プロレスラー俳優法則探訪:「自分の味を出すなら自分で作る法則」ジョン・モリソン

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【プロレスラー俳優法則探訪 FILE.8】

 前回のロディ・パイパー編でお伝えした通り、規格外の大きさを求められがちなプロレス出身俳優のセオリーから外れたところにいても需要はあるのです。

 例えば『ゼイリブ』の主人公がハルク・ホーガンだったら、ムキムキ主人公が異星人の母星に乗り込んでハッピーエンドになっていたでしょう。
 パイパー演じた主人公がそこら辺にいそうな肉体労働者に見えるからこそ無情な最期が際立つ作品が成立しているのです。

 今回ご紹介するのは、そのパイパーと同じ系譜にあるジョン・ヘニガン。複数の名前を持つ彼ですが、WWE在籍時の「ジョン・モリソン」が最も有名。

 ヘニガンは、WWEの素人発掘企画「タフイナフ3」優勝者として2003年にプロデビューし、ハリウッド出身を謳う華やかなキャラの選手としてタッグ部門を中心に活躍。
 これからという時期の2011年にWWEから離れ、アメリカとメキシコのリングを行き来しながら、映画界にも進出します。

 TVドラマと低予算映画がほとんどですが、日本でも観られるのが以下の主演3作品。

 まずはドウェイン・ジョンソンの『ヘラクレス』公開と同じ年の2014年、あのアサイラムが叩きつけたモックバスター(模倣作)『ヘラクレス 帝国の侵略』。登場時は酔っぱらいのダメ男という異色のヘラクレスを演じています。
 2015年にはディザスターSFサスペンス的な『ザ・ストーム』に主演。得意のパルクールの動きを使ったアクションシーンも披露。

 2016年には再びアサイラム作品『シンドバッド 秘宝メドゥーサの心臓と復讐の女神』に主演。
 80年代映画的な滑り気味の演出と、限りなく低質なCGIの”アサイラム的”ポンコツ作品ですが、シンドバッドの末裔という主人公役をコミカルに演じており、ベタなノリを許容出来る方なら何とか楽しめる作品です。

 ただ、このヘニガンさん、名門カリフォルニア大学デービス校の映画学科を卒業しており、単なるプロレス出身俳優ではないのです。
 『ビバリーヒルズ・コップ』のようなコメディアクション、そしてジャッキー・チェンを敬愛する彼は、プロデューサーとしてだけでなく、主演、原作・脚本も手掛けた『Boone: The Bounty Hunter』を製作。

 パルクールとプロレス・格闘技をミックスしたアクション映画で、主人公ブーンは賞金稼ぎかつリアリティショーのホストとして視聴率アップのために麻薬組織と闘うという内容。

 製作が難航し、自らの持ち家を売却して制作費を捻出した末、2017年5月、遂に完成。
 クイントン・ランペイジ・ジャクソンや『スーパーナチュラル』のケビン・トラン役で知られるオスリック・チョウを共演に迎え、この手の作品にマストな金髪美女と爆発、そして自慢のパルクールアクションも随所に盛り込んだのです。

 タイプキャストの枠内でもがくよりも、自身の持ち味を遺憾無く発揮出来る作品を自らで作るというのは、プロレス出身俳優の中でも異質。
 『Boone』が名刺代わりとなったのか、撮影済みを含め、2018年公開・放送予定作品への出演予定は9本、噂レベルも含めれば+7作品。
 全て低予算作品とはいえ、現役レスラーとの掛け持ちと考えれば、”売れっ子”といっても差し支えはないでしょう。

 ヘニガンの苦労の結晶『Boone: The Bounty Hunter』の日本配給実現を願う筆者なのでした。

(文/シングウヤスアキ)

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