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夜盲症の私に光をもたらす HOYA MW10 HiKARI の購入者レビュー

暗い場所や夜に物が見づらい「夜盲症」の人のために光学機器メーカーの HOYA が開発した暗所視支援メガネ「HOYA MW10 HiKARI」のレビューをお送りします。
記事全文は 1 万字を超える長い文章になってしまいましたので、まず先に簡単な結論を書きます。
MW10 は、「暗い場所で物が見える」、こういった触れ込みで少し話題になっていましたが、その能力は私が期待したよりもずっと上をいくものだったので、製品本来の目的である、「夜盲症の人の暗いところでの見え方を改善する」ことについては、まさにその通りだと評価しています。
しかし、MW10 はあくまでもカメラを活用した電子デバイスにしか過ぎず、カメラ性能の限界とでも言いましょうか、映像の遅延やブレ、ノイズといったカメラ特有の現象が微々たるものとは言えど必ず発生し、それは「視野が狭い」と「肉眼とカメラ映像には多少のズレが生じる」という 2 つの理由から行動できる範囲は限定的のため、MW10 が活躍する場面は思いの外、少ないのです。
おそらく、 夜盲症を持つほぼ全ての人は MW10 の明るい見え方を絶賛すると思いますが、上記の理由から、だからといってそれが必ずしも生活の全てにおいて役に立つわけではなく、中には不必要だと思う人がいるはず。
もしそういう人が MW10 を購入したとしても、使う機会が少ないので放置されるのが関の山。
MW10 は決して安い買い物ではないので、不必要だった場合には後悔しかねません。
そうならないように購入を検討している方へのアドバイスとして、欲しいかどうかよりも、必要かどうかを判断の基準にすることを強くおすすめします。
基準の考え方は記事の本編で詳しく説明しています。
ただ一つ言えることがあります。
それは、MW10 を試す価値は十分高いことです。
それも実際の生活の中で試用するのが一番望ましいのですが、MW10 を体験できる場所は取扱のメガネ店や眼科だったり、ロービジョン系のイベントしかなく中々難しい。
それでも極力、MW10 を使うことになりそうな場面を思い浮かべて見え方の差をイメージしてみると、MW10 が必要か不要かをその人なりに判断できると思います。
記事の序盤は製品の詳しい説明を記載しており、後半で実際の見え方や Q&A 形式の実態、開発秘話を紹介します。

