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COLORの『激突!!』は自由なる意志を貫き、現在のV系シーンに多大な影響を及ぼした神盤

現在、Dir en greyやMERRY、baroque、sukekiyoらが所属し、かつてはBY-SEXUALやかまいたちを送り出したレーベル、フリーウィル。ビジュアル系を扱う国内最大規模のプロダクションだが、そのフリーウィルの代表であり、総合プロデューサー的な立場で所属アーティストに接しているのがDYNAMITE TOMMYである。今や経営者として面がクローズアップされることがほとんどだが、その辣腕も氏がヴォーカルを務めていたCOLORでの活動がバックボーンになっているのは疑いのないところ。今週は、まさに“自由なる意志”が発揮されたCOLORのデビュー作『激突!!』を解説する。
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Xの向こうを張った西の大物

“東のX、西のCOLOR”。初期ビジュアル系シーンを語る際にちょくちょく目にする言葉であり、シーンの黎明期を端的に表したものと言える。1980年代後半のインディーズシーンにおいて、関東ではX(現:X JAPAN)、関西ではCOLORが台頭し始めたことで、それがのちのビジュアル系に発展していった。

ただ、X JAPANを紹介する時に(少なくとも再結成以降には)この台詞が出てくるのをほとんど見たことがないので、これは専らCOLORというバンドを説明する場合の常套句と言える。1990年代後半に活動が滞った以降(註:正式な解散発表はされていないようなので、このような表現とした)、2003年と2008年にライヴを行なっているものの、それは不定期かつ長期スパンを経てのものだったので、今やこの言葉はCOLORというバンドがX JAPANと並ぶシーンにおけるレジェンドのひとつであることを示すものとして使われることがほとんどであろう。レジェンド=伝説には尾ひれが付きもので、とある事実を拡大解釈していたり、根拠が不明だったり、単に空気でそう呼ばれているような場合がなくもないが(それゆえに最近はレジェンドを軽視する傾向にもあるようだが)、COLORは正真正銘、ビジュアル系シーンのレジェンドのひとつである。COLORがいなかったら今のビジュアル系はなかった。いや、あったかもしれないが、現在とその姿を変えていたのは間違いない。
シーンを形成した自主レーベルの設立

COLORがいなかったら今のビジュアル系シーンはその姿を変えていたとは断言したが、とは言え、COLORがそう意識して活動していたのかというと、そういうことでもない。そもそもCOLORは〈大阪にてDYNAMITE TOMMYが「こんなクソみたいな世界ムカつくからありとあらゆる手段で叩きつぶしてやる」ために〉結成されたバンドだという(〈〉はWikipediaから引用)。AIR JAM世代以降とは真逆と言ってもいい、破壊的な衝動が基にあったようだ。パンクで言えば、初期パンクでなく、ハードコアパンクの主張を継承していたかのように思える。まぁ、“ありとあらゆる手段で…”とは言っても、そこは日本での話。あくまでパンクのDIY(=Do It Yourself)精神を強く反映させたと見るのがよかろう。
1986年にフリー・ウィル・レコード(現:フリーウィル)を設立したのもそうしたCOLORの反骨精神、その発露のひとつと考えられる。COLORの最初の音源、1stEP「MOLT GRAIN」はそのフリー・ウィル・レコードからのリリース。DYNAMITE TOMMY言うところの “クソみたいな世界”を、COLORならではの“手段で叩きつぶそう”としたのだろう。ちなみに、X(現:X JAPAN)のYOSHIKIが自身のレーベルであるエクスタシーレコードを設立したのは1986年4月だ。フリー・ウィル・レコード設立の月日が不明だったので、レーベル設立に関してお互いに直接的な影響があったのかどうかは不明だが、交遊のあった両バンドだけに、そこで何かしら情報交換等があったとしても不思議ではないだろう。いずれにせよ、1980年代後半の同時期に東西の人気バンドが自らのレーベルを持ったことは、強大なエポックであり、のちのシーンに及ぼした影響は計り知れない。
パンクロックが色濃くでた作品

音源の話をしよう。そんなCOLORが1988年1月に発表した1stアルバムが『激突!!』である。先ほど若干パンクの話をしたが、X(現:X JAPAN)の1stアルバム『Vanishing Vision』はヘヴィメタル、プログレが色濃く出ている一方、『激突!!』はパンク色が強い。つまり、“東のX、西のCOLOR”というのは、同じ音楽性のバンドが東西で人気を二分していたとかではなく、出で立ちやライヴのスタイルが近いバンドが東西にいて、それぞれに人気があった…という解釈が正解。今そんな人がいるかどうか分からないが、X JAPANから入ってCOLORを聴いて、“これは私が求めていたものと違う”と思う人がいても無理からぬところかと思う。

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