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本好きアイドル・夢眠ねむ、家の本棚ついて語る

本好きアイドル・夢眠ねむ、家の本棚ついて語る

本好きアイドルとして知られるでんぱ組.incの夢眠ねむさん。谷崎潤一郎没後50年の記念イベントで『春琴抄』を朗読したり、「日本タイトルだけ大賞」のゲスト審査員を3年連続で務めるなど、幅広く活動している。

そんな夢眠さんの新刊『本の本: 夢眠書店、はじめます』(新潮社刊)は出版業界のキーマンたちに会いに行き、本作りを学ぶ一冊だ。最終目標は、自分の書店である「夢眠書店」をいつか開店すること。

インタビュー前編ではキーマンたちとの対談を振り返りながら、夢眠さん自身の読書歴などについてお話を伺った。

そして後編では「本棚」に対するこだわり、そして昨年12月3日に決定した「第10回日本タイトルだけ大賞」について聞いてみた。

取材・文:金井元貴(新刊JP編集部)

■「人に自分の本棚を見せるのは嫌です!」

――突然ですが、クラフト・エヴィング商會のお二人との鼎談のところで、夢眠さんが次のように語っていらっしゃいます。

人の本棚を見てギョッとすることもありますけど、そこから新たに作家さんを知ったり、自分が嫌なものを知れたりするということもありますよね。あと、好きな人の本棚がガッカリな内容だったら「この人とは付き合えない…」って思うかも(笑)。

<『本の本』P199より引用>

夢眠:確かに言いましたね(笑)。

――人に自分の本棚を見せられるかどうかって、実はかなり分かれますよね。私の周囲は半々くらいですが、夢眠さんは自分の本棚を他人に見せることできますか?

夢眠:嫌です! 実はこの本を作るときに、それぞれの章の扉絵の背景写真に、私の家の本棚を薄く引いて使うというのはいかがですか? と提案されたんです。でも、一秒足らずで「ごめんなさい」と言いました(笑)。

でも、企画で見せることもあるし…。見られてもいいんですけど、恥ずかしいですよね。何か裸を見せている感じになるというか。

――見せる用の本棚を作りたくなりませんか?

夢眠:でも、見せる用の本棚って結局は「見せる用」じゃないですか。そうじゃない本当の自分がいるのが自宅の本棚ですから。だから、他人の本棚を見るのは好きなんですよ。これは人の日記を読みたいという感覚と同じですよね。自分の日記は読まれたくないけれど(笑)。

――この連載は夢眠書店という書店を作るということが最終的な目的になっていますが、いざ実現したときに、書店としての個性を出すために、自分の本棚をそこに再現するということも必要だと思うんですね。自分がセレクトした本をちゃんと置くというか。

夢眠:実際に自分の本棚を再現すると、かなり(ジャンルが)偏った本屋さんになりそうだなと思います。今の自分の本棚に入っている本の半分以上が実はレシピ本で、しかも私はレシピ本を読み物として読んでいるんです。

よくレストランに行っても、メニューをずっと熟読しているタイプで、これは子どもの頃からずっとそう。今も料理が来るまでずっとメニューを読んでしまいますね。まるで小説を読むように、ずっとメニューを読んでいる。

――メニューが本代わりというか。

夢眠:これは読書ですよ! レシピ集も同じように、熟読しています。料理の本って、作り方だけではなく、旬とは何かを知れる学びになることも多くて、色んな角度から読むことができるんです。これはレシピ集だけではなく、どんなジャンルの本もそうですよね。

――では、おそらく夢眠書店にはレシピ本がたくさん置かれる。

夢眠:半分以上がレシピ集の本屋さんですね(笑)。あとは食のエッセイや食材図鑑も豊富に置きたいです。

――それは面白いです。夢眠さん厳選の食をテーマにした本を集めた書店は、ぜひうかがってみたいですね。で、話は戻りまして(笑)夢眠さんが幻滅する「がっかりな内容」の本棚とはどんな本棚ですか?