【MW10 について】

「暗い所で物が見える」、MW10 がまるで漫画やアニメ、SF 映画にしか登場しない魔法のアイテムのように受け止めている方は少なくないと思いますが、MW10 というのは、超高感度カメラで捉えた映像をレンズに内蔵された小さなスクリーンに投影し、それを肉眼で見ることで暗い場所でも周囲の物や風景がとても明るく見える、そういったウェアラブルデバイスになります。
レンズ内のスクリーンに情報が映るという仕組みにおいては、他のヘッドマウントディスプレイや Google Glass のような AR メガネと似ています。
次の写真が MW10 の全体像になります。
これ見て多くの方は、「コントローラーやケーブルって邪魔じゃない? ケーブルじゃなくてワイヤレスにするかメガネ部分に集約すれば良かったのに」とお考えになることでしょう。
私も正直なところ同じ意見です。
また、それが暗所視支援メガネという製品の進むべき道でもあると思っています。
しかし、こう見えても MW10 のデザインが決定していく過程においては、様々な部分で合理的な判断が下されており、それを一つひとつ見ていくと、今のかたちが現時点における、「暗所視支援メガネ」という枠の中では最良のデザインだと理解してもらえるはずです。
私も MW10 開発陣へのインタビューを通じて製品に対する見方を大きく変えました。
この部分を詳しくお話していきます。
MW10 は暗所視支援メガネとして、ユーザーに極力負荷がかからない装着感、リアルな映像質感、風景と映像の同時性、実用的な使用時間を考えてこうした形に仕上がりました。
頭に装着するメガネユニットですが、この部分にはカメラ、プロジェクター、スクリーンといった電子部品が組み込まれており、これに映像処理用の回路やバッテリーを積載すると、とんでもなく重たくなってしまうでしょう。
MW10 は生活の中で使用するものですから、メガネユニットはできるだけ軽い方が良い。
そういう理由から処理回路やバッテリーは外部で設けることになりました。
実は、メガネユニットの質量は約 130g しかないのです。
VR ゴーグルの中でも最軽量クラスの「Daydream View」でさえ 261g もありますから、MW10 がいかに軽量なのかがお分かりになるはずです。
そしてただ軽いというだけでは駄目です。
MW10 では装着性も重要です。
頭に負担がかからないよう荷重バランスを調整したパーツ配置を採用しているだけでなく、頭部を側面から覆う太めのヘッドバンドもそうした配慮から採用されています。
コントローラーについては、重さは 350g とスマホの約二台分もあります。
もう少しコンパクトで軽くしたほうが良いと思ってしまいますが、中身の大部分はバッテリーや映像処理に必要な回路基板で占めており、バッテリーは約 4 時間の連続駆動を確保するために 2,450mAh と多めに設けられています。
また、落下や衝撃への耐久性、防滴への適合を考慮し、外装も比較的厚くしてあります。
そのため、小型化すると駆動時間や耐久性の低下に繋がり、おそらくそれは暗所視支援メガネとしては良くない方向性だと思います。
ワイヤレス化は私も必須だろうと思いますが、ワイヤレス化するとメガネユニット側に余分の回路や少量でもバッテリーの搭載が必要になってくるので避けるべき。
また、映像を伝送する仕組みを見ていくとケーブル接続で正解だと思うはずです。
映像データはメガネユニットとコントローラーを一往復するので、もしワイヤレス接続だと遅延が増大してしまい表示が遅延しているとはっきりわかる見え方になるでしょう。
遅延は有線接続でも発生し得ることですが、MW10 のケーブルは映像の遅延を最小限に抑えられるようにと、少なくとも USB より高速なインタフェースを採用しています。
ちなみに MW10 のバッテリーには小さいながらも高い電圧を出せて、丸みを帯びた形状により衝撃を逃がす効果も期待できるリチウムイオン電池 18650A が使用されています。
MW10 の両レンズは黄色いですよね。
これは遮光レンズとなっており、スクリーンを OFF にしている時には遮光メガネ(サングラスの一種)として機能します。
こうしたのはロービジョンの方を配慮したからなのですが、たとえスクリーンが切れた時でも風景が視界に入ってくるようにするためでもあります。
ちなみに、遮光レンズの色は購入時に選択できます。
私の MW10 はレチネックスです。
ガジェット好きの方に向けて、一部のスペックをご紹介します。
カメラの画素数は 120 万画素と少ないのですが、ピクセルサイズはスマホカメラ用イメージセンサーよりも数倍大きいので、上げられる感度が数桁というオーダーで大きく違います。
また、スクリーンは半透明タイプの 0.43 インチ有機 EL で、解像度は 1,280 x 720 ピクセルになります。
カメラの映像は 23 度の画角で映る仕組みです。

【MW10 の使い方】

メガネユニットを普通の矯正メガネと同じようにして頭部に装着し、コントローラーの電源ボタンを押すと映像が映ります。
利用の開始方法はこれだけです。
コントローラーには、スクリーンの明るさと大きさ(倍率)、色調を変更できるボタンがあり、ユーザーの見え方に合わせてこれらを調節できるようになっています。
MW10 の映像は基本的に「等倍」、つまり物や風景は実際と同じ距離感で映りますが、ユーザーの視力や視野の残り方に合わせて大きくしたり小さく(近づけけたり遠ざけたり)することもできます。
バッテリーの持続時間は、スクリーンの明るさが 80% の時に約 4 時間持つよう設計されていますが、私はいつも半分の明るさ(50%)で十分なので、この明るさだと駆動時間は約 5 時間に延びます。
明るさ 100% は私にとっては明るすぎるので、明るさを上げることはほとんどありません。

