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【お知らせ】CHINTAI×はてなブログ特別お題キャンペーン「私の一人暮らし」優秀賞作品発表!

CHINTAI×はてなブログ特別お題キャンペーン「私の一人暮らし」

CHINTAIではこの春、「はてなブログ」と共同で一人暮らしを応援する特別キャンペーン【CHINTAI×はてなブログ 特別お題キャンペーン 私の一人暮らし】を実施しました。お題のテーマはずばり「一人暮らし」。

これから一人暮らしを始める方のその期待や不安、いま一人暮らしをしていて日々の生活や大切にしていること、今だから話せるアドバイスやエピソードなどなど、400記事を超える応募が!

みんなそれぞれ違った一人暮らしを経験しているんだなぁ、こんな一人暮らしの形もあるのか!なんてしみじみ、一人暮らしの数だけ物語を感じる選考でした。

今回優秀賞に選ばれたのは3作。ジェンさんの『世界がきみを見捨てても。』、雷神さんの『一人暮らし20年で借りてきた5つの部屋』、村上ユウタさんの『人は自然と生きていくようにできている。一人暮らしを始めて3年で分かったこと。』。

今回は優秀賞に選ばれた3作のうち、ジェンさんの『世界がきみを見捨てても。』を公開します。

一人暮らし経験者は初めての一人暮らしを思い出しながら、これから一人暮らしをする方は未来を思いながら、ぜひ読み進めてみてください。世界がきみを見捨てても。作:ジェン


18歳の頃、愛する故郷から上京して関東で一人暮らしをした。最近よくその大学の一人暮らし時代を思い起こして、美化してんなぁと思う自分がいる。あの頃、私は若かったし周りも若かった。でも不思議とそこに嫉妬も不快もなかったと思う。「あいつめんどうだなぁ」と思う人が酔っぱらった姿を見てダッシュしておいてったり、お腹すいたけど何にもない時はパン屋でバイトしてた友達に「家で飲もう」とまだ飲み終わってない鏡月と100均のウーロン茶を買っておけばバイト帰りにパンを大量に持ってきてもらいパンをつまみにして飲んでいた。お酒は怖くなかった。むしろ、飲んでも酔わなかった。楽しかったからだ。金は笑っちゃうぐらいなかったけど、楽しかった。

国道沿いのアパート。6畳。北向き。家を借りる知識なんてもうとうにない私と母が選んだそこはとにかく日当たりが悪かった。トイレ風呂別は死守。そんな感じで四年間そこで過ごした。何度も模様替えをして諦めたそんな部屋だった。

私の大学はあまり独り暮らしをしている人がいなかったため、よく終電を逃した友達が夜やってきた。「汚いよ」といえば「ほんとだ。めっちゃきたねぇ」と笑われた。まぁそれでよかった。1か月炊飯器を開けなかったとき、友達が「なんかジブリだったよ」と処理してくれた。ほんと、今じゃ考えられないし、あの時の殺菌・除菌してくれた友達すごかったな。と思った。

花の女子大生だったはずなのに、女子大生っぽいことは何もしなかったし、女子大生っぽい部屋でもなんでもなかった。空き瓶・空き缶大量放出。本屋のバイトと繰り返される宅のみ。大学から始めた下手なアコースティックギターを持ってサークルメンバーで路上をすれば酔っぱらったサラリーマンが1000円くれる。それで居酒屋に行く。女子高生はやたら他のサークルメンバーに恋をする。この街、つまんねぇやと笑いながら上野に遊びに行けばちょっとディープすぎてくらくらした。美術館にはおかげさまでよくいったそんな4年間だった。

わけわかんなくて、いきなり自転車を漕ぎ始めたけどあれはハチクロに影響されただけで隣の駅までしかいけなかった。深夜のファミレスで後輩と語りまくって、会計をしようとしたらお互い財布に何も入ってなくて後輩を置いて遠いコンビニまで自転車で走ってお金をおろした。自動車教習所はめんどくさくて全然いかなかった。親が仕事を辞めていきなり上京した時には焦ったし、笑うしかなかった。バイトを増やしてたらバイト先の社員から告白されたけど奥さんいたし、女友達が「初体験が兄だった」という衝撃過ぎるカミングアウトをした時はもうわけわかんなかったし、女同士でやったことあるかみたいな話になった時はドキドキした。変な恋しかしかなかったし、変なものしか目に見えなかった。心理学なんて専攻しちゃったから周りも変だったし私も変だった。普通のことを普通ととらえちゃいけない4年間だった。

煙草を覚えたのも、お酒を覚えたのも。逃げることを覚えたのも、挑戦することを覚えたのも、全部あの頃で。あの頃は傷ついても「あ、大丈夫」とか言って立ち上がってすたすた歩いていた気がする。まぁ、美化してんだろうけど。痩せようとなんて思わなくても痩せてた。よかったなぁ、あの頃。

