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ベストアルバム『BEST』に見る三浦大知の音楽が持つ優しさ

知る人ぞ知る存在から、今や日本を代表するスーパーエンターテイナーとして知られるようになった、三浦大知。2017年はNHK『紅白歌合戦』に出場するなど、その知名度が格段に上がった。3月7日には初となるベストアルバム『BEST』がリリースされ、2005年のソロデビュー曲「Keep It Goin’ On」から「U」までの全シングル24曲とドリカムからの提供曲「普通の今夜のことを ― let tonight be forever remembered ―」と新曲「DIVE!」も加えた全26曲が収録されている。
三浦大知 (okmusic UP's)

今回、この『BEST』を改めて聴きながら三浦大知の取材を振り返ってみると、時期ごとに大きなテーマが彼自身の中にあり、それに基づいて作品が生み出されていることを思い出した。例えば、DISC Aの9曲目に収録されている「The Answer」(9thシングル2010年8月18日リリース)。2010年は感情と感情をぶつけ合い、つながれるような曲を作りたいと思っていて、その答えのひとつが「The Answer」だったという。いつの間にかすれ違っていた人との絆を取り戻そうとする男の心情を、4つ打ちのメロディーに乗せたこの曲。クールに始まりながらも次第に想いが募っていき、エモーショナルに歌い上げている。なお、この「The Answer」はヴォーカルの転換期でもあり、当時のインタビューでは新しいヴォイストレーナーのレッスンを受け、この頃から声が変わってきたと語っていた。

DISC Aの12曲目「Two Hearts」(12thシングル2012年5月2日リリース)の頃は“理屈じゃない音楽”というテーマがあり、自然にワクワクするなど、聴いた人の感情に直接つながるものを追求していた。そして、“ハッピーな作品を作りたい”と彼が語った少し後に発表されたのが「music」(18thシングル2015年6月17日リリース)。収録されている楽曲の中で、三浦大知の“陽”の要素がもっとも発揮されている楽曲だろう。トラックを聴いた時にとてもハッピーになれると感じてかたちにしたいと考えたそうで、“誰が聴いても、音楽ってやっぱり楽しいよね、というのが分かる曲に仕上がったんじゃないかなと思います”と制作の手応えについて話していた。

もちろんテーマが何なのかは知らなくても、彼の素晴らしい音楽やパフォーマンスを堪能するだけで十分楽しめる。しかし、楽曲やライヴの中に彼の思いを感じとれる瞬間が訪れると“彼が今、伝えたかったことはこれなんだ!”と気付くのも聴き手としては非常に楽しい。“今、自分は何を届けるのか?”といったビジョンをしっかり持ち、それを明確に人に語れること。三浦大知のアーティストとしてのしっかりした土台は、こういったことからも感じ取れるのだ。

そして、シングル曲を改めて聴き直すと、人に対する深くて温かい彼の視点を感じる曲が多いことが分かる。DISC Bの2曲目に収録されている、強い意志を感じるナンバー「Voice」。この曲について三浦大知は“大人になると生きていく上での処世術が邪魔し、子供の心を持つのが難しかったりする。もっと素直に甘えてもいいかなと思えるような、少し遠回りの応援歌のイメージ”といったことをインタビューで語っている。寄り添うような彼の声と、憂いを湛えたようなメロディーによって、自分と静かに対話する時間が持てるような気持ちになっていく。

また、テレビ番組でもひんぱんに取り上げられた最近の作品「(RE)PLAY」(20thシングル2016年11月23日リリース)は、“すごいものを見たり、感動するもの見たりした時は、積み重ねてきたものが見えるような気がする。だから、繰り返すことで自分の歴史を自分で作っていく”という意味が込められているという。さらに、DISC Bの9曲目「Cry&Fight」(19thシングル2016年3月30日リリース)は、世間の流れとして一生懸命やっていることを恥ずかしいと思うところがあるけれど、一生懸命やることのカッコ良さを改めて歌いたいと考えて生まれたそうだ。

こういった地味で誰も見ていないような努力、見逃してしまうような微妙な心の動きといったものにあえて光を当てて作品に昇華させていく。そんな人に対する愛が根底にあふれているのが、三浦大知の音楽なのだと感じる。

アルバムラストは1月31日大阪城ホール公演と2月14日&15日に行なわれた日本武道館2days公演でも披露された新曲「DIVE!」。最終日である15日のライヴでは集大成的なものであったことは言うまでもなく、さらに宇多丸(RHYMESTER)、KREVA、千晴、満島ひかり、絢香、菅原小春、BLUE TOKYOなど豪華なゲストが出演。もちろんそれぞれのパフォーマンスは語り尽くせないほど素晴らしかったのだが、三浦大知単独のステージがぶれないものであるからこそ、そういったサプライズもより輝いたライヴだったと思う。

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