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清春、全66回に及んだマンスリー・プラグレス公演が終幕

去る3月より清春が東京・渋谷マウントレーニアホールにて継続的に開催してきたマンスリー・プラグレス公演、『エレジー』が、12月21日をもって幕を閉じた。一夜二公演という形式で展開されてきたこのシリーズ・ギグのトータル公演数は、実に66本。最終公演にあたる同夜第二部のステージが“涙が溢れる”の絶唱をもって着地点に至る頃、すでに時計の針は午前零時を回り、日付は12月22日に変わっていた。
12月21日@東京・渋谷マウントレーニアホール (okmusic UP's)

入場時のシステム上の問題から開演が遅れ、第一部がスタートしたのは午後7時を過ぎてからのこと。“空”で幕を開けたステージのなかば、清春はこのシリーズ全体を通じてリハーサルの遅れなどから開演時刻の遅延が少なくなかったことを認めながら「今日だけは、僕は悪くない」とやや自嘲気味に笑う。が、そうしたトラブルによりこのシリーズ独特の妖艶で濃密な空気が損なわれることは一切なく、彼は第一部、第二部とも2時間超のステージを披露してみせた。絶唱、妖艶、濃密。すでに本稿のなかではこのような言葉を用いてきたが、そうした言葉をどれほど重ねても、このプラグレス公演での清春の魅力について言い表すことは難しい。本当に一語で形容すべきなのであれば、ボキャブラリーの欠如を自ら明かすようで恥ずかしいのだが「すごい」としか言いようがない。

まず改めて説明しておくと、これはいわゆるアコースティック・ライヴではない。中村佳嗣が弾くのは、エレクトリック・ギターだ。が、きわめて音量を抑えたそのギターの音色と、大橋英之の奏でるアコースティック・ギター(大橋は三代堅に替わり、8月よりこの公演に参加)以外、清春の歌声とその場に共存するものは何もない。もちろん音楽である以上、そこにリズムは存在するが、打楽器が刻む定速のビートに彼の歌は支配されていないのだ。それは、たとえば通常のアコースティック・ライヴと、演奏付きのポエトリー・リーディングの中間のようなものとも解釈可能だろう。

とにかく際立っているのは、リズムや各曲のオリジナル・ヴァージョンのイメージにすら縛られることのない、清春の歌唱表現の豊かさと奥行きの深さだ。エモーショナルという言葉ではまるで足りない感情過多なその歌声には、ある種の“念”のようなものを感じさせられる。そしてそれが、“歌詞”ではなくまさしく“詩”と呼びたくなる言葉の連なりを伴いながら、ステージと対峙する者たちの心を揺さぶり、時には涙腺を刺激し、最後には心からの自然な笑みをもたらすことになる。

この夜の二度にわたるステージでも、それは同じことだった。第二部は午後9時50分に幕を開け、冒頭の3曲を歌い終えた清春は、両ギタリストを紹介したのち「いよいよ最後になりました」と客席に告げた。そして、さまざまな哀歌を披露しながら色とりどりのダークネスをその場に描きあげ、最後の最後、“涙が溢れる”を締め括る「これを奪うなんて、出来ないよね?」という一節を無伴奏状態で歌い終えると、一瞬の静寂を挟み、割れんばかりの拍手がその場を包んだ。

全66公演というロングランを走り終えた清春は、ステージから去るのを名残惜しそうにしながら幾度も感謝の言葉を投げ掛け、「また会いましょう、愛してます」「忘れないでいてください。大事な、想いです」という言葉を残してその場を去っていった。

この大胆かつ繊細なシリーズ公演の産物というべきアルバム『エレジー』も去る12月13日にリリースを迎え、好評を博しているが、彼は現在この作品に続く純然たるオリジナル・ニュー・アルバムを制作中でもある。すでに『夜、カルメンの詩集』というタイトルが明かされているこの作品は、2018年2月に発売を迎え、それに合わせ、同2月23日には大阪BIGCATでの公演を皮切りに「TOUR 天使の詩2018『LYRIC IN SCARLET』」もスタートすることになっている。

そして実は、まだ清春にとっての2017年は終わっていない。12月24日の深夜には、東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて、『MIDNIGHT BIRD』と銘打たれたクリスマス公演(開場26時/開演26時30分)が開催され、さらに大晦日には名古屋ダイアモンドホールでの年越し公演、『’17 FINAL』も控えている。ひとつの大きな時間の流れに区切りをつけ、2018年に向かおうとしている清春が、この局面でどのようなステージを披露することになるのかにも注目したいところだ。そして、渋谷で重ねられてきた夜の余韻は、まさしく『エレジー』というアルバムで、時間と場所を問わずに堪能することができる。それを味わいながら、次なる作品を待つとしよう。

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