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「トイレの花子さん」から超コワイ怪談まで ありそうでなかった怪異事典

「トイレの花子さん」から超コワイ怪談まで ありそうでなかった怪異事典

都市伝説や怪談と言えば、真っ先に思い浮かぶのは何だろうか?

「口裂け女」「トイレの花子さん」「カシマレイコ」「きさらぎ駅」……。時代が変わってもこの手の話は、誰が教えているのか脈々と語り継がれている。

そんな古今東西の都市伝説や怪談、いわゆる怪異譚をまとめた一冊が『日本現代怪異事典』(朝里樹著、笠間書院刊)だ。

本書では、戦後から現在に至るまでの「怪異」が1000種類以上も紹介されているが、その内容は単なるオカルト話の寄せ集めではない。

「怪異」のルーツが特定の人物の創作だったり、雑誌やアニメやマンガだったりする場合にはその旨をきちんと解説しているし、五十音順はもちろんのこと、類似怪異、出没場所、使用凶器、都道府県別など、種類豊富な索引も付いている親切設計の一冊だ。そんな本書から、魅力あふれる都市伝説をいくつか紹介してみよう。

■「トイレの花子さん」には家族がいた!?

都市伝説の王道舞台は、やはり学校だ。とりわけ、トイレは「怪異」の出没場所が最も多いようだ。

そして、トイレと言えば「トイレの花子さん」を置いて他にはないだろう。

学校の三階の女子トイレ、その三番目のドアを三回ノックし、「花子さん、遊びましょう」と言うと「は~い」という少女の声がする。少女は「何して遊ぶ?」と問いかけをしてくるが、これに「おままごと」と答えると包丁で刺され、「首絞めごっこ」と答えると首を絞められる――というのが、スタンダードな花子さんだ。

トイレの場所、ノックの回数、問いかけと殺され方のパターンが異なるバージョンも多数あるが、そのルーツは意外に古い。1948年には「トイレ」「花子さん」というキーワードで語られている怪談話があるという。

そんな「トイレの花子さん」には、派生バージョンも多い。花子さんの「お母さん」「お父さん」「おじいさん」「おばあさん」と、ファミリー総出で都市伝説になっている。さらには、「花子さんのハンカチ」「花子さんの右手首」という持ち物や体の一部だけの話もあるという。

まさに、ベスト・オブ・都市伝説と呼ぶに相応しい「怪異」だ。

■都市伝説の絶対的エース「○○ババア」

高速道路に出現し、走る車を四つん這いで追いかけてきて、追いつくとぴったり並走してくるという老婆の怪異「ターボババア」をご存知の方も多いだろう。しかし、「あれ?ウチの地方じゃ名前が違ったような…」とお思いの方もいるはずだ。

それもそのはず。都市伝説で語られる「すごいスピードで追いかけてくるババア」には何種類もあるのだ。

「ダッシュババア」「80キロババア」「高速ババア」「快速ばーちゃん」など、そのパターンはバリエーションに富んでいる。さらには、「ターボババア」の進化バージョンとしてさらに速い「ハイパーババア」がおり、具体的な速度も80キロだけでなく「120キロババア」「1000キロババア」と加速が止まらないパターンが存在するという。

どうやら「ババア」は、都市伝説になりやすいらしく、走る以外にも、様々な種類のババアの怪異がいる。

「四次元ババア」「ジャンピングババア」「首切りババア」「足喰いババア」「30センチババア」「AIババア」「棺桶ババア」「ヘリコプターババア」「ホッピングババア」等々。

これはまだままだほんの一部に過ぎないが、走ったり跳んだり、色々なモノを持っていたり、多様な箇所を切ったり喰ったり、怪異の「ババア」はとにかくアクティブなことこの上ない。

「ババア」は、都市伝説界の絶対的エースとして不動の地位を確立していると言えるだろう。

■本気で怖い怪談「赤いクレヨン」

ユニークな点ばかりを取り挙げてしまったが、やはり都市伝説は怖い話であるからこそ意味がある。

本書では、読んでいるだけでゾッとしてしまうような話も紹介されている。

中古物件の一軒家を買った夫婦は、ある日を境に、家の中に赤いクレヨンが落ちているのを見つける。拾って捨てても、次の日もその次の日もクレヨンは同じ場所に落ちている。夫婦はそれを疑問に思い、その場所の周辺を調べてみることにした。

すると、明らかにその辺りには外から見るともう一つ部屋があることに気付く。家の図面を見ても、心当たりのない部屋があるようだった。壁を叩いてみると、他の壁を叩いた時とは明らかに音が違う。意を決した夫婦は、壁紙をはがしてみる。そこには開かないように釘打ちされた扉があった。その部屋に足を踏み入れてみると……。

この続きは、ぜひ本書で「赤いクレヨン」の項を引いてみてほしい。元々はある人物が語った怪談話だが、その結末にはきっと背筋がゾッとするだろう。

本書は、事典としての完成度が非常に高い上に、思わず次々と読みたくなってしまう魅力がある。決して万人向けとは言えないジャンルの書籍だが、読んで損をすることはないだろう。

(ライター/大村佑介)

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