夢眠:あ、その話ですか! がっかりな内容というか、とにかく売れ筋の本が積ん読してあるようなこだわりのない本棚は…。いいんですよ、ちゃんと読んでいれば。でも、読んだ形跡がない『ダ・ヴィンチ・コード』があって、しかも埃被っているみたいな(笑)。

――そういうブームになった本がズラーっと並んでいるという。

夢眠:村上春樹さんの本が並んでいるけれど、読んだ形跡がないみたいな。もはや飾りになっていると悲しいですよね。

――『ダ・ヴィンチ・コード』があって、『火花』があって、『1Q84』があって、みたいな売れ筋しかない本棚とか。

夢眠:あと、帯に全部「映画化決定」と書かれている本棚。大喜利みたいになっちゃった(笑)。

もちろん、私も積ん読になっている本はありますし、全部ちゃんと読まなくてもいいんです。でも、半分でもいいから、少しでもいいから読んでいてほしいですね。

■「持ち運びしやすさ」を意識した『本の本』、ご一読あれ

――最後にの『本の本』の装幀について触れたいんですけど、デザインされたのは夢眠さんご本人なんですよね。

夢眠:はい、新潮社さんの装幀部の黒田さん、二宮さんに教えていただきながら、ああでもない、こうでもないと言いつつ作りました(笑)。その様子は本を読んでもらえるとありがたいんですけど、紙を選ぶところからこだわりました。

自分が移動中に本を読むタイプなので、この本を是非持ち歩いて読んでほしいと思っていたので、本自体が軽く手に馴染むように工夫をしました。良い意味でアイドルらしくない装幀は意識していましたね。

――装幀を考えているときの夢眠さんの真剣な表情を見ることができますね。

夢眠:そこはさすがに真剣に考えました(笑)。でも、私、この連載すごく楽しくて、歯を出して笑ってる写真が多いんですよ。普段は歯を出さないようにしているんですけど。自然に楽しくなっちゃう。

――では最後に、本書をどのような人に読んでほしいですか?

夢眠:『本の本』というと、かなり硬い内容の本だと思われるかもしれませんが、本当に読みやすい、出版業界の取材ルポになっています。

最初に「マニアック」と言っていただきましたけど、本当に当てはまると思っていて、本が好きな人はワクワクするところも多いと思います。また、最近読書から離れてしまった人も、本がまた読みたくなるきっかけにしてもらえたら嬉しいですね。

――ありがとうございました!

■インタビューおまけ:第10回タイトルだけ大賞に向けて

取材が行われた12月3日は、日本で最も秀逸な書籍タイトルを決める「第10回日本タイトルだけ大賞」の選考会も行われた。

夢眠ねむさんはそのゲスト審査員として3年連続で出演。大賞作品は『ムー公式 実践・超日常英会話』(宇佐和通ほか著、学研プラス刊)、そして夢眠ねむ賞は『鬱屈精神科医、お祓いを試みる』(春日武彦著、太田出版刊)が選ばれた。

これは選考会直前に行われた夢眠ねむさんのコメントである。

 ◇    ◇    ◇

――これから「第10回日本タイトルだけ大賞」の選考会がありますが、タイトルで魅かれて本を手に取ることはあるんですか?

夢眠:あります。「タイトルだけ大賞」はまた基準が別の切り口になりますけど、タイトルがダサいと、内容も(自分と)合わないかもしれないと思ってしまうんです。本で最初に読む文章ってタイトルだから、そこは気にしますね。

でも、もちろんタイトル買いして「ちょっと違ったな」ということもありますし、タイトルはちょっと合わないけど、中身は感動的だった本もありますね。

――「日本タイトルだけ大賞」の候補にはいわゆる下世話なタイトルの本も並びますけど、タイトル読みを担当する夢眠さんは、1年に一度この日だけリミッターを外されるんですよね。

夢眠:そうです。アイドルなので、そういう言葉は口にしないようにしているんですけど、今日だけは言ってもいい日にしています。

――今年もきわどいタイトルが並んでいるかもしれません。

夢眠:さっきマネージャーさんから確認が入ったんですけど、全部OKにしました。(インタビューに同席しているマネージャーを見て)口が曲がっていますけど(笑)本人がOKなので。

――この『本の本』というタイトルはいかがですか?

夢眠:去年『まろやかな狂気』というタイトルの本を出したばかりで、審査員の方々から「これはエントリーできたよね」って言われたんですよね。今回はどうかな(笑)。

――まじまじと見ると、味わい深いタイトルですよね。右から読んでも左から読んでも『本の本』。

夢眠:「どういう意味のタイトルなんですか?」って聞かれるかもしれませんね。ドキドキしています(笑)。

(了)

■夢眠ねむプロフィール

7月14日生まれ。三重県伊賀市出身。多摩美術大学卒業。

アイドルグループ「でんぱ組.inc」のメンバー。愛称は“ねむきゅん”。みえの国観光大使。他の著作に『ゆめみやげ』『まろやかな狂気』『夢眠軒の料理』などがある。

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