコア”なら、iNPHの診察時の利用だけではなく、医療・介護現場での歩行を含めた機能的移動能力の定量的な評価が可能です。

さらに、入院・入所時の転倒リスク評価、介護サービスのリハビリ効果を観察するツールとしても、有用と考えます。

・手探りでの開発、紆余曲折を経て完成

Q3:医療機関との共同開発において、最も苦労したのはどのようなところでしょうか。

(青柳氏)スマートフォンアプリでの医工連携の取り組みは新しく、さまざまな点において、手探りでの開発となりました。

先生方の論文発表のタイミングと、弊社アプリの発表を二人三脚で進めていく必要がありましたので、先生方とは診察などで多忙な中、何度も連絡のやり取りをしました。

洛和会ヘルスケアシステム・洛和会音羽病院、洛和ヴィライリオスの先生方や理学療法士の皆さま、そして何よりも、患者さんや利用者の方々に、多大な協力をいただきました。大変感謝しております。

Q4:今後の展開について、教えてください。

(青柳氏)現在、シリーズのルーツとなる「ハカロ-hacaro-」を開発中で、近日中にリリースを予定しています。これには、TUGだけでなく、反応速度を測る種目や、身体の揺れを測る種目なども搭載しており、すべての結果をまとめた“評価シート”を印刷することもできます。

超高齢社会となる今、要介護・要支援高齢者をどう支援していくのか、そして要介護・要支援にならないために、という点において、体力・運動能力の測定は、非常に重要と考えます。(中略)

今後も“ハカロ-hacaro-シリーズ”は、多くの世代、そして地域格差をなくすため、スマートフォンでの体力測定にこだわり、開発を行ってまいります。

この研究結果は、国際誌“Aging and Disease”のオンライン版にも、掲載されたという。開発側の努力と、多くの人々の協力が結実した本アプリ。ダウンロードは、無料。App Storeから、入手できる。(取材・文 乾 雅美)

ハカロシリーズ iTUG

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