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『人間プログラム』にある多様性と生々しさは、THE BACK HORNのテーマ“KYO-MEI”の原点

今年、結成20周年を迎えるTHE BACK HORN。3月7日にはインディーズ期以来になるというミニアルバム『情景泥棒』が発売され、3月20日からは『KYO-MEIワンマンライヴ & 対バンツアー〜情景泥棒〜』がスタートする。本コラムではデビューアルバム『人間プログラム』をご紹介。彼らが標榜する“KYO-MEI”の原点のひとつと言える本作は、バンドの本質を見事に詰め込んだ邦楽の名盤である。
これだけはおさえたい邦楽名盤列伝! (okmusic UP's)
1998年結成、2001年メジャーデビュー

THE BACK HORNの名盤をご紹介することになったので、まずは基本的な情報を…とWikipediaを見たのだが──また、こんな書き出しになってしまって恐縮であるが──それを見て若干面食らった。来歴に“2001年4月25日 1stシングル「サニー」でメジャーデビュー。”としかない。メンバーの項目はそれなりに充実しているし、作品、ライヴの項目は結構な分量があるのだが、どんなに見つめても、来歴にはメジャーデビュー以外の情報はない。もちろんリンクが貼られている様子もない。これでは埒が明かないと、公式webサイトへ移動することに。さすがにこちらのほうのBIOGRAPHYはしっかりしており、メジャーデビュー以降のトピックも掲載されているし、2018年にバンドは結成20周年であることにも触れられている。また、1998年以降、毎年起こった出来事=作品リリース、ツアー、イベント出演、タイアップ等もきちんと記されている。…いや、ちょっと待て。作品リリースやツアーのことはWikipediaにもあるわけで、公式サイトではそれを年毎にソートしているに過ぎない…と言わないまでも、ひとつひとつの事項、その中身は両サイトでそう変わるものではない。

つまり、こう言っては何だが、THE BACK HORNというバンドはこの20年間、作品リリース、ツアー等の他に特筆すべき項目がないのかもしれない。当方は彼らの活動をつぶさにチェックしてきたわけではないので、もしかするとファンならば誰でも知っているようなトピックがあって、それがサイトには載せられていないだけかもしれないのだが、少なくとも彼らは頻繁にテレビ番組に出たりしている印象もないので、何かトピックがあったにせよ、それは音源かライヴに付随するものではなかろうかと想像してしまう。これを以てストイックと形容してしまうのは短絡的ではあると思うが、THE BACK HORNには余分なものを削ぎ落とした、言わばアーティストとしての体脂肪率の低さみたいなものを感じたところだ。
20年間、歩みを止めることなく活動

まぁ、昨今のアーティスト、それこそTHE BACK HORNと同時期にデビューしたバンドには、確かに音源とライヴに集中する人たちも少なくない。よって、彼らを特別視してはいけない気もするが、デビュー以来、毎年ライヴを欠かさず、何らかの音源をリリースし続けているバンドとなると彼ら以外にはそういないのではなかろうか。20年間前後、活動を続けていても新しい音源を制作しない年があったり、下手すると途中で活動を休止していたりするもので、むしろ、そっちのほうが普通なくらいだと思う。彼らと同時期にデビューしたバンドたちのことを調べてもらえれば一目瞭然で、それだけバンドを続けるのは難儀なことであることも裏返しとも言えるが、そんな状況下でコンスタントに活動を続けているだけで立派であるし、特異である。
さらに、こう言っては誠に失礼だから、まず謝っておくが──すみません──THE BACK HORNには特大のヒット曲があるわけでもない。シングルは2007年に発表した「罠」がチャートベスト10入りしたのが最高で、それ以外は最近の作品でも最高位15~20位といったところ。アルバムは2008年の7th『パルス』が5位、2010年の8th『アサイラム』が9位、2012年の9th『リヴスコール』が10位、2014年の10th『暁のファンファーレ』が8位と、安定していると言えば言えるが、ブレイクを果たした…とまで言えるかどうかは微妙ではなかろうか。
躍動感あふれるダイナミックな音像

誤解のないようにお願いしたいが、だからと言って本稿はTHE BACK HORNを腐しているのではない。その逆である。称えたいのだ。誰にとっても分かりやすい、俗に言うキャッチーさ≒大衆性を備えたわけではないバンドが、結成以来、その歩みを止めることなく、20周年を迎えるに至ったことは、すなわち日本の音楽シーンの多様化の証であろうし、日本のロックの進化と深化を示す出来事でもあるだろう。さらに言えば、THE BACK HORNだったからこそ、そうした新境地を切り開けたのだとも思う。

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