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コアなファン好みな、ストリーミング時代を象徴した1枚 / 『El Gato The Human Glacier』グッチ・メイン(Album Review)

コアなファン好みな、ストリーミング時代を象徴した1枚 / 『El Gato The Human Glacier』グッチ・メイン(Album Review)

 グッチ・メインの勢いが止まらない。2017年10月13日にリリースした通算11枚目のアルバム『Mr. Davis』が、全米アルバム・チャート2位、R&B/ラップ・チャートで首位を獲得したばかりだが、わずか2か月で12枚目のスタジオ・アルバム『El Gato The Human Glacier』を発表した。これで、2017年は5月にリリースしたメトロ・ブーミンとのコラボレーション・アルバム『Droptopwop』を含めて、3枚のアルバムをリリースしたことになる。EP盤(ミニ・アルバム)ではなく、フル・アルバムを年に3枚リリースするのは異例。

 昨年は3作のミックステープと2枚のコンピレーション・アルバム、9thアルバム『Everybody Looking』(全米2位)と、クリスマス・アルバム『The Return of East Atlanta Santa』(ラップ・チャート7位)の2枚のスタジオ・アルバムをリリースしたグッチ・メイン。この強行スケジュールは2018年も続くようで、さらに多くの作品を発表する予定だと話している。タイトなスケジュールで作品を発売することは、ファンにとって嬉しい反面、新作がリリースされる嬉しさや楽しみが半減するというデメリットもある。「またか……」と思われないためには、1枚1枚の質を高くすることが必要。

 本作『El Gato The Human Glacier』は全11曲、一番長い曲(「TYT」)でも3分27秒でトータル30分39秒とかなり短い。ここ最近のラップ・ソングは、ストリーミングで聴くことを意識して2分~3分弱で終わる曲が多くなっている。本作は、まさにストリーミング時代を象徴したアルバムだ。また、グッチ・メインのように年に何枚もアルバムがリリースできるのも、ストリーミングやダウンロードをして音楽を聴く時代になったからだろう。プロデュースは、ファンク・ユニット=タキシードとしても活動しているジェイク・ワンと、今年大ヒットした「アイ・ゲット・ザ・バッグfeat.ミーゴズ」など、グッチ・メインの作品を数多く手掛けてきたサウスサイドの2人。ゲストのクレジットも一切なく、プロモーションもSNSで告知する程度と、華やかだった前作『Mr. Davis』に比べ話題性には乏しい。

 しかし、アルバムの内容は決して悪くない。「Peepin Out the Blinds」や「TYT」など、今年もブームを巻き起こしたトラップが中心のアルバムではあるが、気だるそうにラップする「Dickriders」や、ネタ曲っぽい「Sea Sick」など、90年代のウエッサイ(ドレーあたり?)っぽく聴こえるナンバーもあり、ヒップホップの真髄たるを強調している。アウトロなので1分弱で終わってしまうが、ラストの「Southside and Guwop」もヒップホップ全盛期の感覚に近い。これが最新の音なら、リスナーもそろそろトラップにはお腹いっぱいになっている頃…なのかもしれない。若干、同じような曲が続く感じも否めないが、それぞれ単体で聴けばインパクト・破壊力抜群。個人的には、ラップにメロディを乗せて下品に叫ぶ「Rich Ass Junkie」が本作の最高傑作。

 大衆受けするアルバム、という視点で見れば前作『Mr. Davis』に軍配があがるが、コアなファンはこっちの方が好みかもしれない。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『El Gato The Human Glacier』
グッチ・メイン
2017/12/22 RELEASE

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