【私の眼のスペック】

あれこれ語る前に、まずは MW10 を評価する私自身の眼のスペックを明らかにしておきましょう。
私は生まれつき、「網膜色素変性症」という病気を患っており、その症状の一つに夜盲症があります。
障害者手帳で言うと視野障害 2 級です。
また最近では、矯正しても視力が出なくなってきているので、この病気の患者の中で深刻度を表すとすれば、平均よりも少し悪い、といったレベルになると思います。
私の場合、例えば映画館や、オシャレなレストランやバーといった暗い場所はほぼ真っ暗な状態で見えるので、座席やテーブル、人を探すのは不可能に近い。
症状がまだそれほど進行していなかった学生時代には、二輪と四輪の運転免許を取得していますが、今では運転をやめており、取得した当時からも、「夜間の運転なんて絶対に無理」というのが暗い場所での私の見え方です。
今は、生活圏の外に外出する際には、必ず白杖を持ち歩いています。
私と同じ病気の方なら今の説明で暗いところでの私の見え方が大体お分かりになるはずです。
本記事ではこのような見え方の私が MW10 を使用してどうだったのかを公平な視点でお伝えしていきます。
本記事に掲載している MW10 の写真は一般の方と同様に身銭を切って購入した商品を使用しています。
MW10 の開発メーカーである HOYA からは情報提供の面で多大なご協力をいただきましたが、金銭面の援助は一切受けておりません。
それは同じ病気を患っている仲間たちや、身近に夜盲症の人が居て、何とかしてあげたいと思っている方たちに向けて、世にも稀な MW10 が実生活において使える製品なのかどうかや駄目なところ、購入する時には何に気をつければ良いのかを率直にお伝えしたかったからです。
事実 MW10 を購入して正解でした。
それは、事前の取材時やイベント会場で試用した程度では MW10 の真価を見出だせなかったからです。
自分の生活圏でじっくり試し、身体に染み付いた身近な場所での見え方と比較しないと、MW10 によって物の見え方がどのように変わるのかや行動への影響は絶対に実感できません。
生活圏で使用すると、MW10 で見えるようになる部分がいくつも出てきます。
それは膨大な数に及び、そうした発見を積み重ねていくことや、製品の限界を知ることでしか MW10 の価値は語れないと思います。

