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【荒井岳史 インタビュー】オリジナリティーという言葉に縛られたくない

the band apartのヴォーカル&ギターを担当する荒井岳史が、ソロとして1年10カ月振りの3rdアルバム『will』を発表した。バンドとはまた違う声質で歌う、AOR、ニューミュージック的な色合いの強い作品について語ってもらった。
荒井岳史 (okmusic UP's)
──ニューアルバム『will』はどんな作品を目指したのですか?
「まず前作『プリテンダー』が自分でもよくできたなっていうのがあって、あとツアーも良かったんですよ。なので、プロデューサーが三浦康嗣(□□□)、ベースが村田シゲ(□□□)、ドラムが一瀬正和(ASPARAGUS、MONOEYES)、エンジニアが益子 樹さん(ROVO)という同じ布陣でもう1枚作りたかったんです。そこがスタート地点でしたね。」
──“will”というタイトルは?
「最初に「希望」という曲があって、アルバムの象徴みたいな曲になったんです。その曲がアルバムタイトルともリンクした感じですね。で、希望を表す言葉でそれ以外が思い付かなかった。“will”は自分のやりたいこととか、自分が聴いてほしいこととか、それを明確な意思を持って提示するってニュアンスですね。」
──では、曲に触れながら話を進めましょう。「リメンバー・ミー」はさわやかなAORフレーバーの楽曲ですね。
「これはサザンオールスターズっぽい曲を作りたかったんです(笑)。僕の中で、憧れてることを隠さないでやろうって感覚があって。この曲、ほんとすごいスピードで作ったんです。原型は自分の人生で最短の6時間くらいで作りましたね(笑)。サウンドも歌詞の言葉のチョイスも、80年代から90年代頭くらいの感じです。失恋した奴がうじうじしてるのをきれいに歌うのって、僕の思うポップスの王道の感じなんですよ。」
──歌詞には《I love you》《I miss you》とか入ってますしね(笑)。
「(笑)。歌詞を三浦さんに見せる時に、あいつを笑わせたいっていうのはありますね。歌詞ってちょっとバカバカしいくらいのほうが感情移入しやすいと思ってるんです。」
──「希望」では軽快なサウンドで、失望の中から希望を求める歌詞が歌われていますね。
「今まで僕が書いてきた歌詞って、暗めな内省的なものが多いなと思って、もう少し希望があるもの、明るいものを書きたいなって思ったんです。“大丈夫だ、まだやれる”ってことを書きたかった。で、『プリテンダー』をリリースしてソロツアーをやったんですけど、並行して曲も作っていて、ライヴの最後に弾き語りでこの曲を披露してたんです。2016年からあったもので、今回のアルバムを象徴するような曲になった。これは時代感というよりも、自分の経験や思ってることを変換せずに、人の物語にしないで書いた曲ですね。」
──自分の気持ちをストレートに歌ったと。それほど希望感のあるものを歌いたいという想いが強かったのですか?
「そうですね。作ってた当時、自分的にも音楽的なことでも、この年齢ならではのことがあったりして。“20代みたいに力任せに何でもやっていけないんだな”とかいろいろ考えてるうちに、昔は恥ずかしくてできなかったことをわりと普通にできるようになってきた自分に気付き始めたんです。で、“希望”っていうありふれた言葉の曲を歌ってみようと。」
──年齢ならではのものがあったと。
「それは大きいです。来年40で、若手じゃないけどベテランでもないっていう、この世代独特の何とも言えない中途半端な感じがあって、“自分は一体どうしてきゃいいんだ?”って思ったタイミングだったんですよね。でも、やりたいことはあるし、やり続けていくって気持ちを曝け出して曲にしました。」
──あと、「0時過ぎのミッドナイト」ですが、いいタイトルですね(笑)。
「“0時”を“12時”と読むんですけど、かなりギリギリですよね(笑)。タイトルだけ聞くとギャグなのかなと思わせて、実はギャグじゃないっていう。」
──男女のすれ違い感を描いてるわけですが。
「これは作詞に一番時間がかかりました。物語性やひとつひとつの言葉選びも慎重にやったんです。王道っぽいバラードを作ってみたかったんですけど、言葉強めじゃないと引っかからない気がして、それで言葉を精査しました。」
──他にも、テクノポップのような「ミステリアス・ガール」、サウンドエディットで構築された「夜は不思議」など、バリエーション豊かなアルバムとなりましたね。作り終えて自分なりの発見はありましたか?
「20代や30代前半の時よりも、歌うことが少し身近になってきて、その感じが少し音源にも表れ始めたかなって感覚はありますね。そもそも僕はかなり構えて、よしやるぞ!ってやらないと歌えなくて。しかも、あんまり歌えてないなぁって感覚でずっときたんです。それがやっと体に染み付いたというか…20年くらいかかりましたけど(笑)。まだまだですけど、もっと成熟していきたいって。そこは一生続くと思うんですけどね。そこを実感として得られるようになったのは発見というか、進歩はありました。」
──じゃあ、作り終えての手応えも相当ありましたか?
「いいもんができたなとは思いましたね。自分としては、ソロをやる意味合いとかがまた見えてきたなって。新しい目標もできたし、よりいろんな曲を作りたいなって欲求も出ました。今後、ソロをやるにあたってのひとつの指針になるようなものができましたね。」
──ソロとしての視野が広がったと。
「はい。いろいろやりたいですね。最初のほうにも言いましたけど、僕は音楽的に憧れてるものを隠さずやりたくて。オリジナリティーって言葉に縛られたくないというのはあるんですよ。このご時世、オリジナリティーって誰がやってるかで成立するんじゃないかと僕は思ってて。それくらいの個を自分が確立できるかどうかの話でしかないと思うんです。なので、憧れたものとちゃんと向き合って誠実にやっていきたいです。」
取材:土屋恵介
アルバム『will』
2017年12月20日発売

KATSUSA PLANNING

KATS-1017

¥3,000(税抜)
『荒井岳史 One-Man Live (Acoustic Band Set)』
12/22(金) 神奈川・横浜天王町 studio olive
荒井岳史
アライタケシ:1978年生まれ。the band apartのギター&ヴォーカルとして活動中。伸びやかで芯のある独特の歌声と、複雑なコードカッティングも弾きこなす卓越したギターセンスで、the band apartのフロントマンとして独特の存在感を放ってきた。近年ではバンドの活動に加え、荒井自身によるソロの企画イベント、バンド形態やアコースティックスタイルでのライヴ出演を精力的に行なっている。2013年夏に初のソロミニアルバム『sparklers』、14年7月には1stフルアルバム『beside』を、16年2月には2ndフルアルバム『プリテンダー』をリリース。

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