【東京・春・音楽祭】ポーランドの弦楽合奏+バスが歌いあげるスラブのメロディ

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【東京・春・音楽祭】ポーランドの弦楽合奏+バスが歌いあげるスラブのメロディ

 【東京・春・音楽祭】が今年も東京・上野周辺の会場にてスタート、オープニング2日目にあたる3月17日には【シンフォニエッタ・クラコヴィア with トマス・コニエチュニー (バス・バリトン)II~スラヴィック・メロディ――ペンデレツキ生誕85年に寄せて】が開催された。

【東京・春・音楽祭】写真(全7枚)

 東京藝術劇場の小ホール、室内楽やソロコンサートの多い小ホールの舞台にずらりと登場したのはシンフォニエッタ・クラコヴィア。ポーランドの古都・クラクフで活躍し、ペンデレツキと縁の深いアンサンブルだ。ポーランドで第二次世界大戦後、現代音楽を牽引してきたペンデレツキ生誕85年を祝し、「シンフォニエッタ第3番 《書かれなかった日記のページ》」「アニュス・デイ(《ポーランド・レクイエム》より)」を披露。強い弦の響きや打音、耳に残るリズムが印象的なシンフォニエッタと、元々合唱曲だったアニュス・デイの澄み渡った旋律ラインは好対照のプログラミングだ。

 フルオーケストラを味わったような充実したサウンドから、繊細なカルテットアンサンブルまで、そのダイナミクスは変幻自在。特にヴィオラやチェロなど中低音に“オイシイ”旋律が多く、その染みいるような音色はスラヴィック・メロディの美しさを表す一つのファクターであったのではないか。指揮のユレク・ディバウは全身で音楽を牽引しながら、メロディックな部分についてアンサンブルに任せるように流れに身を任せるなどの部分も。奏者達を信頼しているのが背中から感じられる演奏だった。

 バス・バリトンのトマス・コニエチュニーも、ポーランド生まれ。新国立劇場でも絶賛を浴びている俳優出身の歌手だが、この日はムソルグスキーの「死の歌と踊り」を弦楽アンサンブル編曲版で披露。死に神が少年や乙女、酔っ払いを彼岸へと誘い歌うこの4曲のドラマ性を存分に引き出し、まるでオペラのような演劇舞台作品のように感じさせた。背後を彩るシンフォニエッタ・クラコヴィアのアンサンブルも、コニエチュニーの分厚く響く声量に対して絶妙な満ち引き。前半アンコール、マーラー「亡き子をしのぶ歌 第3曲」の後は、ブラボーの声が。休憩の前だというのにしばらく拍手が鳴り止まなかった。

 後半はドヴォルザーク「弦楽セレナード op.22」。1部の張り詰めた緊張感、死と孤独の匂いが吹き払われ、春の芽吹きを思わせる甘いメロディ。ところどころにのぞく舞曲を思わせる楽想や歌うような旋律は、ボヘミアの楽想を思わせるもの。ポーランドのアンサンブルだからこそ奏でられるドボルザークは、ロマンチックさと同時に軽やかさを備えた“
“自然な”演奏だった。

 そしてユレク・ディバウによる『ありがとうございました!』の声の後披露されたアンコールは、バダジェフスカ「乙女の祈り」と、ペンデレツキ「3つの古い様式による小品より『アリア』」の2曲。ペンデレツキの楽曲の持つ幅広さはもちろん、スラブの音色を西から東まで堪能出来るコンサートとなった。

 【東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2018-】は始まったばかり。4月15日のファイナルコンサートまで、連日のようにコンサートを開催している。

◎公演情報
東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2018-
【シンフォニエッタ・クラコヴィア with トマス・コニエチュニー (バス・バリトン) II ~スラヴィック・メロディ――ペンデレツキ生誕85年に寄せて】
2018年3月17日(土)
東京文化会館 小ホール
OPEN 14:30 START 15:00

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