【MW10 の明るさ】

長々と書きましたが、次に本記事で最も重要な実際の見え方を説明します。
まずは MW10 のスクリーンをカメラで撮影した写真です。
照明がとても少ないレストランで撮影夜の歩道いかがでしょうか? 私だったら身動きを取るが辛いと感じる暗い場所や夜道では、周囲の物がはっきりと認識できるほどまで明るく見えました。
写真の明るい部分(スクリーン部分)はかなり小さく見えますが、これはカメラをかざして撮影したからで、実際にはスクリーンを間近で見るのでもう少し大きな表示になります。
また、イメージしやすいように生活している中で遭遇するシーンでの MW10 の見え方を箇条書きでお伝えします。
■ 暗室(窓の無いトイレ内)外部の光が全く無いので、MW10 にも何も映りません(これは予想通りです)。
■ 電気を消した夕方の自室まるで蛍光灯を点けているかのように見える。
さらに白いテーブルが普段よりも白く見えて、ある種のショックを覚えた。
■ 夜道全体がライトアップされているかのごとく明るく見える。
街灯が点在しているだけの環境でも、建物や道路、人影(照明の条件が良ければ顔まで見える)、自動車など、スクリーンに映るもの全てが把握できる。
しかし、遠くに見える街灯の真下やその付近はカメラの感度が良すぎるためか、白飛びして見づらいこともあるが、街灯に接近していくに連れてその明るさは徐々に下がり程よい状態になる。
■ 小さな窓しかない倉庫で照明を切っている時倉庫内の荷物の配置や個数、形状、色が分かる。
電気を点けなくても中を移動し、自分で荷物を運べる。
■ 居酒屋お箸やコップの位置、料理の色や形状、器のデザイン、対面の人の顔、レジ前で開いた自分の財布の中身がだいたい分かる。
■ 車の助手席2 ~ 3 倍程度明るくしたドライブレコーダーの映像を見ている感じ。
■ 夜空雲の有無や形状、雲影が分かる。
空中を通っている電線の本数を数えられる。
月以外の星が普通に見える。
北斗七星の全ての星がはっきりと見えた。
飛行機の機影が見える。
■ 高台からの眺望遠くに見える都市部が煌々と輝いている。
建物と空の境目が分かる。
いずれにも共通して言えることは、「物をまるで昼間と同じように捉えることができて、普段は見えなかった物や風景が見えた」ことです。
実機テストを行い私が一番感動したのは、夜空を眺めている時に雲の存在や形が分かったことでした。
晴眼者の方にとって夜空の雲は普通にご覧になれるでしょうが、恥ずかしなら私がそうした光景を自分の視界で見たのは MW10 を使った時が人生初なのです。
MW10 はこのような様々な「初体験」を提供してくれる製品とも言えます。
せっかく MW10 が手元にあるので、青眼者である私の家族に MW10 を使わせて夜盲症ではない人の見え方を聞いてみました。
すると、「まるで昼間のように明るい」や「明るさを何倍かで言うと、たぶん 8 ~ 10 倍は明るいだろう」と予想外の感想を聞かせてくれました。
MW10 が捉える映像の明るさは青眼者の眼を超えているようです。
しかしこの性能はあくまでも「明るさ」だけの話であって、一般のメガネのように視界全体の見え方が良くなるとか、そういう訳ではありません。
MW10 の謳い文句にある、「見えない所が見える」は実機テストを通じてその通りだと私は評価しており、その点においては MW10 を絶賛しますが、人間というは欲張りなもので無い物ねだりをしてしまいます。
「こうしたらもっと良いのではないか?」という要望が次々に浮かんでくるのです。
言い換えると、MW10 の性能は確かに凄いけど、私が求めている「究極的な実用レベル」にはまだ達していません。
それでも、世界的に見て MW10 のような夜盲症の人のための暗所視支援メガネが実際に発売され自分のものにできるのは世界初のことになるので、現在はそうした枠の中で MW10 を評価してあげないと可哀想です。
ちなみに、私の考える究極的な実用レベルとは、サングラス程度の大きさで、明るく見える範囲は矯正メガネと同じ、画質や奥行き感も肉眼と遜色ないレベルになります。

