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衝撃を受けた&勇気をくれたのは「何も起こらない」という内容の小説——アノヒトの読書遍歴:せきしろさん(後編)

衝撃を受けた&勇気をくれたのは「何も起こらない」という内容の小説——アノヒトの読書遍歴:せきしろさん(後編)

 作家・コラムニスト・俳人として活動するせきしろさん。独特の世界観を持ち、『去年ルノアールで』をはじめとする自身の著書だけでなく、又吉直樹さんやバッファロー五郎Aさんとの共著も話題を呼んでいます。前回は、せきしろさんが人生で最も影響を受けたという本をご紹介。今回は、何度も読み返すというお気に入りの2冊をご紹介します。

——せきしろさんにとって何度も読み返したくなる本はありますか?
「ジャン=フィリップトゥーサンの『ためらい』という小説は読み返したりしますね。これはフランスの方の作品なんですけど、内容はタイトル通りで、主人公の男性がためらい続けて結局何も起こらないというお話です。男性には子どもがいてベビーカーを押していて、ある目的で街に行くんですけど、勝手に自分でためらっちゃって何もしないんですよ」

——「ためらい」を肯定的に受け取った感じの作品でしょうか?
「そうですね、もはや『美学』ですかね。この作品を読んだのは、初めて僕が小説を出したときに、ファンの方に『ジャン=フィリップトゥーサンに似ている』と言われたのがきっかけで。それまで僕は外国の文学とかわからなかったんですけど、手に取ってみると似てると言えば似てるかな、と。こんなにためらってないだろ僕はって思いましたけど、ある意味勇気はいただきました。本当にこんなにためらって良いんだって。何もしてない人っていると思うんですよ。もしくは何かしたいのにできない。僕も昔そうだったんですけどね。ですが、何もしないというその状態も何かにつながったり作品になり得るということは本当に覚えていた方が良いと思います」

——どれくらい読み返したりするんでしょうか?
「実は家に3冊くらいあるんです(笑)。僕はあまり片付けない方なんで、読みたいときにどこにあるか分からないとすぐに買っちゃうんです。だから気付くと家に何冊かありますね。もう一つ、よく読み返す本に保坂和志さんの『プレーンソング』という本があって、こんなこと言うと怒られるかも知れませんが…次に何を書こうかなと思ったときに読むと、『あぁ何も起こらなくていいんだ』という自信をいただきます」

——どんな内容の作品でしょうか?
「これはルームシェアをテーマにした本です。これは結構若いときに読んだので、当時はまだそんなにシェアハウスみたいな言葉はなかった時代なんですけど。4人の男女が一緒に暮らしていて、とにかく何も起こらないんですよ、驚くほど(笑)。それには単純に笑っちゃって。それまで、自分の中だと本にはフリがあってオチがあって…と、全部そうだと思っていたのに、それが何も起こらないので、こういう方法があるんだっていうのを気付かせてくれたというか。何も起こらないというのが、これだけ作品になっているというのが衝撃的で、それからすごい影響を受けましたね」

——「何も起こらない」ということが良いんですね!
「わりと僕が書く話は、何も起こらないと言われがちで。でも好きなんだからしょうがないですよね、何も起こらないのが。本を読んでても『あ、何か起こるぞ』ってなったときにドキドキして読めなくなっちゃうんで、本当に何もないのが一番良いんです」

——せきしろさん、ありがとうございました!

<プロフィール>
せきしろ/1970年、北海道生まれ。作家、コラムニスト、俳人。自身の著書に『去年ルノアールで』『不戦勝』『妄想道』などがある。共著には芸人の又吉直樹さんとの『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』があり、自由律俳句を披露した。また、同じく芸人のバッファロー吾郎Aさんとともに『煩悩短編小説』を手掛け、様々な世界観を演出している。

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