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【ネット婚活】【新連載:山崎元の男と女の婚活経済学 10】「地位財」とパートナー選びの関係

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「地位財」とは…

読者は「地位財」という言葉をお聞きになったことがあるだろうか。教科書に載るほどには有名ではない経済学用語なので、聞いたことがない方が多いのではないかと思う。

地位財とは、それを所有することが社会的なポジションを表現する財のことだ。例えば、広くて立派な家は住人の経済力をアピールするし、家だけでなく、自動車や高級時計、高級な衣服なども地位財だし、子供に与える教育などでも地位が表現される場合がある。

持ち物で表現する地位にこだわるのは無意味だと頭では思いつつも、他人が持つ地位財の影響を受けるのが人間の半ば本性であるらしい。普通の人にとって、地位財から自由になることは、「殆ど無理!」と言っていい。

そして、経済格差が広がる時には、最上級の富裕者層の地位財消費に、次のクラスの富裕者層が「置いて行かれまい」として続き、それに対してその直ぐ下のクラスが続こうとする、といった連鎖を通じて、相対的に下のクラスの人々の非地位財(典型的には「余暇」だ)への支出が圧迫されて、格差の拡大が多くの人の幸福度の低下につながるとの分析がある。地位財への支出は、自分の地位の防御であると同時に他人に対する攻撃でもあるのだ。

なかなかに深く、同時に恐ろしくもある分析だが、地位財から自由になることが誰にとっても難しい現実は知っておきたい。

地位財としての「トロフィー・ワイフ」

読者は、「トロフィー・ワイフ」という言葉を聞いたことがおありだろうか。経済的な成功者や、有名人などが、言わば自分の成功を表彰するトロフィーのように世間にアピールできる女性を妻にすることだ。あまり感じのいい話ではないが、所謂「糟糠の妻」を捨てて、華やかな女性を妻にする成功者は少なくない。国の内外を問わず、良くある話だ。もちろん、女性の成功者が、「トロフィー・ハズバンド」的な男性と結婚することもある。

パートナーである人間を実質的に地位財だと思う状況を愉快に思わない人がいるかも知れないが、他人に対して自分の持ち物を見せびらかしたいという心理は多くの人にあって、責められるものではない。夫婦同伴のパーティーなどというものが、地位財としてのパートナーをディスプレイする場となるが、これが楽しみな人もいるし、憂鬱な人もいるのが現実だろう。

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もちろん、地位財的な価値のあるパートナーを持とうとすると、それなりの財力や素質あるいは努力が必要だ。

パートナー獲得のための地位財

人が地位財にこだわる理由は、当節はやりの進化論的理由付けでは、パートナーを得て自分の遺伝子を残すためだと説明されることが多い。雄のクジャクが、不必要なまでに豪華な羽を雌の獲得手段として発達させたのだという説明のように、広い家、良い学歴、高い持ち物(典型的には、時計・スーツ・靴など)などが、パートナーの獲得のために有効だと思う人は多い。

進化論的な説明は、多くの場合論証ではなく単なる推測的仮説に過ぎないのだが、説明としては納得しやすい。

筆者の若い頃を思い出すと、例えば格好のいい自動車が、デートのために有効だとされる時代があった。当時の若い男性は「車が無いと、デートが出来ない」と思って、自動車を買うために努力した(筆者は努力しなかったので、パッとしなかった)。

人はかつてほど自動車にはこだわらなくなった印象があるが、今でも、家、時計、衣服、学歴、美容に対するサービス(エステその他)などの地位財に対する支出には、他人がどのようなものを所有しているかに大いに影響されている。

実は、地位財への支出には、皆が支出するとその効果が低下するような困った性質がある。

例えば、就職の面接に臨むにあたって良いスーツを着ていることが好印象であって有効なら、お金持ちのご子息・ご令嬢は良いスーツを着るだろうが、それほどお金持ちではない人達も対抗上良いスーツを着るようにせざるを得ない。

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しかし、こうした配慮の下に、面接に臨む皆が同程度に良いスーツを着るなら、全体のスーツに対する支出は増えているものの、スーツの効果は何ら改善していない。

しかし、現実には、男性が女性のパートナーを獲得するためにも、女性が男性のパートナーを獲得するためにも、このリクルート・スーツのような競争の下にある。

もちろん、この種のモチベーションは人間の根源的なやる気の源泉であって、経済を活性化させたり、技術を進歩させたりする場合もあるので、悪い面ばかりではないのだが、その競争構造のばかばかしさに時々気付くことは無駄ではない。

競争をズラして夫婦で非地位財を充実させる

現実としては、世間評価的に「いい女」や「いい男」が、現実に「いいパートナー」であるかは大いに怪しいのだが、世間から自分がどう見えるかがどうしても気になるのが人間という生き物の性だ。

前述のように、地位財と非地位財の経済分析によると、地位財への無理な支出が、非地位財への支出を圧迫して、人の幸福度を減少させることが少なくない。しかし、パートナーの獲得こそは人間の生物的且つ本能的な競争の核心なのだろうから、そのための地位財への支出も、パートナー自体を地位財とする考え方も止めようがないのが現実なのだろう。

お互いを地位財と思うような関係を超越して、他人の評価を気にしない夫婦関係を形成できると幸せなのだろうが、それを長く続けることが難しいのが、男女を問わず人間の心のありようでもある。

夫婦は、お互いに協力して非地位財的な幸せを追求できるといいと一応は申し上げて置く。しかし、それが果たしてどこまで実現可能なのかについては、何とも言えない。

再び、パートナー自体を地位財とする見方に戻ると、地位財にあっては、多くの場合、「上には、上がある」。相手に地位財的な満足を見出している人は、時が経つと、より上の地位財(となる新たなパートナーの可能性)に目覚める事が少なくない。相手にとって自分には地位財的な価値があると自覚する自信家(例えば美男・美女)は、将来自分が地位財的な価値を失う時が来ることを想像すべきだ。

夫と妻の世間的評価におけるバランスは、本人達が結婚前に思うものよりも大切なのかも知れない。 著者プロフィール

【ネット婚活】【新連載:山崎元の男と女の婚活経済学 10】「地位財」とパートナー選びの関係

山崎 元

(やまざき はじめ)

1958年、北海道生まれ。

東京大学経済学部卒業。現在、楽天証券経済研究所客員研究員。 現在は、コンサルタントとして資産運用分野を専門に手掛けるほか、経済解説や資産運用を中心に、メディア出演、執筆、講演、各種委員会委員等を務める。

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