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「上沼マヂラブ事変」を再考する

「上沼マヂラブ事変」を再考する

いやー、『M-1グランプリ』はやっぱり面白いですね。漫才が面白いのはもちろん、番組としてもかなり見ごたえがあって面白かったと思います。

 

『M-1』が終わると、世間では結果についてあれこれ言い合ったり、審査についてあれこれ言い合ったりするのが恒例になっているわけですが、そんな中で注目されているのが、審査員の上沼恵美子さんがマヂカルラブリーに低い点数をつけて、「好みじゃなかった」と厳しいコメントを残した件です。

 

まず、基本的なことからおさえておきますと。この件で「上沼さんが激怒していた」「怖かった」「ひどすぎる」などという感想を残している人がいますが、個人的にはそこまでひどいとは思いませんでした。当たり前すぎて言うのも照れるんですが、バラエティ番組の中で芸人が怒っている(ように見える)とき、本気の本気で怒っていることなんてそうそうあるものではありません。すべては見る人を楽しませるために行われていることです。

 

そもそも、冷静に考えていただきたいんですが、仮にマヂカルラブリーのネタが面白くなかったとしても、上沼さんがそこまで感情的になる理由がないじゃないですか。自分が悪口を言われたとか失礼なことをされたとか、そういうことではないわけですから。何組かの漫才を見て、その中では面白さが劣っているというふうに感じられた、というだけのことですからね。それ以上でも以下でもありません。

 

あれを「怒っていた」と解釈するなら、上沼さんはテレビに出ているときは四六時中怒っているだけの人、ということになってしまいます。そんなはずはないでしょう、とまずは言えると思います。

 

ただ、一部の視聴者にとって、上沼さんがなぜそんなにきつい感じに見えてしまったのか、ということには理由があると思います。それは、あの日の客席の盛り上がりがすごかった、ということです。

 

前説のくまだまさしさんたちの活躍のおかげか、舞台をセッティングする制作スタッフの皆さんの努力のおかげか、それとも客席にたまたまテンション高めの人が多かったのか、理由はどうあれ、この日のお客さんはいつになく軽かったのです。

 

だから、どの芸人もまんべんなく笑いを取っていました。最終的に10組中10位に終わったマヂカルラブリーの漫才のときにも、お客さんはかなりウケていたように感じられました。

 

恐らく、観客も視聴者も、マヂカルラブリーの漫才を面白いと思って、それなりの満足感を得ていたのでしょう。その割に上沼さんのコメント内容が厳しかったからこそ、それがきつく感じられたのではないでしょうか。

 

その違和感が生まれるのは、上沼さんをはじめとする審査員の皆さんが、客ウケに惑わされずにきちんと審査をしているからです。お客さんがウケたかどうかで判断すればいいのなら、「みんなウケていたから、みんな100点」というふうにすれば済むことです。

 

しかし、それでは審査員は仕事を果たしたとは言えないのです。自分の中に揺るぎない審査基準を持ち、優劣のつけられないものに優劣をつける、というのが審査員の仕事なのですから。

 

私自身もお笑いのライブやイベントで審査員を務めさせてもらったことが何度かあるから分かりますが、実はこういうことってよくあるんですよ。お客さんのノリがいいと、どのネタでも爆笑が起こってしまうので、それに惑わされないように採点をしないといけなくなるのです。

 

「爆笑」と「ゲロスベリ」の違いは誰にでも分かりますが、「大爆笑」と「超大爆笑」の違いは耳で聞いていても分かりません。審査員は自分の感覚を信じて審査するしかないのです。

 

『M-1』で汗をかいているのは出場する漫才師だけではありません。審査する大御所芸人たちも、自分のすべてを懸けてあの舞台に臨んでいるのです。

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オモプラッタ

記者:

オモプラッタはポルトガル語で「肩甲骨」という意味。 芸人さんが華麗にはばたくための翼を支える肩甲骨でありたい。 それがオモプラッタの理念です。 オモプラッタ編集部は、プロの芸人さんたちが日々生み出している「オモシロ」のカケラを拾い集め、編集して、独自のコンテンツとして皆様にお届けしていきます。

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