【MW10 の実態と凄さの秘密】

ここからはそうした改善点を含む MW10 の実態に触れていきたいと思います。
まずは、私が大絶賛した映像の明るさの秘密からです。
MW10 がいくら凄いと言っても、こう思いませんか? 「明るく見えればいいなら、スマホカメラをかざせばいいじゃん」。
確かに、物や風景を明るい映像で見ることにおいては両者同じことですが、添付のサンプル写真のような明るい絵はおそらくどのスマホでも今は出せないでしょう。
比較する以前に、そもそもの明るさレベル、つまり上げられるイメージセンサーの感度に大きな差があるのです。
重要なことは、「ほとんど真っ暗な状態でも映像は明るくてスムーズ」だということです。
スマホカメラは真っ暗な時だと露光量を稼ぐために映像のフレームレートを下げたりしますが、MW10 のカメラはそもそも感度が高いので、映像のフレームレートを下げことなく真っ暗でも明るくて滑らかにできるのです。
ここがスマホカメラと決定的に違うところになります。
もう一つの重要なポイントは「色の再現性」です。
MW10 では、たとえほとんど光のない暗い場所でもフルカラーで表示されるように映像を処理しています。
それはスマホのカメラで美しい夜景を撮影したときのようにカラフルです。
カメラ製品である以上はノイズにも触れなければなりません。
MW10 にも暗い場所で使用する時には映像ノイズが出ます。
もちろん MW10 ではノイズリダクションをかけているので、ノイズは最小限に抑えられていますが、それでも夜空を見上げるとノイズがはっきりと見えます。
これはカメラ製品である以上、もはや仕方のない部分だと言えます。
MW10 のカメラやスクリーンのスペックを見ても分かるように、映像は HD 解像度でしか見れません。
そのため、スマホで一般的なフル HD や 4K よりも映像は粗いです。
しかし、そもそも MW10 の映像というのは物や周囲を認識できれば良いので、もちろん画質が良いことに越したことはありませんが、映像作品のようにくっきりと鮮明だったり芸術的な美しさでは MW10 の映像には必要ありません。
これまでは主に、夜間の屋外といった比較的暗い場所での見え方をお伝えしてきましたが、実は、MW10 は照明を点けている室内でも効果が現れます。
例えば、照明が点いている室内でも裸眼で暗いと感じるような方なら、MW10 越しにテレビを見ると、映像は裸眼よりも明るくて綺麗に見えることがあります。
それはテレビだけでなく、部屋全体に言えることです。
しかしこの効果は人によって起こりうることでして、全ての人に言えるわけではありません。
もう少し脱線しますが、MW10 の技術的な部分を少しお話します。
私は MW10 の存在を知って HOYA へ MW10 の体験や開発に携わっている方へのインタビューを申し込みました。
そして MW10 の開発プロジェクトの方たちとの接触に成功。
数時間にわたるインタビューを敢行し、その中で MW10 の技術的な部分から開発のきっかけ、発売までの道のり等をお聞かせいただきました。
非公開の情報については当ブログでも明かしませんが、開発陣に話しを伺う限り、MW10 の肝は何と言っても「カメラ」と「ファームウェア」なんだろうと感じました。
もちろん製品化にあたっては一切妥協せずに取り組んでおられます。
開発陣の一人は、「夜盲症で悩んでおられる方にとって、本当に役に立つモノに仕上げたかった」と語り、それは MW10 の開発をスタートさせてから製品化までに 8 回もの試作機作り替えを経ているところを見ても伺い知ることができます。
一言に「小型の超高感度カメラ」といっても、MW10 のカメラはメガネ部分に取り付けるものなので、できるだけ小型でなければなりません。
HOYA はスマートフォンなどで使用されているサイズと同程度のイメージセンサーを MW10 で採用していますが、イメージセンサーのピクセルサイズ(画素一つひとつの大きさ)はスマートフォン用イメージセンサーのなんと数倍とも言われているのです。
どおりで映像がとても明るいわけです。
また、レンズは人間の見え方を再現できるようにと HOYA で完全に独自開発されたものを使用しており、他にもカメラユニット、基板上の回路、プロジェクター、スクリーンを繋ぐインタフェースの設計やデバイスドライバなども MW10 に合わせて独自に開発しています。
見た目では分からない部分に相当拘っているようでした。
HOYA は何もカメラの性能や映像の画質にだけ拘っているのではありません。
私のような目の悪い人が日常的に使用することを念頭に置いた製品作りもしています。
先程も少しお話しましたが、例えば、MW10 のレンズには遮光レンズを取り付けるすることで、カメラの映像が切れた時や昼間には遮光メガネとして使用できるようにしています。
また、強い光を受けた際に映像が不鮮明になる「ハレーション」を起きにくいようにと様々なシチュエーションで光の受け方を研究し調整しており、日頃の生活の中での利便性も配慮しています。
ちなみに MW10 越しに太陽を直接見てもほとんど眩しくありません。
カメラ映像はそうした部分にも対応できるようになっているのです。
ここまで述べた様々な開発努力によって、MW10 では太陽光や照明があまり無い場所でも、遅延がほとんど無く、しかもフルカラーで鮮やかな映像をユーザーに提供しています。