週3で焼きそばを食べた。味噌汁は作んなかった。ご飯は飲みに行けばいいと思った。バイト、レポート、ギター、飲み。そんな毎日を繰り返せばあっという間に4年がすぎとうとう卒業しその街を出る日が来た。

就職をしてしまえば、おもしろいほどに社会人になると学生の頃できなかった、買えなかったことをする。先輩が社会人になった時、寂しくなったけど多分私も後輩に寂しくさせた。お金をお金としてとらえてなかった。後輩にほいほい奢った。あの頃の金銭感覚なぞにバブリーだよなぁと今は思う。好きな物を買った。食べた。車も買った。今はもうないけど。いろんなものを買ったり、旅行したりまともな恋もした。だいぶ太ったのでダイエットを意識する毎日が始まった。これはしんどい。

今の方が、豊かだ。物も、自分も。なのに、どうして無性にあの頃が素敵だったと思うのはなぜだろう。大学生だったからだろうか。意味なんてなかったからだろうか。誰かから必ず「のむぞー!」て連絡がきてたからだろうか。よくだれか家にいたからなのだろうか。なんだったんだろう、あの頃は?合コンなんて一回もしなかったけどな。フェスはよくいったけど。ビール飲めるようになったのいつからなんだろう。思い出せないや。

栄えているようで栄えていない街。財布を落としたり盗まれたり。車でひかれたこともあった。笑ってた。なんでも笑えてた。一人暮らしとかいいながら誰かいつも部屋にいた。きっと私は一生あの頃を美化し続ける。

あの部屋は、寒くて冷たくていいことなんて1つもなかったけど。夕焼けが綺麗だった。西北だったのかな。あの、オレンジ色が部屋に入ってくるときに「ああ、今日も終わるんだなぁ」と思うと悲しかった。夜、独りでカフェオレを作ったら上手にできなくて少し悲しかった。

今は、南向き。日当たり抜群。最高のお部屋。だけど、時々あのオレンジに会いたくなる。あの時、どんな気持ちで煙草を吸いながらあのオレンジを見ていたのだろう。思い出せないや、もう。でもきっとあの頃、味のしなかったカフェオレ。嫌いじゃなかったと思う。

まぁ、美化するのがクセだから今飲んだら「まずっ」て思うんだろうね。スタバに行くような人間になっちゃったから。

きっといつまでも、思い出の中にいる自分が好きだ。思い出せなくなったとしても、私はあの頃の自分を愛したいな。どうしようもなく貧乏で笑っちゃうぐらいだらしなかったけど。世界がきみを見捨てても、私はきみを愛してる。だってきみは私だから。私がこうなれたのは、あの初めての一人暮らしで得たなにか、だから。

そんな事を思いながら少しだけ広くなった今の部屋でぼんやりと過ごす。コーヒー豆買いに行こう。カフェオレは作らない。たぶん、もう。ギターは弾かない。他のジャンルの音楽を好きになっているから。笑っちゃうでしょう。煙草もやめたし飲みになんてほとんどいかない。だから思い出の中の自分が最高に楽しんでくれていればそれでいいやあ。もう、それでいい。それだけで幸せだよ。

文=ジェン/『しょしごと。』より転載
web:http://ogadenight.hatenablog.com/entry/2018/03/18/134412編集部からのコメント

「わかる、わかるよこの感じ……!」と、共感しながら最後までいっきに読めてしまった編集部員たち。

一人暮らしのあの頃をちょっとノスタルジックに思い出してしまう。戻れないからこそ、きれいに見える過去。学生生活って実はバイトに授業に遊びに意外と忙しくって、いちいち1日を振り返る時間なんてなかったもの。

今回投稿してくださったジェンさんの記事は、ただ懐かしむだけでなく、しっかり今につながっているのが印象的でした。

文章も抑揚があってとても読みやすく、気持ちいいくらいリズミカル。そこに共感する要素がふんだんに盛り込まれていて、読む人を飽きさせない魅力があります。いい意味で、過去の自分を振り返らせてくれる作品でした。

あの頃があるから今がある。ジェンさんのようにそう思えたら、その一人暮らしはきっと正解だったということでしょうね。

CHINTAI×はてなブログの「お題キャンペーン」結果発表は、こちらを持って終了です。たくさんのご応募、誠にありがとうございました!優秀賞を受賞したほかの2作はこちらからチェック!

▼ 一人暮らし20年で借りてきた5つの部屋 – たのしくも悩ましき、春の夢 by 雷神さん
http://www.happysad88.com/entry/2018/03/26/043822
▼人は自然と生きていくようにできている。一人暮らしを始めて3年で分かったこと。 – ミナトミライ. by 村上ユウタ
http://www.minatomirai.tokyo/entry/watashino_hitorigurashi_CHINTAI

※雑誌「CHINTAI」2018年4月24日発売号の特集は「同棲経験者400人に聞いた! 幸せな二人暮らしの始め方」。こちらから購入できます(毎月24日発売)
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