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LCDサウンドシステム、USツアーのサンタバーバラ公演レポートが到着

LCDサウンドシステム、USツアーのサンタバーバラ公演レポートが到着

 LCDサウンドシステムが開催している米ツアーの、サンタバーバラで行われた公演レポートが到着した。

 ダンス・ロックバンドのパイオニアとして2001年から長きに渡ってトップにいるLCDサウンドシステムは、2015年の再結成後、2017年にアルバム『アメリカン・ドリーム』をリリースし、【FUJI ROCK FESTIVAL】での素晴らしいステージも記憶に新しい。

 この日の会場はロサンゼルスから車で2時間の海沿いの小さな街サンタバーバラの丘の上にある野外音楽堂のサンタバーバラ・ボウル。1936年に建てられた老舗の野外円形劇場だ。老朽化に伴い、近年では近代的なアップグレードとともに改修工事も行われ、ボブ・ディランやフィッシュなど伝説的なアーティストのコンサートも開催されている。

 野外会場ながら5,000人規模であるためチケットはもちろんソールドアウト。ほかの巨大なスタジアムなどに比べて、後方のスタンド席でもステージを近くに感じられる。ステージは石材で作られた壁と銅を葺いた屋根が引き立ち、音響設備も抜群。また会場で売られてるメキシカンフードも、サンタバーバラの老舗レストランが出店していて、食べ物も充実していることもほかのコンサート会場にはない魅力の一つだ。LCDは次の日にロサンゼルスの巨大な野外音楽堂のハリウッド・ボウルで公演するのだが、アーティストをより身近に感じたいなら、少し足を伸ばしてでもここサンタバーバラ・ボウルに来る方がいいと思った。

 会場へ入ると、ステージにはいまではLCDのライブの名物となっている巨大なミラーボールがすぐに見え、さらに気分が高揚する。ナンシー・ワンのキーボードスタンドにはステンシルで“RESIST (抵抗する)”という拳のマークが見える。タイムスケジュールから10分押しで、会場が暗転しメンバーが登場。ドラムのパット・マホーニーのマラカスで始まったのは「ユア・シティズ・ア・サッカー」だ。マイクを両手に持ち、ゆっくりと登場して来たジェームズ・マーフィーは心なしか少し痩せてスッキリして見える。ジェームズの静かな低音の声で始まるこの曲。踊りたくてうずうずしている観客はじっと息をのみリズムに足を合わせる。その後、ステージセットのライトをパットのフロアタムのリズムに合わせ稲光のように光ると、一斉に観客が体をくねらせ踊り出した。バンドがビートを変容させながらフロアを撹乱しているのが分かる。

 「ダフト・パンク・イズ・プレイング・アット・マイ・ハウス」からビートに合わせカウベルをこれでもかと叩くジェイムズ。それに合わせて日頃の鬱憤を晴らすかのように観客も暴れまくる。アルとテイラーの2人のギターが、ナンシーのソリッドなキーボードと融合し、そこにパットのドラムビートが絡み観客を痺れさせる。一体この曲で世界中の何人の人を踊らせて来たのだろうか。

 アンコールの「ダンス・ユアセルフ・クリーン」の演奏がスタートするのとほぼ同じタイミングで、スタッフがジェームズに何か伝えに来た。バンドが前奏を演奏しているとジェームズが「会場が時間切れだって!機材片付ける時間考えたら今すぐ演奏を終えないといけないらしい。そんなのダメだ!演奏しながら俺が片付ける!」と言い自らドラムセットのフロアタムやシンバルを持ちステージ脇に片付け始める。会場は一瞬何が起きてるかわからずざわつき始める。その間にもジェームズは片手にマイクを持ち歌いながら、もう片方の手で残りの曲に必要ない機材を次々と舞台袖に運んで行く。

 曲の序盤のスローなテンポから徐々にアップしていき、曲の盛り上がりとともにパットとアルのドラムビートに合わせ観客は踊りまくる。ジェームズのパワフルなロングトーンがこれでもかと続くと観客は歓声をあげる。そのまま曲はラストソング「オール・マイ・フレンズ」へ突入。もちろん観客は大合唱だ。会場内の照明が明るくなり観客が一体になりジャンプしたり踊ったりする様子がはっきりと見えバンドのプレイも一際ダイナミックに感じられる。今まで、座っていた観客もここへ来て立ち上がり踊らずにはいられなくなった。ジェームズのダイナミックなボーカルが、タムを叩くパットのリズムに合わせて体の底まで痺れさせる。観客は理性を壊されたかのように踊りまくる。ミラーボールから閃光が放たれ、観客の顔が見え隠れすると、誰もが笑顔を見せていた。

 そして誰もが最高な時間を感じた瞬間だったのだが、曲の演奏が終わるとともに会場の照明はバンドの意思とは関係なく落とされ、一気に現実へと戻された。観客は物足りないといった様子で“We want more! (もっと)”と叫び続けていたのだが、ジェームズ達バンドは観客への感謝の意を示すかのように何度もお辞儀をし、拍手をしながらステージから去っていった。その後、照明がまた明るくなり退場をうながされる中、海の潮風が会場を包み、興奮冷めやらぬ人たちの熱を冷ましてくれたように思えたのだった。

photo & text by ERINA UEMURA

◎セットリスト:
1.Yr City’s a Sucker
2.You Wanted a hit
3.Tribulations
4.I Can Change
5.Get Innocuous!
6.Daft Punk Is Playing at My House
7.Movement
8.Someone Great
9.Call the Police
10.Tonite
11.Home
Encore
12.Oh Baby
13.Emotional Haircut
14.Dance Yrself Clean
15.All My Friends

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