【MW10 についてよくある質問】

ここまでの説明で MW10 が私を満足させる性能を発揮していることがお分かりになったと思います。
ここからは Q&A 形式で製品の実態に触れていきたいと思います。
■ MW10 を使用すれば夜間のランニングや車の運転も可能?MW10 のカメラ映像はレンズ内の小さなスクリーンにしか映らず、夜間、スクリーン以外の部分は基本的に真っ暗な状態です。
視野が狭いのでそのままでは左右の状況を認識しづらく、激しい運動や高速な移動には適さないと考えています。
そもそも メーカーが想定し公言もしている MW10 の実用範囲は「室内での軽作業や夜間の歩行」までです。
MW10 を使えば行動までも自由になるとは期待しない方が良いです。
■ MW10 を使用すれば補助者が傍にいなくても行動できる?MW10 に行動を完全に自由にするほどの能力はないと私は考えています。
普段の行動で補助者を帯同させている方なら、MW10 を使ったとしてもそれは変わらないと思いますが、見えているかどうかが大きく違ってきます。
ここは重要なところです。
ガイドされているにしろ、MW10 が無ければ周囲はほとんど見えませんが、MW10 を着用していると、やはりガイドはしてもらっているものの、周辺も普通に見えているので、行動の質がずっと良くなるはずです。
そういった意味で考えると、夜間外出することは多いけど、いつもガイドさんと共に行動している方にとって、見る風景は MW10 によって明るく見られるようになり、生活がより豊かになる可能性を秘めていると言えます。
■ MW10 は仕事に使える?多分無理です。
まず MW10 は業務用の製品ではありません。
これを踏まえた上で、前の項目でも触れていますが、MW10 を使用中は視界が狭まりますし、肉眼と映像の差の影響もあって俊敏な動きにが満足にこなせません。
こうした理由から MW10 は仕事での利用には不向きだと考えます。
もちろん、ユーザーの見え方や業務内容など、様々な要因が絡んでいるので、一概に MW10 が仕事に使えないとは言い切れません。
■ MW10 を着けたまま生活を送れる?そもそもコントローラーやケーブルが邪魔ですし、バッテリー駆動なので度々充電が必要です。
それに、PC やスマホがこなせる程度の視力をお持ちなら、MW10 の必要性を感じるのは暗所や夜道くらいで、それ以外は不要だと考えるでしょう。
また、スクリーンの位置やサイズといった MW10 の仕様を考慮しても不向きだとお分かりになるはずです。
例えば、私たちは普段、手元を見るのに目線を下げますが、MW10 を装着した状態で同じ動作をとると、目線がスクリーンからそれます。
頭を大きく下に向けると手元は確認できますが、身に染み付いた仕草なので違和感は拭えません。
こうした理由から MW10 を着けたまま普段の生活を送るのは難しいと考えます。
もちろん慣れである程度は緩和するはずです。
■ では通勤や通学でなら使える?MW10 の映像は明るいので、おそらく「試してみようかな」と思うはずです。
それでも普段と同じように、周囲に気を配りながらゆっくりと歩く形になると思います。
■ 私は全盲に近い見え方なのだが、MW10 を買って意味はある?眼の状態や見え方は人それぞれ千差万別です。
あくまでも私の視点として考えると、スクリーンの映像を自分の視力を使って見る必要があるため、全盲かそれに限りなく違い見え方だと効果は得にくいと思います。
しかし、視力はまだ残っているけど昼間でさえも暗くて見づらい、そういう方なら効果は大きいと思います。
最終的に MW10 の適合性は専門の眼科医が診察して判断することになっていますが、私が考える適合基準を挙げるとすれば、PC やスマホ、テレビの画面を見てその内容が大まかにでも認識できる、自分の生活圏では補助や補装具無しで行動できる程度の視力は必要になってくるでしょう。
■ 視野の残り方が少し特殊なのだが、それでも MW10 を使う意味はある?MW10 の映像は正面を向いた先に表示される仕組みなので、中心部分の視力を使って映像を見た時に最大の効果が得られます。
視覚障害の方の中には視野狭窄だったり、中心から外れたところの視野だけ残っている方もおり、そういう方だと多少見づらいかもしれません。
ところが、MW10 の倍率を変更する機能を使って映像を小さくすると、少しの中心視野の範囲にカメラ映像を収めることができ、風景全体を認識することができます。
また、視野がドーナツ型や散在している形で残っている方でも、視線を少しズラすことで明るい映像を見れるようになるで、満足度は少し下がると思いますが、MW10 の効果はあると言えます。
■ MW10 は高価だし、何となく怪しい気もするけど、大丈夫そう?MW10 の仕組みや効果はこれまでご説明してきた通りで、これ以上の説明はできません。
ただ、矯正メガネのレンズや他の光学機器の製造で有名な HOYA が作った製品であることは一つの安心材料になりますし、HOYA は MW10 の開発段階から大学病院や医療機関、行政と連携しており、視覚障害のある方を交えた入念なテストも実施しています。
そうしたテストは発売後の現在でも続けられており、単純に完成したから発売していると思ったら大間違いです。
おそらく発売までには一般の医療器具と同程度の調査やテスト、分析、評価が行われていると思われ、それに勝る信頼性はほとんど無いはずです。
ちなみに、MW10 はカメラ製品の一種であって、医療器具ではありません。
■ 率直に MW10 は「買い」か?MW10 をしばらく使って、「視界が狭い」こと、「等倍で映るとはいえ、肉眼で見る風景とカメラ映像はは多少のズレが生じる」、この 2 つの肉眼との見え方の差が前述の行動の制限につながると実感しました。
行動するスピードを歩行する程度から上げると、周囲は MW10 のおかげで見れてはいるものの、危険だと感じるはずです。
それが、例えば夜間のランニングや自動車の運転のような素早い動きには対応できないと結論付ける理由にもなります。
使用できる場面が限られるので、もし不必要だった場合には結局使わないことになり、購入した意味がなくなります。
このような理由で私は、MW10 の購入は、「必要かそうでないか」を基準にして判断するのが良いtと考えます。
その判断基準は各々で定めることになりますが、一つの判断基準として、「普段の生活で懐中電灯を頻繁に使用しているかどうか」を考えるといいかもしれません。
懐中電灯を使用する場面を想像すると、暗い室内や夜道がまず挙げられます。
こうした所では歩いていることが多いでしょうから MW10 は十分使えるはずです。
しかも明るく見える範囲は懐中電灯よりもはるかに広く、そうした場面なら懐中電灯を MW10 に置き換えられるはずです。

【MW10 の価格について】

最後になりましたがとても重要な価格に触れなければなりません。
皆さんもご存知の通り、MW10 のメーカー希望小売価格 395,000 円です。
これに消費税やインナーグラス(MW10 専用メガネ)を追加すると、総額は 40 万円を超えてきます。
一般の矯正メガネと比較すると、べらぼうに高額です。
ただ、晴眼者に近いビジョンを体験できると見方を変えれば価格に対する意識も多少変わってくると思います。
ちなみに、MW10 は普通の矯正メガネをしたままでも着用できますので、インナーグラスが不要であれば省けます。
「それは分かっているけど、実際問題として購入するにはその分の資金準備が必要じゃないか」。
確かにその通りです。
今は補装具の補助対象には指定されていないので、全額自己負担になり、矯正メガネと同様に現金で支払うか、クレジットカードを使用するしか方法はありません。
私はクレジットカードの分割枠をフルに利用して購入に踏み切りましたが、MW10 を広めるためにはもっと安くするか、分割でも負担が光熱費並みの安さでないと、いくら MW10 の販売で利益は出せても、「夜盲で悩んでいる方に使って欲しい」という目標は達成できず、真の成功には至らないと断言します。
このことは開発メーカーである HOYA が一番認識しているので、釈迦に説法なことではありますが・・・。

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